<フィッシング・ルポ>

 東京湾、秋の風物詩といえるスミイカ釣りが活況を呈している。その中で1日じっくり狙えて、帰路に脂の乗ったサバも狙う亀有「聡丸」(水野聡船長)を訪ねた。エビに似た餌木(えぎ)を海底付近でゆらゆらと揺れ動かして、スミイカをいかに誘惑できるか?

 誘いはじっと我慢することができるか、どうか。禅問答のような釣りではあるが、ヒットした直後に勢いよくリールを巻く荒々しさはとりこになっちゃうぞ。

 JR亀有駅から徒歩5分のショッピングセンター「アリオ亀有」の近くを流れる中川に聡丸の船着き場がある。川を下って、東京スカイツリーを眺めながら、東京湾へと出航する。クルージングだけでも心がワクワクしてくる。

 釣り場は、中ノ瀬。東京湾のど真ん中に大きな水中島があると思ってもらえばいい。水深20メートル以内だ。中オモリを着底させる。そこからハリス分の1・5~2メートル浮かせる。宙に漂う中オモリの下でハリスから伸びた餌木がふわりふわりと漂う。その不規則な動きにスミイカが抱きついてくる。

 反応はサオ先に出てくる。波間で揺れる規則な動きとは違って、ぐぐぐぐっ、とサオ先が揺れる。その直後にサオを振り上げて、リールで道糸を巻き続ける。サオが弓なりになる。餌木には返しがないため、このときに糸がフケてしまうと、すぐバレてしまう。アタリの1発目は、見事にバラしてしまった。

 水野船長

 サオを振り上げたら、そのときにグサリとスミイカにハリを刺す。あとは勢いよくリールを巻き続けるのがコツだ。ただし、バレちゃうと逃げたイカがほかのイカに何かを伝えるのか、ぱったりと釣れなくなる。だから、バラされると困るんですよ。

 責任重大である。移動してまたサオを出した。すぐにアタリが出た。今度もバタバタしたものの、リールは休みなく巻いてゲットした。隣の釣り座だった常連客の牧田広さん(59)にカメラのシャッターを押してもらった。その撮影の間にスミイカが天に向かって黒いスミを噴出した。顔ではなくツルツルに剃った頭部に転々とほくろのようにスミが着地した。スミをいつ噴出するか分からないので、釣ったらすぐにバケツに投入した方がいいだろう。

 船中ではあちらこちらでスミイカが乗ってきた。中園正公さん(60)が、いきなり大型アオリイカをゲット。その後、次々にスミイカが上がりだした。最終的には佐藤勇さん(69)とスミイカ初挑戦の岡本満広さん(44)が9匹でトップ。まずまずだ。記者は最後の1投で追釣して計7匹。まずまずだ。

 潮温はようやく16~17度になってきた。帰り際のサバ釣りでは星野浩幸さん(49)が丸まるとしたサバを連発させた。スミイカ秋の陣はこれからさらに面白くなっていきそうだ。【寺沢卓】

 ▼仕掛け

 魚を寄せるコマセはない。ニオイの強い付けエサもない。ただあるのは餌木だけ。2・5号とこぶりなサイズだ。先調子のキスザオに小型両軸受けリールを装着する。道糸は0・8号~1号。水深は深くても20メートル前後なので70メートルも巻いてあれば十分だ。スナップ付きヨリモドシを結んで、細長い中オモリ10号をつなげる。ハリスは4~5号を1ヒロ(1・5メートル前後)、そのハリスの先に餌木をくくりつける。

 ▼宿

 亀有「聡丸」【電話】090・2223・5065。スミイカの乗り合いは、土日・祝日出船。集合午前6時で9000円。