覚せい剤取締法違反(所持と使用)で起訴されたASKA(本名・宮崎重明)被告(56)の知人女性で、同違反で起訴された栩内(とちない)香澄美被告(37)の初公判が22日、東京地裁で行われた。10年来の愛人関係や避妊せず性交渉したことなど、ASKA被告との関係を生々しく明かすことで、無罪を主張した。次回公判は、9月9日午後1時半から行われる。

 予定時刻より2分早い午後1時28分に開廷。姿を見せた栩内被告は、弁護人から手渡された書面をか細い声で読み上げた。

 「私は覚せい剤を使用したことはありません。鑑定のミスによるものか、第三者が何らかの方法で私の体内に入れたもので、私に使用の故意はありません。無罪を主張します」

 検察側によると、栩内被告がASKA被告と知り合ったのは2002年(平14)ごろで、勤務先の食事会で知り合い、04年ごろから交際を開始。10年に及ぶ愛人関係は栩内被告側も認めた。主な争点は「鑑定内容」と「故意に使用したか」の2点だったが、弁護側は愛人関係を赤裸々に明かすことで、無罪主張した。

 検察側は栩内被告の毛髪と尿から覚せい剤の成分が検出されたと指摘した。一方、弁護側は基準量3倍の髪で実施された2度目の毛髪鑑定では陰性反応だったことを挙げ、「毛髪鑑定は年単位、月単位で証明できるもの。最初の検査で陽性でも、20日後の2回目で陰性に変わるものではない」と主張。最初の毛髪鑑定については「宮崎(ASKA被告)が多量の汗をかく人物でその汗がうつり、毛髪の洗浄が出来ない上での毛髪鑑定だったのではないか」と反論。尿については「(ASKA被告の)体液(精液)が混入した可能性がある」と指摘し、ASKA被告と避妊なしの性交渉も明かした。

 逮捕前の2人の様子も明らかになった。逮捕当日の5月17日、栩内被告は仕事後に友人と飲酒し、午前3時ごろ帰宅。ASKA被告が同4時ごろに到着し、清涼飲料水を飲み、同6時ごろまで性交渉を持った。その後、ASKA被告が所持していた睡眠導入剤を1錠飲むとシャワーを浴びないまま熟睡。ASKA被告が部屋を出たのも気付かなかったという。

 検察側は栩内被告の尿にASKA被告の精液が混じっていたかは「不明」としたが、弁護側は産婦人科医の証言を基に「午前6時まで性交渉を持ち、尿の任意提出は午後2時20分。約8時間後でも、(男性の)体液が(女性の)尿とともに排出されるのは、日常茶飯事だそうです」とした。

 弁護側は栩内被告がASKA被告の覚せい剤使用現場を目撃したことはないとし、使用を認める発言も聞いたことがないと主張。「ASKA被告に薬物使用の疑いを持ち、『使用しているなら交際をやめる』といった内容のメールやLINEを多数送った」とし、内容も明らかにした。「(栩内被告が)使ったことはなく、(栩内被告の飲食物に)混ぜたり、塗ったりしていない」とするASKA被告の供述も無罪主張の材料の1つにした。

 次回公判には、検察側証人として1度目の毛髪鑑定に関与した科学捜査研究所の係官が出廷する。【近藤由美子】