高倉健(81)が菊池寛賞を受賞することが15日、分かった。今年で第60回となる同賞は、文化活動で創造的業績を挙げた人物に贈られる。この日、公益財団法人日本文学振興会が受賞者を発表した。高倉は公開中の主演映画「あなたへ」(降旗康男監督)をはじめとする50年以上に及ぶ活躍と、孤高の精神を貫き、独自の境地を示す映画俳優としての存在感が高く評価された。

 同賞は、俳優では09年に主演映画「おくりびと」が米アカデミー賞外国語映画賞を受賞した本木雅弘(46)が、製作スタッフと合同で受賞している。映画俳優として単独で受賞したのは、87年の故笠智衆さん(享年88)以来25年ぶりとなった。

 同賞は、作家菊池寛氏(享年59)が日本文化の各方面に残した功績を記念し、52年に制定された。文学、演劇、映画、新聞、放送、雑誌・出版などの文化活動で、その年度にもっとも活躍した人物に贈られるが、選考では過去の活動の実績も重視される。高倉は、日本映画界を代表する存在として、あらためてその実績と活躍が評価された形となった。

 映画「あなたへ」は、降旗監督や脚本家と高倉が話し合いを重ねて映画化が実現した作品。亡き妻から絵手紙を受け取った主人公がその遺骨を散骨するため、富山から妻の故郷、長崎へ車で旅をする物語。人の出会いを通じて主人公が生き方を見つめ直す姿が印象的な作品だ。配給する東宝によると、興行収入は22億円を超えるヒットを記録中。観客動員数も211万人を突破した。今回の受賞は、映画のヒットに続く朗報となった。贈呈式は12月上旬に都内で行われる。

 ▼その他の受賞者

 高倉のほかに各分野で活躍する面々が受賞した。開発途上国の貧困救援活動も行っている作家曽野綾子氏(81)や、がん治療を一般に啓発した功績が認められて医師の近藤誠氏が受賞した。自然下でのトキの繁殖に36年ぶりに成功した新潟県佐渡トキ保護センター、ロンドン五輪女子レスリング金メダリストの吉田沙保里(30)伊調馨(28)も受賞が決まった。