第26回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原裕次郎記念館協賛)が9日、決定した。

 30歳、新進気鋭の石井裕也監督にとって心から「うれしい」と思える作品賞受賞となった。「ベテランスタッフばかりの現場でしたが、皆さん真剣に対等にやってくれた。映画の持つ楽しさ、すごさを再確認できた。そんな現場から生まれた作品で手にした作品賞だから価値がある」。

 オリジナル作品を作ってきたが初めて原作を映画化した。「いろいろなところで勝負して違う引き出しを見たい」と思っていた時期だった。松田と組むのはもちろん、同い年の俳優も初めて。普段俳優と飲みに行かないが「イメージを共有し、どういう風に映画を作るか」などと探り合いながら酒席で語り合った。「辞書作りという一見地味な仕事を15年かけて成し遂げる主人公、馬締(まじめ)の一生懸命さをどう見せるか。そこを死守する」という一本筋が出来上がった。「馬締という1人の青年の話に僕も松田さんも自分に重ねられた」。

 振り返れば、プロデューサーから依頼された段階で原作、監督、主演は決まっていた。「もう1つ壁を突き破れ。自分の力だけでやっていけると思うなよ。いい相棒を与えてやる」。そんなメッセージを受け止め原点に立ち返って得た作品賞となった。【村上幸将】

 ◆石井裕也(いしい・ゆうや)1983年(昭58)6月21日、埼玉県生まれ。大阪芸大の卒業制作「剥き出しにっぽん」で07年「ぴあフィルムフェスティバル」のグランプリと音楽賞を獲得。08年「アジア・フィルム・アワード」で、第1回エドワード・ヤン記念アジア新人監督賞。09年「川の底からこんにちは」で商業映画デビュー。11年ブルーリボン賞監督賞を歴代最年少受賞。10年に女優満島ひかりと結婚。

 ◆舟を編む

 定年退職する編集者荒木(小林薫)に代わり、営業部内で変人扱いの馬締(松田龍平)が後任で加わった玄武書房辞書編集部は監修の松本(加藤剛)を軸に新辞書「大渡海」編集に取りかかる。略語、若者言葉なども取り入れ新たな辞書を目指す中、馬締は大家の孫で板前修業中の香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれ。そして「恋」の語釈を作るよう命じられる。