第26回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が9日、決定した。

 是枝裕和監督(51)は監督賞初受賞に「本当にうれしい」と相好を崩した。監督を始めて18年。「そして父になる」で審査員賞を受賞したカンヌなど数々の国際映画祭で受賞経験があるが、国内では賞という形の評価や、興行面での成功は収めていなかった。

 実は映画祭出品を続けてきたのは、それを海外配給につなげ、国内だけで回収し切れない製作費を捻出する必要に駆られてのことだった。「正直、自分が日本映画界に入っている意識がない」。最近は日常を背景に人間の感情を描く作品を作り続けてきた。自ら手掛ける脚本や子役を含む俳優への演出力の評価は高かったが、国内のヒットにはつながらなかった。

 「そして-」は興行収入31億円の大ヒットを記録したが、主演の福山雅治(44)が、自分の作品世界を理解してくれていたことが要因という。「『僕が主演というよりも、監督の作品世界の住人の1人になるような映画作りに参加したい』という明快な意思があった」。成功体験の先に既に新作の構想がある。「僕がちゃんとした意識で生きたことが反映されれば、時代をまとう作品になる」。瞳の奥が輝いた。【村上幸将】

 ◆是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年(昭37)6月6日、東京都生まれ。早大卒業後、制作会社テレビマンユニオンでドキュメンタリー番組などを制作。95年の監督デビュー作「幻の光」でベネチア映画祭で金のオゼッラ賞。99年「ワンダフルライフ」は仏ナント3大陸映画祭グランプリ。04年「誰も知らない」でブルーリボン賞の作品賞と監督賞、08年「歩いても

 歩いても」で同賞監督賞など受賞。

 ◆そして父になる

 人生の勝ち組と思って生きてきた野々宮良多(福山雅治)は息子慶多(二宮慶多)が私立小学校に合格後、妻みどり(尾野真千子)が慶多を出産した病院から子供を取り違えた可能性があると知らされる。検査の結果、息子でないと判明。本当の息子琉晴(黄升■)を育ててきた斎木雄大(リリー・フランキー)ゆかり(真木よう子)夫妻と話し合いを続ける中、親子の絆について考え続ける。※■は火ヘンに玄