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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
俺たちに明日はない・アキバ編
ちょこっと宣伝を。11、12日に大阪と名古屋で裁判のトークライブを行います。大阪が6月11日、午後2時開演。場所は大阪城ホール内のウルトラ・マーケット。名古屋は6月12日、午後7時30分開演。場所はTOKUZO。お近くの方は傍聴に来てくださいな。
今回の傍聴記は6月2日に行われた石川侑生(ゆうき)被告人と藤本美紀被告人の初公判。罪名は詐欺未遂。事件の概要はこんな感じです。
3月30日午後8時頃、石川侑生(当時23)と藤本美紀(当時21)の2人はJR秋葉原駅構内で走っていた男性会社員にわざとぶつかり、持っていたサングラスが壊れたとして修理代名目で金を脅し取ろうとした疑いで逮捕された。逮捕後、2人は昨年12月以降、こうした手口で50件の恐喝を重ねたことを供述した。
海外では安い酒を紙袋に入れてわざとぶつかって落とし、法外な代金を要求する「ボトル・アタッカー」なんていう犯罪があるらしいけど、本件はその日本版って感じかな。
もし、オレが被害者だったらお金払っちゃいそうだなぁ。少なくとも平謝りはするだろうね。ぶつかったことで高そうなサングラスが壊れちゃったわけだし。でも、この被害者は違ったんですね。検察官の冒頭陳述で、驚きの犯行内容が明らかになるのです。
藤本被告人は、セカンドバッグに壊れたサングラスを引っかけ、急いでいた男性被害者にぶつかる。石川被告人が落ちたサングラスを拾い上げ「これ壊れとるワ」。さらに藤本被告人が「壊れとるワ、どうしてくれんねん」と追い打ち。石川被告人が男性被害者に「どうしてくれんねん。これ高かったのになぁ」と言い寄ると、男性被害者は「お金は払いません!」と強気の態度に出る。男性被害者がお金を払うことを拒み続けていると、石川被告人とにらみ合いになり険悪なムードに。あきらめて石川・藤本被告人が逃げようとすると、男性被害者が石川被告人にけりを1発。「これ以上、危害を加えられたら大変」と思った藤本被告人が駅員に言って、警察を呼んでもらい犯行が発覚した。警察を呼んだ方が恐喝未遂で現行犯逮捕される結末に。
「お金は払いません」と突っぱね、けりを入れた被害者もすごいけど、悪いことしといて自分から警察を呼んだ被告人もすごい。こういう事実は新聞読んだだけじゃ分からない、裁判を傍聴してみて初めて分かるもんだな。
で、裁判は藤本被告人の父親がこの日のために上京し、証人として出廷してました。今後は一緒に生活し、監督することを約束して尋問終了。
次は石川被告人の被告人質問です。
弁護士 「去年の12月に上京したのはなぜ?」
石川被告人 「彼女と新しい生活をしよう、と」
弁護士 「なぜ、就職せずにいたんですか?」
石川被告人 「探してはいたんですが、住所不定で見つかりませんでした」
弁護士 「今回、逮捕されてどう思いました?」
石川被告人 「この生活をやめたかった、誰かに止めてほしかったという思いがあったので、正直、ホッとしました」
弁護士 「一緒に生活しようという彼女を、一緒に犯罪をさせてしまった。今、どう考えてますか?」
石川被告人 「男として情けないし、申し訳ない」
弁護士 「今後、彼女とはどうするつもりですか?」
石川被告人 「藤本さんさえ良ければ、結婚したいです」
と、突然のプロポーズ。これには藤本被告人、顔を手で覆って号泣してました。
今度は藤本被告人への質問。
弁護士 「今回の犯行を考えたのはどっちですか?」
藤本被告人 「ユウキ君(石川侑生被告人)です」
弁護士 「なぜ、従ってしまったんですか?」
藤本被告人 「2人で一緒にいたくて・・・。甘えた関係になってしまった、なれ合いで生活してたので・・・」
弁護士 「事件のことを聞きます。警察を呼んだのはどっちですか?」
藤本被告人 「私です。駅員さんに言って」
弁護士 「捕まる覚悟で呼んだの?」
藤本被告人 「はい、そうです」
弁護士 「本件以外にも、30人くらいに同じ犯行をして、100万円くらい得ていたみたいだけど、皆どんな反応でした?」
藤本被告人 「皆『申し訳ありませんでした』と頭を下げてくれました。良心がすごく痛みました・・・」
弁護士 「でも、やめなかった・・・」
藤本被告人 「・・・甘えが出ちゃった」
弁護士 「将来、彼とはどうするんですか?」
藤本被告人 「今後、こういうことは私はしないし、彼がしようとしても私が食い止めます。今回逮捕されたことで、2人とも、大事なことに気付いたと思います。普通・・・普通に暮らすのが一番幸せだって、よく分かりました」
泣きっぱなしの藤本被告人、質問の間も傍聴席を何度も振り返って「お父さん、ごめんなさい」と小声で連呼してました。
次は検察官からの質問。
検察官 「警察を呼んだ理由を『この生活を誰かに止めてほしかった』って2人とも答えてるんだけど、被害者にけられたからでしょ?」
藤本被告人 「そういうわけでは・・・」
検察官 「ホントに止めてほしいのであれば、犯行前に自首すればいいでしょう」
藤本被告人 「・・・でも、破滅するのは分かってたので、止めてほしかったんです」
検察官 「手にしたお金は何に使ったんですか?」
藤本被告人 「ホテルの宿泊代とか生活費です」
検察官 「1泊いくらですか?」
藤本被告人 「1万2000円くらいです。でも、100円ショップのパンを2人で分けて暮らして、切り詰めてました」
検察官 「親元に帰るとか方法はあったんじゃないの? なぜ、こういうことしたんですか?」
藤本被告人 「一緒にいたい、そういう一心でやってしまいました」
愛さえあれば、犯罪もできるって感じなのかね? 相当ラブラブな被告人です。
最後は裁判官からの質問。
裁判官 「今後ね、石川君と一緒にいたら、また同じことやるんじゃないの?」
藤本被告人 「普通が一番幸せだって分かったので、やりません」
裁判官 「別れようとは思わない?」
藤本被告人 「思いません」
裁判官 「どうして?」
藤本被告人 「愛しているからです!!」
映画「俺たちに明日はない」の現代版(アキバ編)ですよ。ボニーとクライドが逃亡中に銃で撃たれ、蜂の巣にされるラストシーンがスローモーションになるんだけど、この事件で言えば、逃げようとしたところを被害者にケツをけられる瞬間がスローモーションになる場面だね。悪いことをして互いの絆(きずな)を深めてた感じで自分たちに酔ってたんじゃないかなぁ。主役きどりだったんだろうけど、一言で言えば幼稚。
で、石川被告人は前科があって執行猶予中の犯行ということもあり、途中退廷。ついでに言うとそれ以外に逮捕歴が2回ありました。
この日は藤本被告人にだけ判決が下され、懲役1年執行猶予3年。拘置所に愛する彼を残し、父親と一緒に実家へ戻ったのでしょう。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。