自称「歌って踊れるデブ芸人」の芋洗坂係長(46)が17日、横浜市の四季芸術センターで行われた劇団四季のディズニーミュージカル「アラジン」(来年5月24日初日、東京・東新橋の電通四季劇場「海」)の出演候補者オーディションに参戦した。米国のスタッフの前で派手な踊りを見せて笑いもとり、合格に望みをつないだ。

 劇団四季の稽古場、四季芸術センターに、緊張した表情の芋洗坂の姿があった。四季は今回、「アラジン」ロングラン上演でメーン、アンサンブルすべてのキャストを、四季所属の劇団員に限らず、一般にも広く公募した。

 その結果、約1500通の応募があり、書類審査を経て約500人が合格。さらに予備審査を通過したメーンキャスト候補者約60人が、この日の本選に臨んだ。ジーニー役を狙う候補者の中に、四季の主役級俳優5人に交じって芋洗坂、そして元大相撲力士の大至(46)も参加した。

 トップバッターで登場した芋洗坂は、審査のために来日したオリジナルスタッフで演出補のスコット・テイラーらを前に「ハロー!」とあいさつ。課題曲「フレンド・ライク・ミー」を自らの振り付けで軽快なステップを踏みながら陽気に歌い、側転まで見せた。約100キロの体重とは思えない身軽な動きに審査員から笑いが起こり、「グッド!」の言葉も飛んだ。

 今回の受験は「知人にそそのかされて受けた」という。ミュージカル経験もあるが、知り合いのジャズ歌手にボイスレッスンを受けるなど本気モードで挑戦した。ブロードウェーのジーニー役は太めの俳優だったが、芋洗坂は「ディズニーの審査員の方に笑ってもらえて良かった。太っていればいいわけじゃないし、僕の歌のレベルじゃ、四季に乗り込むにはまだ早かったのかな。出来は70点くらいだけど、今の力を出すことはできた。あとは、四季の方が冒険しようと思っていただけるかですね」と手応えも感じていた。

 最高は東前頭3枚目で、02年に引退後はミュージカルにも出演する大至も「オーディションは何度も経験しているけど、今日は緊張した。土俵に上がる気持ちで臨んだ」と話した。異色の2人の合格はあるのか。結果は月内に発表予定。【林尚之】

 ◆芋洗坂係長(いもあらいざかかかりちょう)1967年(昭42)12月18日、北九州市生まれ。中森明菜のバックダンサー、田口浩正とのお笑いコンビ、テンションを経て、サラリーマンキャラクターのピン芸人「芋洗坂係長」として活躍。08年、ピン芸人日本一決定戦「R-1グランプリ」準優勝。「エンタの神様」「爆笑レッドカーペット」などのお笑い番組で人気に。ミュージカル「オーシャンズ11」などにも出演。

 ◆「アラジン」

 92年公開の長編アニメをもとに、今年3月からミュージカルとして米ブロードウェーで開幕し大ヒットしている。砂漠の王国の貧しい青年アラジンと王国の姫ジャスミンの恋を軸に、ランプの精ジーニー、王国支配をたくらむ邪悪な大臣ジャファーら多彩な人物が登場する冒険とロマンスの作品。