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作家の小田実さん胃がんで死去
ベストセラー旅行記「何でも見てやろう」やベトナム反戦活動、テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」の論客としても知られた作家小田実さん(おだ・まこと)が30日午前2時5分、胃がんのため東京都中央区の病院で死去した。75歳。大阪府出身。今年4月に末期がんであることを公表し病室からも平和への発言を続けた。護憲を訴え続け、改憲路線をひた走る安倍晋三首相(52)率いる自民党の参院選惨敗を見届けるようにして逝った。
小田さんは亡くなるその瞬間まで護憲の闘士だった。今年4月、知人らにあてた手紙で末期がんであることを公表。翌月に都内の病院に入院してからも、抗がん剤の化学療法を受けながら、病床から護憲平和の大切さを訴え続けた。だが、先月中旬以降からがんの進行と体力の衰弱が激しくなり、最期は眠るようにして逝ったという。
昨年9月に発足した安倍政権の掲げる改憲路線には、徹底して反発した。公式ホームページでも「現行の憲法を『改憲』してまで、『改憲』を彼の政策の『公約』に掲げてまでして彼の『美しい国』を実現しようとする政治姿勢」への批判を貫いた。くしくも亡くなった30日は、安倍氏率いる自民党が歴史的大敗を喫した時だった。作家沢地久枝さんは「自民党の惨敗を見届けるような時間に亡くなったのは、いかにも小田さんらしい。作家、市民として存分に闘い、見事な人生でした」と悼んだ。
小田さんの平和を求める原体験は、13歳で体験した大阪大空襲にあった。そこで、目の当たりにした死者を「難死」(無意味な死)と呼び、国から見捨てられた「棄民」の怒りから、平和活動に生涯をかけた。
61年の著書「何でも見てやろう」では、欧州や中近東、アジアなどを旅行した体験をつづり、多くの若者の支持を得た。帰国後の65年には「ベトナムに平和を! 市民連合」(ベ平連)を結成。代表として反戦デモの先頭に立ち、ベトナム戦争で北爆を開始した米国を批判。その後も「行動する作家」の姿勢を貫き続け、韓国の反体制詩人金芝河さんの救援活動も展開した。04年には、平和憲法を守る「九条の会」の呼び掛け人になった。テレビ朝日系討論番組「朝生」のパネリストとしても積極的に出演。日本で護憲を語れる数少ない論客として、ブラウン管を通じて「戦後」を知らない若い世代に平和を訴え続けた。
[2007年7月31日7時40分 紙面から]
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