日本を代表する俳優、高倉健(たかくら・けん)さん(本名小田剛一=おだ・ごういち)が10日午前3時49分に悪性リンパ腫のため都内の病院で亡くなっていた。83歳だった。

 高倉さんは遺作「あなたへ」の現場でも気づかいの人だった。

 岐阜・高山ロケでビートたけしが東京から現地入りする際、夜まで高山駅で待っていた。撮影では、たけしが現場のガソリンスタンド内を歩き回りながらセリフの確認していると、さりげなく歩み寄り、セリフの読み合わせに付き合った。たけしが驚いても、そのまま続けた。長崎・平戸ロケでは綾瀬はるかが泊まった旅館の部屋にカットフルーツの盛り合わせと「お疲れさまでした」と書いた手紙を差し入れた。

 スタッフにも心を配った。北九州・門司港ロケではダウンジャケットを着ても寒いほどの強風の中、薄いジャンパー1枚を羽織って4時間半撮影したが「寒い」と言ったのは、たった1回だけ。手をこすって寒さをしのぐ若い女性スタッフを見つけると、自分が持っていたコーヒーを「飲みな」と言ってさりげなく差し出した。ともに映画を作る人を全力で愛した。【村上幸将】