覚せい剤取締法違反の罪に問われた栩内(とちない)香澄美被告(37)の22日に東京地裁で開かれた初公判で、検察側は、ASKA被告への証人申請を示唆した。ASKA被告は、栩内被告への覚せい剤使用を否認していると伝えられてきたが、東京地検特捜部元副部長若狭勝弁護士は、ASKA被告が「検察側の隠し玉」になっている可能性を指摘した。

 公判の終盤、検察側は鈴木巧裁判官から、弁護側の証拠請求に同意するかを問われた。現段階では留保しつつも、次回公判以降のASKA被告の出廷を請求する可能性を示唆した。対して弁護側は「何を立証するために証人申請するのか趣旨を教えてほしい。趣旨が分からないと、こちらの準備もあるので不安ですから」と主張した。

 検察側は「栩内被告の主張がこの日初めて明らかになったため」と説明したが、弁護人は公判前に進行協議をしてきた事実を挙げ、「心外」と語気を強めた。ASKA被告の出廷が、栩内被告の有罪、無罪を決める鍵になることを示すやり取りだった。

 その状況も踏まえ、若狭弁護士は「ASKA被告が警察への供述の中で、何らかの形で栩内被告のことを話している可能性もある。どれほど深く話しているかは分からないが、ASKA被告が検察側の“隠し玉”になっている可能性もある」と指摘した。「栩内被告は覚せい剤を使用していない」と供述したと伝えられてきたが、3度の逮捕で長期の取り調べを受けた結果、落ちた可能性もあるという分析だ。そして、今後のポイントを挙げた。

 (1)毛髪鑑定で本当に陽性反応が出たのか、鑑定結果は間違っていないのか(2)栩内被告が、どうして毛髪鑑定で陽性反応が出たのかをどれだけ細かく具体的に説明できるか(3)ASKA被告がどちら側の証人として出廷し、法廷で何を言うか。

 初公判では、栩内被告側が、ASKA被告が避妊をしていなかったことなども明かしたが、「(性交渉の際)『どうだ。いつもと違うだろう?』とASKA被告に言われたなど、細かいやりとりを説明していく必要がある」とした。

 「より具体的な説明をして、ASKA被告が使用につながる証言をしなければ、栩内被告が無罪になる可能性は5割近くまで上昇します。ASKA被告が『栩内被告も覚せい剤をやっていた』などと話したら、有罪は確定的になります」

 ASKA被告は8月28日の初公判で、全面的に起訴内容を認めるとみられる。