演歌歌手北島三郎(78)が29日、福岡・博多座で最後の座長公演を行った。68年に始まった大劇場の座長公演はこの日の千秋楽で、幕を閉じた。約46年間で4578回。13年のNHK紅白歌合戦に次ぐライフワークからの卒業だが、歌手引退はきっぱり否定。「体の続く限り歌っていく」と生涯現役を宣言した。

 「サブちゃーん」のかけ声が何度も飛ぶ満員の客席に、北島は公演の冒頭で静かに話しかけた。「長期の1カ月公演は今日が最後の舞台。4578回目の最終公演です」。

 大劇場の座長公演は、68年に東京・新宿コマ劇場公演から始まったライフワークで約800万人を動員してきた。博多座公演は「北島三郎最終公演」と題し、昨年9月の東京・明治座、11月の大阪・新歌舞伎座から続く一連のステージだった。山本譲二(64)や小金沢昇司(56)ら北島ファミリーや女優山本陽子(72)ら親交の深い芸能人が多数駆けつけた。

 芝居と歌謡ショーの2部構成のステージでは「ありがとう」と何度も口にした。「今日は私の人生の1ページにがっちり残りました。私は幸せな男だなとつくづく思います」と感謝した。

 この日は昨年7月に肝臓がんで死去した実弟大野拓克さん(享年67)の写真を腹部にそっとしのばせていた。歌謡ショーの演出を手がけるなど、公私にわたって二人三脚で歩んできたが、この日を迎えることなく逝ってしまった。「どこかで見守ってくれている気がする…」。何度も天を仰いでは男泣きをした。

 紅白は13年、50回出演の節目で卒業。それに続く卒業だが「線を引くだけで、引退はしませんっ」。これからが新たな出発だと強調した。半月ほど休養をした後はステージなどのスケジュールが詰まっている。「自分は芸道という道を歩むように生まれてきたんでしょうね」。62年に「ブンガチャ節」でデビューして53年。歌手北島はこれからも、終わりのない道を歩み続ける。【松本久】