10日に悪性リンパ腫で亡くなった高倉健(たかくら・けん)さん(本名小田剛一=おだ・ごういち、享年83)の死を悼み、高倉さんが55年に入社した古巣の東映が19日、都内と京都の4カ所に献花台を設置した。社員が「先輩」を送り出す手作りの“お別れ会”にファン4200人が集結。東映は、高倉さんの特別上映に向けても動きだした。

 真っ白な布がかかっただけの献花台に、高倉さんへの愛がこもっていた。前日18日に訃報が流れた直後、岡田裕介会長(65)の指示のもと、華美を嫌う高倉さんの生き方を尊重した質素な形にこだわったという。

 高倉さんは55年に東映ニューフェースとして入社し、76年に退社するまで「網走番外地」などの任侠(にんきょう)もので東映を引っ張った。01年「ホタル」以降東映の新作に出ないまま亡くなった。

 それでも東映は、どこよりも早く献花台を東京、京都の4カ所に設置した。丸の内TOEIでは、一般献花開始10分前の午後12時50分に、社員150人が献花台前で黙とうをささげた。宣伝部の30代の男性は「先輩だから当然です。自分も健さんの現場を経験したかった」とつぶやいた。

 30代の女性も「入社時から、いろいろ教わってきました。私たちが歩いていく、先の道を作ってくださった。言うのはおこがましいですが、やはり先輩」と、かみしめるように言った。現在の宣伝部で、高倉さんと直接関わったのは2人だけだというが、高倉さんを先輩として送り出そうという「東映愛」から、若手からベテランまで交代で献花台前に立ち、案内をした。

 「最後の映画は東映で」という思いは、誰の胸にもあっただろう。ある関係者は「何回もラブレター(企画)を出したが、首を縦に振ってもらえなかった」と無念を口にしつつ「東映はスター映画を作ってきた。リスペクトの思いは、みんな持ってます」と笑みを浮かべた。別の関係者は「もっと(盛大に)してあげたい。でも健さんの思いに反する」と目頭を熱くした。

 手作りの“お別れ会”に加え、高倉さんの映画を丸の内TOEIで特別上映する企画を検討している。デジタル上映が主流の中、高倉さんの過去作品はフィルムのため、クリアできる対応策を考えつつ、前向きに動いているという。

 午後6時の献花終了後、東映本社から社員が続々と出てきて献花した。“高倉先輩”への感謝と、亡き後の映画界の発展を誓いながら…。【村上幸将】