長渕剛(57)が37年間の音楽人生を形にしたベストアルバム「All

 Time

 Best

 2014

 傷つき打ちのめされても、長渕剛。」を7月2日に発売することが14日、分かった。4枚組みで58曲を収録。ファンの心を揺さぶったシングルの数々に加え、アルバム収録の名曲も網羅する。本紙の取材に、アルバムに込めた思いなど熱い胸の内を語った。

 選曲には昨年末から3カ月を費やした。78年の本格デビューシングル「巡恋歌」から新曲「走る」まで300作近くの曲から選び抜いた。「引き出しの中を全部整理して、これ以上は何も出ませんよという感じ」と言い切る。選曲作業中は常にある思いがよぎっていた。

 「作ったのは僕なんですけど、歌は人の心の中に入っていきますから、聴いた人のものになっちゃうんですよね」

 4つのカテゴリーに分けた。まずは16曲収録のシングルコレクション。「これはベスト盤の王道。でも自分はアルバム志向型で、シングルが全てじゃない」。言葉通り、残りの3枚は「生きる詩(ことば)たち」「怒りの詩たち」「叫びの詩たち」のタイトルでアルバム収録曲をメーンにシングルを織り交ぜてテーマ別に収録した。

 集大成と呼べるアルバムになったが、この時期の発表には理由があった。

 「来年は59歳。できることは、やりきっておきたい。次に新しいことをやるぞというけじめでもある。また新しいところに向かうから、今がちょうど、そういう時のような気がしてね。60歳を過ぎたら活動方法など少しずつ変革していく。そういう予感がしている」

 人生を振り返り、あらためて今、曲を作らずにいられない自分を感じている。

 「歌を作らないと生きていけない状況に自分がいる。失恋、挫折、裏切り…。生きていく中ではマイナスの要因が多い。そこに直面した際、自分は歌で立ち上がるしかない」

 「僕の歌は人間の弱さなんです。自分自身の弱さを歌い、どうやって強く生きていけばいいかを曲にする。叫ばなきゃ人間は生きていけないんです。僕が特殊ではなく、みんなの中にある普遍をもとに曲を作ってきた。それを今回、選択した」

 ベスト盤の制作を通じ、1曲1曲に込めた思いを振り返り、人生観や音楽観を見つめ直した。

 常にむき出しの心で歌い続けた37年。完全燃焼の選曲をしたベスト盤に込めた思いはまだある。

 「君たちが思い出にしがみついているころに、僕は次に1歩前に出る」

 区切りの60歳はあくまで通過点。長渕は走り続ける。【松本久】