女優吉永小百合(69)初プロデュース映画「ふしぎな岬の物語」(成島出監督、10月11日公開)ジャパンプレミアが16日、都内で行われ、劇中音楽を演奏したギタリスト村治佳織(36)が登壇した。舌腫瘍の療養で昨年7月に休養を発表後、初の公の場で、村治はメーンテーマ「望郷」を生演奏。「姉」である吉永がプロデュースしたカムバックの舞台だった。

 吉永は「私の大好きな、大事な友だちというか、妹分みたいな関係なんですけれども、村治佳織さんに映画の中でギターを演奏していただきました。今日は来て下さっています」と言い、村治を壇上に招いた。

 村治は昨年7月22日に舌腫瘍と診断され、全公演予定をキャンセル。療養を続けていた。この日の舞台は、昨年7月2日に山形県で行ったライブ以来となる公の場。村治は照れくさそうに笑いつつ感謝した。「また、ここに元気に、こうして…。ステージは第2の家のような感じ。ご声援いただいて、小百合さんにも毎日、毎日パワーをいただいたので、こうして戻ってくることが出来ました」。

 吉永も「克服され、お元気になって演奏を引き受けて下さった」と感謝した。

 吉永と村治の出会いは、吉永がライフワークとして86年からボランティアで続ける原爆詩の朗読がきっかけだった。97年にリリースした原爆詩の朗読CD「第二楽章」制作にあたり、吉永が村治の演奏を聴き、BGMに使いたいと手紙を書き、村治が収録に参加。その後、親交を深め、村治が原爆詩朗読のチャリティーコンサートに参加したり、プライベートで旅行もする関係となり「姉」「妹」と呼ぶ関係となった。

 吉永は以前から「映画とギターは切っても切れない。『禁じられた遊び』(52年)からそう」と考えてきた。そして、プロデューサーとして「佳織さんの演奏で映画が終わるのが夢だった」と村治の起用を決意し、病状を見つつ昨年にオファー。村治も回復し、3月末に療養期間を終え、5月に収録に臨んでいた。

 村治は壇上で、メーンテーマ「望郷」を生演奏した。4分50秒、情感豊かに弾き上げた。「大好きな大好きな小百合さんからお話をいただけてうれしかった。このお話は、私の順調な経過と同じような時間の経過で進んでいった。私の希望の光だった」と喜びをかみしめた。【村上幸将】

 ▼村治佳織(むらじ・かおり)1978年(昭53)4月14日、東京都生まれ。3歳から父昇氏の指導を受け、92年にブローウェル国際ギター・コンクールと東京国際ギター・コンクールで優勝。97年にフランスに留学。05、11年に右手後骨間神経まひで演奏活動を休止。今年7月24日に一般男性と結婚したと発表した。