田村正和(71)がテレビ朝日系ドラマスペシャル「復讐(ふくしゅう)法廷」(来月7日午後9時放送)で復讐殺人を犯した男を演じた。このほど京都市内で収録が行われ、共演した竹内結子(34)と取材に応じた。最近起きた卑劣な手段で報復した事件について怒りをにじませた。

 剣士、大名、ニュースキャスター、刑事、弁護士、頑固おやじ…さまざまな役を演じてきた田村が、54年の俳優生活で初めて、殺人を犯し、被告人席に立つ役を演じる。「いつもは逮捕する側を演じていますが、今回は逮捕される側です」と、刑事を演じた代表作「古畑任三郎」シリーズを引き合いにして笑わせた。

 難しい役どころだ。娘を殺した犯人を射殺する元大学教授を演じた。裁判の場面では司法制度への異議も唱える。「かなり複雑な役です。『殺してやりたい』と思うまでは理解できるのですが、実際に殺害してしまい、自分は死刑でもいいと思っている。そこは分からない」。

 大石内蔵助をはじめ、赤穂浪士四十七士のうち何人かを演じたこともある。人助けで人をあやめる役を演じたこともある。しかし、復讐とあだ討ちは違うときっぱり言う。「江戸時代のあだ討ちは美学でもありました。最近の事件には本当に腹が立ちます。(復讐を)遂げたところで喜びに変わるものでなし…」。三鷹ストーカー殺人事件などを連想したのか、ここ最近多い、卑劣な手段による仕返しや逆恨みによる事件への強い怒りを示し、悩みながらの役作りだったとした。

 08年から8年連続で同局のスペシャル、連続ドラマに出演している。出演を決意した理由を「被告人席で悲しそうな顔をしていればいいかなと思って」。冗談を交えたが、演出の藤田明二氏や内山聖子ゼネラルプロデューサーらスタッフへの信頼は厚い。実はシーンもせりふも当初の予定より大幅に増えた。「脚本読んで『あれっ!?』どころじゃなかった。でも、すごく面白くなった」と強い手応えを感じている。

 昨年放送された同局系スペシャルドラマ「三億円事件」の時は「これが最後の作品になるかも」と言っていた。今回も「この2~3年、同じ気持ちでやってます」。目の前にある1作1作を大切に演じていることをあらためて強調した。

 竹内とは、04年フジテレビ系「新ニューヨーク恋物語」以来の共演だ。京都で約3週間の収録を行い、作り上げた自信作となった。【小林千穂】

 ◆復讐法廷

 中原誠司(田村)の娘由紀子(柳生みゆ)が、乱暴されて殺された。岩崎(中尾明慶)が逮捕されたが、暴力で自白が引き出されたと見なされ公判が維持できなくなった。岩崎は無罪になり、中原は絶望する。1年半後、中原は岩崎を猟銃で射殺した。減刑も望まず弁護士もいらないと言うが、緒方信子(竹内)が弁護することに。岸部一徳、平泉成、田中哲司、市毛良枝らが出演。