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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
ジャニーズJr.のストーカーおばさんに粋な裁判官は…
今週は書くことがないんですよ。5月1日は南波修一被告人の公判があったけど、予定されていた証人は出廷せず…。5月2日は、遠藤誠一被告人の公判があったけど、傍聴券の抽選にハズレまして…。
というわけで、今回はちょっと前の傍聴記です。4月19日に行われた宮阪康江被告人の公判。罪名は住居侵入。事件の内容を、逮捕当時のニュースから説明しましょう。
現在43歳の宮阪康江は、アイドルグループ「ジャニーズJr.」の元メンバーにストーカー行為を繰り返した。01年1月ごろから元メンバーの男性を自宅近くや駅の改札で待ち伏せたり、電車の中で無言で見つめるなどしたため、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反で送検された。
06年1月、男性が住むマンションの敷地内に入ったとして建造物侵入の現行犯で逮捕された。
ジャニーズのタレントって大変だよなぁ。引退した後も追っかけられたりするのか。検察官によると、被告人は9年ほど前に被害者のファンになり、コンサートへ行くようになった、と。そして00年、被害者は芸能活動をやめるが、被告人は気持ちを伝えようと手紙を送ったり尾行したり、ストーカー行為をするようになった。04年には2度のストーカー規制法の警告、05年には禁止命令を受けていたそうです。
で、事件当日。被害者の顔を見て元気をもらいたいという思いで、マンションの前で1時間張り込み。他の住人がオートロックを開けたすきに中へ入ることに成功する。被害者宅のインターホンを押すが反応がなく、帰ろうとしたところ、被害者の父親に逮捕された…というのが事件の大まかな流れのようです。
裁判は、実家から父親が情状証人として出廷してました。「逮捕されてから1カ月たって連絡が来たんですよ」「マンション購入の頭金を与えたかわりとして、職業はかえるなと言ったのに、仕事をかえたことを何も言ってくれなかった」等々、娘とコミュニケーションがうまく取れなかったと言いながら、大号泣。泣きすぎてしゃべれなくなると、
裁判官 「お気持ちはお察しします。落ち着いてから、お答え下さい。…私も娘がいるので分かりますよ。娘は母親とは話すけど、男親って正直に話づらいってあるじゃないですか」
と実体験をまじえて裁判官がアドバイスするワンシーンもありました。
次は弁護人からの被告人質問。
弁護士 「1月25日に、被害者のマンションに入った理由は何ですか?」
被告人 「仕事が忙しく体調も悪くて、それで気分を紛らすために(被害者の)顔が見たくなってしまいました」
弁護士 「仕事が忙しい、と。残業が多かったようだけど、どれくらい?」
被告人 「多い月で160時間です」
土、日も休みなく、朝7時に家を出て夜11時に帰宅する生活だったらしい。そんな仕事に追われる生活のはけ口がストーカー行為かぁ…。
弁護士 「マンションの中に入った経緯だけど、帰ろうとしたところ、偶然、住人が通って、その後ろをついて行って中に入った、と」
被告人 「その人が来なければ帰るつもりでした」
中に入るために住人を待ちぶせしてた訳じゃなく、偶然通りかかって、玄関が開いたので衝動的に入ってしまったという主張です。「衝動的に入ってインターホンを押すんですかね」と突っ込みたくなったのは私だけではないでしょう。
今度は検察官からの被告人質問です。
検察官 「平成16年(04年)にあなたが購入したマンションですが、被害者宅からどれくらいの距離ですか?」
被告人 「正確には分かりませんが、1キロはないと思います」
検察官 「歩いて行ける距離ですよね? このマンションを購入したのは、被害者の住む場所にすぐ行けるから、近い場所だからという理由じゃないんですか?」
被告人 「いや…、それだけが理由ではありません」
“それだけが”ってことは、それも理由の1つなのか。恐ろしい話だ。
検察官 「今まで何回くらい被害者のマンション敷地内に入ってるんですか?」
被告人 「正確には覚えてません。4~5回くらいだと思います」
偶然住人が帰ってきて、その後ろをついてマンション内に入ったと言ってたのに、それが4~5回あるのか。う~ん、やっぱり誰かが帰ってくるのを待ち伏せしてたと考える方が自然だよなあ。インターホンを押してるし。
最後は裁判官からの質問。
裁判官 「相手が嫌がっているのに、相手の顔を見たら、いやされたのかな?」
被告人 「…」
裁判官 「ん~…。テレビでよくあるじゃないの、イケメンスターとかね。この被害者がイケメンかどうかは私は知らないけれども、夢みたいなのを追いかけてる若いお嬢ちゃんたちが多いじゃないですか。それとは違うの?」
被告人 「いや、そういう感じでは…」
裁判官 「若い学生のころに、好きな人とすれ違って胸をときめかせるって感じなのかね? よく分からないんだ、こういう行動に出るのが」
被告人 「救いを求めてる感じでした…」
裁判官 「ん~。会ってくれないから、危害を加えようってのは…」
被告人 「そういうのは全然ありません」
裁判官 「そうか、そうか。…ま、人の気持ちって分からないね」
最後はかみしめるように名言を投げかけてました。裁判官が言うと深いよなぁ。
被告人質問がすべて終わり、検察官が懲役1年を求刑。これで閉廷かと思ってたら
裁判官 「15分後に判決にします」
と即日、判決です。
結果は、懲役1年の執行猶予3年。判決理由を読み上げた後、
裁判官 「これは私の無責任な発言かもしれないけれど、自分の感情で行動するのは社会人として許されないよね? 『会いたい人に会って何が悪い?』って考えてるのかと思うよ。私は医者じゃないから分からないけども、社会人の先輩として、そう思うよ。帰りの電車で2人きりになるんだから、父さんと心を開いて話した方がいいよ。(傍聴席に向かって)お父さん! 聞いてあげてくださいね」
と、予定時間より30分も過ぎて閉廷。電車で一緒に話しながら帰すための即日判決か? 粋(いき)な裁判官だなぁ。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。