米映画界最高の栄誉とされる米アカデミー賞を選考する映画芸術科学アカデミーが28日、宮崎駿監督(73)に名誉賞を贈ることを発表した。卓越した業績を残した映画人に贈られる賞で、日本人では、90年の黒沢明監督以来2人目の快挙。

 80歳の黒沢明監督がメガネ越しにも笑っているのが分かった。24年前のアカデミー名誉賞授賞式だ。

 「現役の世界最高の監督です。『映画とは何か』に答えた数少ない映画人の彼にこの賞を贈ります」と紹介したのはジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグの両監督だった。

 作品ではなく、人物とその功績をたたえる名誉賞にはそれだけの重みがある。世界中の賞や勲章を手にした黒沢監督にとっても格別なものだった。アカデミー賞では52年「羅生門」、76年「デルス・ウザーラ」と外国語映画賞を2度受賞しているが、授賞式は欠席している。

 ジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」が「七人の侍」を翻案したことは有名だが、他にも「ゴッド・ファーザー」「レイダース」「未知との遭遇」など、クロサワへの尊敬の念からその手法を模したシーンがハリウッド名作には数限りなくある。

 その全てに対する称賛だからこそ、監督も心から笑ったのだ。晩年の「乱」「夢」はハリウッドの後押しで映画化にこぎ着けた。派手な舞台を好まない監督だが、後年のインタビューでもこの名誉賞に関しては素直に喜びを語っていた。【相原斎】