日本統治時代の朝鮮半島で民族の壁を越えて活躍した日本人、浅川巧の生涯を描いた映画「道~白磁の人~」(高橋伴明監督、12年初夏公開予定)に主演した俳優吉沢悠(33)が10日、韓国・ソウル市にある忘憂里(マンウリ)墓地で行われた浅川の追慕祭に出席し、撮影終了を報告した。

 浅川は、朝鮮総督府の林業技手として山林の復元に貢献、白磁などの工芸品を守り抜いた歴史的な人物。植民地時代ながら差別意識なく現地の人々と深い友情を交わしたことで尊敬されており、著名人が眠る由緒ある同墓地に日本人としてただ1人葬られている。

 浅川役を演じた吉沢は「浅川さんのことは知らなくてプレッシャーもありましたが、彼が朝鮮半島に残したものや切り開いた道を未来の私たちが歩んでいきたいと思いました」と偉大な人物への思いを語った。

 約1カ月にわたる撮影の中で、浅川を支えた李青林役を演じたペ・スビン(34)との友情も芽生えた。韓国の俳優と初めて共演した吉沢は「レベルの高さに驚かされました。役者としての視野も広がって、次のステップの糧になったと思う」と称賛する。

 2人は互いに理解できる英語で会話を重ね、共通の趣味の釣りを通して、劇中同様に友情を深めていった。吉沢は「ペ・スビンさんと本当の親友になれて、これこそ浅川さんが願っていた形だと思う」。

 「ロスト・メモリーズ」「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」など、日韓の俳優が共演する作品は増えているが、その多くは娯楽色の強いアクション作品や恋愛ドラマ。本作はこれまでタブー視されてきた日本統治時代の朝鮮半島を真正面から描いた意欲作。日韓エンターテインメントの新時代を予感させる作品で、名コンビが誕生した。【今西孝江】

 ◆吉沢悠(よしざわ・ひさし)1978年(昭53)8月30日、東京都生まれ。98年TBS系ドラマ「青の時代」で俳優デビュー。ドラマ「新・星の金貨」「動物のお医者さん」、映画「星に願いを。」など出演作多数。05年に米国留学し、06年映画「夕凪の街

 桜の国」で本格復帰。TBS系ドラマ「南極大陸」に出演中。175センチ、血液型B。

 ◆ペ・スビン

 1976年12月9日生まれ。大真大学演劇映画科卒。01年映画「クラブ

 バタフライ」でデビュー。モデルとして活動中にウォン・カーウァイ監督に誘われ、中国でもドラマ出演するなど活躍。帰国後に「海神」「朱蒙」「風の絵師」「天使の誘惑」「華麗なる遺産」「トンイ」など話題作に出演して人気を得る。