俳優役所広司(57)が、V6岡田准一(32)を時代劇映画の次世代リーダーになると期待した。役所が主演で、岡田が本格的な殺陣に初挑戦する時代劇映画「蜩ノ記」(14年公開、小泉尭史監督)のクランクアップが近づき18日、岩手県遠野市の撮影現場が取材陣に公開された。

 役所は近年、「十三人の刺客」「最後の忠臣蔵」など、時代劇映画に積極的に出演している。一方で、「時代劇はビッグヒットが見込めないという統計がある。職人もリタイアしていく」と、時代劇離れの現状を嘆いたが、初共演の岡田に“光”を見いだしていた。「こういう映画をきっかけに、若い人を教えていきたい。岡田君は(子供のころに)チャンバラなんてやらなかっただろうに、雰囲気がある。着物の着こなし、立ち回りもよくできていて、すばらしい。これから日本の時代劇を一緒にやってほしい」。

 役所は側室との不義密通の末、家臣を切り捨てる事件を起こしたとされる元奉行を演じる。一方の岡田は、3年後の切腹が決まっている役所を監視する役。2人は師弟関係に発展するが、役柄を離れても岡田は役所を崇拝し、役所の期待に応える覚悟も示した。「タダで、間近で役所さんの演技を勉強できるなんてラッキーです。本当なら付き人に付いてでも勉強したいですし、もし、役所さんの年のときに役者をやれていたら、(時代劇を)伝えていきたい。今回のような時代劇を、日本文化として伝えられる役者になりたいです」。

 同作は、巨匠黒沢明さんと、その弟子だった小泉監督の師弟関係も意識した作品になるといい、岡田が「自分が小泉さんだと思ってやっています」と言うと、役所は「(自分は)黒沢さんか。参ったな…」と苦笑いした。25歳差。新たに生まれた師弟が、現場の空気を暖かくした。【森本隆】

 ◆蜩ノ記(ひぐらしのき)

 葉室麟氏原作の第146回(11年下半期)直木賞受賞作。城内で刃傷沙汰を起こした檀野庄三郎(岡田准一)は、罪を逃れる代わりに、家老から戸田秋谷(役所広司)を3年間、監視するよう命じられる。戸田は7年前に側室と不義密通をし、小姓を切り捨てる事件を起こしたとされており、罰として家譜の編さんと切腹を言いわたされていた。切腹までの3年間を、淡々と使命をまっとうする戸田、支える妻(原田美枝子)や、娘(堀北真希)に感銘を受ける庄三郎は、事件の真相を探り始める。