中島みゆき(62)の創作意欲は衰え知らずだった。今月15日に東京・赤坂ACTシアターで初日を迎える音楽劇「夜会

 VOL.18

 橋の下のアルカディア」(12月16日まで)の6年ぶりとなる新演目のために、33の新曲を書き下ろしていた。世代の違う若者までもが、中島の曲をカラオケで歌うブームの中、本人が同劇の見どころや制作秘話を語った。

 リハーサル終了後、中島はタオルを肩に巻き、ジーパンと赤いトレーナー姿で取材に応じた。

 「あれもこれも盛り込みたくなって、絞り込むのが大変でしたよ」

 公演は約2時間20分。披露する歌のうち、「二雙の舟」以外の33曲が新曲だ。使用しない曲と合わせると、この約2年で数十曲を書き下ろしたという。

 「頭、はげそうでした。本当に。譜面の数がすごくて、こんな状態でした。アハハハ」

 両腕で紙(譜面)の束を抱えるジェスチャーをし、大声で笑った。

 「夜会」は89年に始まり、18作目となる。今作は、2人の歌手、中村中(29)石田匠(41)とともに、橋の下の地下道で繰り広げられる別れと再会の物語を描く。S席チケットは2万円だが、現時点で全公演がほぼ売り切れているという。

 今年は、NHK連続テレビ小説「マッサン」の主題歌「麦の唄」がオリコンシングルランキングで5位に入った。「夜会」制作真っただ中の今年2月に受けたオファーだったが、「20年前から引きだしにあった」という原曲を基に約1カ月で書き上げた。年末のNHK紅白歌合戦に出場するとの情報もあり、実現すれば02年、富山・黒部ダムからの中継で「地上の星」を歌って以来となる。

 今月12日には、通算40作目のオリジナルアルバム「問題集」をリリース。98年の「糸」がカラオケランキングで3位に浮上するなど、若い世代を中心に再注目されている。「訳が分からないまま、尻をたたかれているうちに、こういう風になりましたって感じですよ。私、尻たたかれないと働かないタイプなんで。夏休みの宿題は8月31日にやってましたから」。

 最後に再び笑い、目を輝かせた。「まあ、今回落ちた曲もいっぱいありますから。次の新作に使いますよ。アハハハハ」。歌姫の創作意欲は今なお、燃え盛っている。【横山慧】

 ◆「夜会」

 「言葉の実験劇場」をコンセプトに中島が構成・演出・作詞・作曲・主演を務める。89年11月に始まり、98年まで毎年開催。以降はほぼ2年に1度開かれ、今年で18回目。チケット入手困難の舞台として知られ、前回の「VOL.17」は劇場版が製作され、全国約80の映画館で公開された。