<日刊スポーツ映画大賞:主演男優賞・高倉健(あなたへ)>◇28日◇ホテルニューオータニ

 第25回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)の授賞式が行われた。「あなたへ」で主演男優賞を受賞した高倉健(81)はスケジュールの都合で欠席したが、共演したSMAP草なぎ剛(38)が代理でステージに上がった。高倉から託されたメッセージを代読後、撮影中に人間性にも強く影響を受けたと明かした。

 草なぎは緊張の面持ちで登壇した。「あなたへ」の著者、作家の森沢明夫氏から花束を、昨年の主演男優賞受賞者、松山ケンイチから表彰の盾を渡された後、高倉のメッセージを読み上げた。

 「地味な作品で、この主演男優賞をいただけてうれしいです。授賞式という華やかな場に出るのは好きではないですが、評価をいただけることは、うれしいです。映画賞をいただくことで一緒に仕事をした大勢のスタッフ、キャストと喜びを分かち合いたいです」

 草なぎも高倉が言う、喜びを分かち合った1人だ。この日はレギュラー番組「笑っていいとも!」生放送終了直後にスタジオを飛び出して駆けつけた。

 この日朝、高倉に電話をかけると、「悪いね、頼むぞ。おまえが代表して行ってきてくれ」と言われた。「健さんの代理を務められたのは、本当に光栄です。でも、おいしいものをごちそうしてくださいってお願いしました」。

 「あなたへ」の撮影中、高倉は出演者やスタッフをよく食事に誘っていたという。「食事に誘って距離を縮めてくださる。僕も気持ちがほぐれました。僕が緊張して接しているのを分かった上で自然に接してくださるので、タメ語になってしまったりするんです」。距離を縮めていくと同時に具体的な演技のアドバイスも受けたこともあったという。「演技や、たたずまいで説得力を持たせるお芝居なんて健さんしかできない。存在が唯一無二。神様というか」。

 高倉はメッセージで、授賞式欠席の理由に触れた。「自分は賞をもらわなくても、もう映画俳優しかできません。その賞が励みになる若手俳優にとってほしいという気持ちに変わりはありません」。

 これに草なぎは「こんなこと言えないですよ」と感動していた。メッセージには今後の映画人生についても記されていた。

 「1本でも多く、いい仕事に出会いたいと思っています。今、その出会いを待っているところです」

 草なぎは「何でもいいので共演させてください。できれば任侠(にんきょう)映画がいい。健さんが組長で僕が舎弟で」。【近藤由美子】

 ◆あなたへ

 北陸の刑務所の指導技官、倉島英二(高倉健)は50歳を目前に刑務所に慰問に来た歌手洋子(田中裕子)と結婚。平穏な生活を営んでいたが、15年後に洋子が死去。遺言の絵手紙に「故郷の海に散骨してほしい」と記されていた。なぜ生前、思いを伝えなかったのか。英二は自家製キャンピングカーで総距離1200キロの旅に出て、散骨した時、妻の真意に気付く。降旗康男監督。

 ◆高倉健(たかくら・けん)1931年(昭6)2月16日、福岡県生まれ。56年の主演映画「電光空手打ち」で俳優デビュー。「網走番外地」「日本侠客伝」「昭和残侠伝」シリーズなどで人気獲得。77年「八甲田山」「幸福の黄色いハンカチ」で日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞とブルーリボン賞の主演男優賞。98年に紫綬褒章。99年「鉄道員(ぽっぽや)」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、ブルーリボン賞主演男優賞。06年文化功労者。※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀