舞台、ドラマで活躍した俳優、演出家で画家としても知られた米倉斉加年(よねくら・まさかね)さん(本名同じ)が26日午後9時33分、腹部大動脈瘤(りゅう)破裂のため福岡市の病院で亡くなった。80歳。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は妻テルミさん。後日、お別れの会を開く。

 所用で故郷福岡市に入り、26日午後5時ごろ滞在先のホテルで「おなかが痛い」と訴えた。病院に救急搬送されたが妻テルミさんにみとられ息を引き取った。この日福岡市内で通夜が行われ、密葬にもかかわらず約50人が参列。今日28日の葬儀後に荼毘(だび)に付し遺骨となって帰京する。

 今年は1月公開の映画「小さいおうち」、4月放送のNHKドラマ「サイレント・プア」、10月公開の映画「ふしぎな岬の物語」に出演。秋以降のドラマ出演の依頼もあり体調面で問題はなかったという。9月7日に福岡の地元劇団公演に出演予定で、来年も07年に立ち上げた劇団「海流座」の公演を準備していた。

 劇団民芸の演劇研究所などを経て民芸で「ゴドーを待ちながら」などに出演。00年に退団するまで中心俳優として活躍した。舞台「放浪記」では森光子さん演じる林芙美子の友人白坂五郎役を演じた。くせの強い悪役や存在感ある脇役など重厚な演技で知られNHK大河ドラマ「三姉妹」「勝海舟」「花神」や連続テレビ小説「ちりとてちん」に出演。映画「男はつらいよ」シリーズ常連で、焼き肉タレのCMにも出演した。

 絵本作家としても「魔法おしえます」「多毛留」でイタリアのボローニャ国際児童図書展グラフィック大賞を連続受賞。83年出版の絵本「おとなになれなかった弟たちに…」は中学の国語教科書に採用された。

 ◆米倉斉加年(よねくら・まさかね)1934年(昭9)7月10日、福岡市生まれ。西南学院大を中退し、57年に劇団民芸に入団。66年に舞台「ラブ」の好演などで第1回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した。2000年に民芸を退団し、07年に劇団「海流座」を旗揚げし主宰。