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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

国の護りより老後の守りかよ…

 知らないのって俺だけ?“探偵業法”なんてのが可決されてたのね。共謀罪ばかりが話題になってたから気づかなかったよ。これが施行されたら、届け出た探偵社以外は張り込みやら聞き込みなんかができなくなるのかぁ。フリーライターの人とか大変だろうね。ある探偵社が運営している“探偵ファイル”ってサイトで、週イチの連載をさせてもらっているんだけど、俺はOKなのかね。ま、張り込みとかする予定ないからどうでもいいんだけどさ。とにかく、法案を一通り読んだけど、何のためのルールなんだろ。うーーん、共謀罪の布石か? 考えすぎか? いずれにせよ、このルール違反で逮捕され、裁判になることも考えると、傍聴人としては興味津々だよ。世の中は知らないうちにいろいろ動いてるんだな。

 今回は、6月23日に行われた、生澤守、河野孝義、松田隆繁被告人の裁判の話。罪名は競売入札妨害。事件の内容は、いわゆる防衛施設庁官制談合事件ってやつです。

 逮捕当時のニュースを引用して説明すると、生澤、河野、松田の3人は、空調メーカーの大気社、新菱冷熱工業、三機工業の営業担当者らと共謀して、防衛施設庁が発注した空調工事で、3社が加わる建設共同企業体が落札できるように協定した疑い。

 複数の工事で、防衛施設庁側が受注予定業者を決めた“配分表”を作成し、幹部が保管していたという。業者の選定は、防衛施設庁OBの天下り受け入れ実績を元に割り振られたとみられる。

 業者は、24カ月の競争入札への指名停止処分。防衛施設庁の幹部職員84人を処分。と、世間的にはかなり大騒ぎなわけです。にもかかわらず、今回の公判はほとんど報道されてないのよね。被告人質問&求刑だったんだけど。

 まずは、生澤被告人の質問から。

 弁護人 「あなたが発注工事の割り振りをしているのを知ったのはいつですか?」

 こう質問されると、蚊の鳴くような小さな声で、

 生澤被告人 「平成3年の……」
 弁護人 「もう少し大きな声でね」

 と、弁護人に注意される始末。しかも注意を受けたにもかかわらず、最後まで小声のまんま。裁判官にも何度も注意されていました。言いにくいことでもあるんだろうか。なので、聞こえた部分で気になった質疑応答を。

 弁護人 「定年が近くなると退職を勧められて、再就職を見つけてもらう、俗に言う天下りですが、年間どれくらいの人が対象だったんですか?」
 生澤被告人 「早期退職勧奨制度といわれてまして、年に20人程度でした」
 弁護人 「そもそもあなたが公務員になろうと思ったのはなぜですか?」
 生澤被告人 「国のために仕事ができること。自分の身分が保証されていること。あとは、定年後も職場を保障されてるってことですね」

 公務員って定年後、仕事保証されてるの? 長年、防衛施設庁にいたから感覚がおかしくなってしまっている気が…。

 次は検察官からの質問。

 検察官 「このままいけば、理事長になる予定でしたよね。その後の再就職先は?」
 生澤被告人 「……」
 検察官 「いつ決まるんですか? 歴代の人を見れば、どういう再就職になるか、いつ決まるかがわかるんじゃないですか?」
 生澤被告人 「一概には言えません」
 検察官 「あと、退職金は全額返すんですか?」
 生澤被告人 「どういう内容で話が来るかによります…(全く、聞こえない)…。正式にお話があれば(全く聞こえない)…」

 と、さらに小さな声になってモゴモゴと答えてました。

 最後は裁判官からの質問。

 裁判官 「官制談合やめようという話はでなかったんですか?」
 生澤被告人 「他からですか?」
 裁判官 「(苦笑い)内部からです!」
 生澤被告人 「技術審議員という2番目のポストということで、何度も試みましたが…(聞こえず)…代わりの方法が思いつかず続けてしまいました」
 裁判官 「早期退職勧奨制度ですが、再就職先の会社に、見返りとして仕事を発注する、と。こんなこと繰り返してたら、悪いことは永遠になくならないですよね」
 生澤被告人 「私の勝手な言い方かもしれませんが、歴代の人たちもやってきた…(聞こえず)…悩みながら、どうしようもありませんでした」
 裁判官 「で、平成14年に“官制談合防止法”ができて、防衛庁全体でやめようという話にならなかったんですか?」
 生澤被告人 「そんな話は出ませんでした」
 裁判官 「それがわからないなぁ。国会でどんな法律が出来ようが、隠れてればいいって感覚なんですか……」

 と、ため息交じりで首をかしげてました。ここまで裁判官をあきれさせるとは。

 2番目は、河野被告人の被告人質問。今度は声は大きいけど、滑舌が悪いうえに、早口なのでまたもや何を言ってるかわからないんです。ほんと、傍聴人泣かせの被告人たちだよ。

 裁判官 「摘発を受けると思ってませんでしたか?」
 河野被告人 「さっき生澤被告人も聞きましたが、再就職の見返りとして企業に仕事を与えなければならないと」
 裁判官 「(官制談合防止法可決の)平成14年にやめようとはならなかった?」
 河野被告人 「対策しようという話はあったかと思いますが、具体的に動くことはなかったと思います」
 裁判官 「(20年以上続いた談合で、自分たちの時に逮捕されたことについて)貧乏くじひいたって感じですかね」
 河野被告人 「たまたま、そうなったと思います」

 いやみっぽく、裁判官が質問してたんだけど、“貧乏くじ”ってのは面白い言い方だね。実際、歴代の人たちは罪に問われていないわけだし。ま、その問いに“たまたま”と答えるのはどうかと思うけどさ。

 3番目は、松田被告人の被告人質問。この被告人は声も大きく、ゆっくりと話すので聞き取りやすかったですね。

 弁護人 「あなたが企画官になったとき、談合の引継ぎはありましたか?」
 松田被告人 「ございました」
 弁護人 「そのポストを離れる時は?」
 松田被告人 「行っております。具体的な方法を伝えてきました」
 弁護人 「悪いこという意識はありましたか?」
 松田被告人 「はい、ありました。長いこと続かないな、自分の代で談合は終わりになるかなという思いもありました」
 弁護人 「やめようとはならなかったんですか?」
 松田被告人 「話題に出たことはありましたが、実際動くことはなかったです」
 弁護人 「なぜですか?」
 松田被告人 「やめた時の影響、天下ったOBの事情、官側から一方的にやめると混乱が起きる、と考えると踏み切れなかった…」

 昔からずっと続いていた談合を、この被告人1人が「やめよう」と言っても何も変わらなかったかもしれないけど、従順すぎ。

 次は、検察官から、

 検察官 「2人に了解とって、割り振りを決めてたんですよね。どれくらい時間かかるんですか?」
 松田被告人 「3カ月ほどです。1日に2、3時間くらい時間を割いていました」
 検察官 「税金の無駄遣いという意識は?」
 松田被告人 「無我夢中でやっていたので」
 検察官 「あと、平成17年11月に談合の話がマスコミ報道されて、配分表を廃棄したことは知ってました?」
 松田被告人 「知りませんでした」
 検察官 「あなたは配分表を作成する立場にあったのに、そんな重要なこと知らないんですか?」
 松田被告人 「私は7階の隅っこにいましたので、なかなか情報が入ってこなかったので…」

 と、証拠隠滅のもみ消しの関与は否定していました。にしても、7階の隅にいたから情報が入ってこなかったって言われてもなぁ。防衛施設庁には電話もないんだろうか。

 とにかく、3人とも“罪は認めるが組織の人間として長年続いてきた談合をやめる決断はできなかった”という主張でした。3人とも、「なんで俺たちだけ?」って思いはあるんだろうな。前任の人たちが何のお咎(とが)めもないのは、納得いかないところではあるけど、この人たちが悪いことには変わりないからねぇ。

 求刑は、生澤、河野被告人が懲役2年、松田被告人が懲役1年6月。判決は7月31日に下されます。

 ここ20年防衛費の一部は、国を護るためじゃなく、幹部職員の老後を守るために使われてたんだな。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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