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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
ニセ有栖川裁判、締めは森本レオ風で
先週の裁判関連のニュースを2つ。
1つ目は“裁判員 書類審査で辞退が可能に”
早ければ2年3カ月後、裁判員候補者名簿に名前が載った人に通知が届く、裁判員制度。遅くとも、2年10カ月後に始まるんだけど、未だにこの制度を知らない人がいるみたいなので、選出までの流れを簡単に。
毎年、有権者の中からランダムに選び、裁判員候補者名簿を作成。→その中から裁判員制度の対象となる事件の裁判員候補者(50~100人)を選ぶ→選ばれた人に、通知と質問票が送られる→裁判所で面接→選出。
という流れです。で“書類審査で辞退可能”ですよ。質問票の内容次第で裁判員やらなくていい、と。もちろん、それなりの理由が必要なんだけど、この時点で辞退する人多そうだなぁ。最高裁も随分アバウトなルールにしちゃったな。
もう1つは“容疑者取り調べで録音録画実施予定”
検察の取り調べの際、2台のカメラで撮影し、書き換え不可能な媒体(CD-Rかな?)で保存するらしい。これが実施されれば、裁判で被告人が「検察から自白を強要された」とか「暴行を受けた」とか言って、取り調べの内容を否認する事はなくなる訳だ。これも裁判の迅速化の一歩ですね。司法は今、静かに大きく動いてるんですよ。
そんな前フリをして、ニセ有栖川の傍聴記。7月7日に行われた。この公判も、9月11日の判決を残すだけかぁ。初公判と証人尋問の数回を見逃してるけど、自分の裁判傍聴の歴史で一番見た裁判だから、感慨深いよ。
今回は、弁論なので弁護人がしゃべるのがメーンです。被告人は、その後にちょっとだけ、最終陳述が認められてるだけ。なので、北野・坂本被告人の声は聞けないのかと思いきや…。
まずは“自称有栖川宮”こと北野康行被告人の弁護人からの弁論。では、気になった部分などを箇条書きで。
○北野被告人は、昭和60年頃から“有栖川宮”の名刺を持っていたが、記載してある住所は有栖川記念公園の住所、電話番号は管理事務所の電話番号。調べればウソだと分かるということは、人に見せるための物ではなく、自分の理想・空想を書いた物。
○“有栖川識仁”は北野被告人の通称であり、皇族をかたった事にならない。
○披露宴で軍服を着ていたのがかたってない証し。現在の皇族に軍人はいないはずなので。
○北野被告人には、動機もなく利得がない。本当にお金に困っていれば(手間のかかる)御祝儀集めをする訳がない。しかも、犯行の発覚の可能性が高い皇族をかたるなんて、やる訳がない。400万円のために、こんな詐欺をする人間がいるとは思えない。
○披露宴の準備にほとんど参加しておらず、専ら、坂本被告人が計画した。
等々、完全に無罪を主張してました。ま、苦しい部分もあるけど、非常に珍しい面白い弁論だよなぁ。
次は、坂本晴美被告人の弁護人から。頭っから変わってました。
弁護人 「本件は、奇妙な事件であります。名付けて“結婚披露宴御祝儀詐欺事件”とでもいいましょうか…」
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| 恋は落ちるもの…の坂本被告 | |
2時間ドラマじゃないんだから、タイトルつけなくてもいいと思うんだけど。
弁護人 「そして、被害届けの件です。そもそも、被害届けという物は、被害者が自ら警察に出すものです。しかし、本件はどうでしょう。警察が披露宴出席者に被害届けを送り、返送された物を被害届けとしております。私はかつて、このような被害届けを見た事がありません。これは警察が集めたアンケートと言ってもいいでしょう。」
これは前々から不思議だったんだよなぁ。デッチ上げとまでは言わないけど、警察が無理矢理被害者を立ててる感じなんだよね。だから起訴状が2回変更してるんだけど、その度に被害者の数が減ってるんです…。
そして、弁護人は傍聴席の方を見て
弁護人 「話は変わりますが、皆さんの隣にいる人が皇室関係者であるか否か分かりますでしょうか。代々さかのぼって、血筋・血統を見れば、相当の人がそうかもしれません。世の中、分からない事が多いのです。」
そう言い終えると、今度は坂本被告人の方を見て
弁護人 「坂本被告人は以前、この法廷で“恋は落ちるもの。愛は育てるもの”(バックナンバー第41回参照)と発言しました。その瞬間、傍聴席からは失笑が漏れました。しかし、これを笑った人は、不幸なのであります。胸に手をあて、考えてみて下さい。…この言葉の重さが分かるでしょうか?」
森本レオのような優しい優し~い声で語ってました。そして、締め。
弁護人 「弁護人としては、この事件は一体何だったんだろうか、と思う訳です。動機も故意も被害もない。坂本被告人は、北野被告人を愛した。北野被告人は、皇族を騙ってると逮捕・起訴された…。非法律的ですが、恋に落ちること、人を信じることの意味を考えさせられる事件であると思います。」
う~ん、多分、全面無罪主張でいいんですよね? 恋や信じる事について語られてもなぁ…。
そして、被告人の最終陳述。被告人が喋れる、最後の機会です。
北野被告人は、大学ノート4ページに渡る有栖川宮・伏見宮などの宮家の歴史を語ってました。ゆっくりしゃべるので10分くらい語ってたかな。最後には、検察の取り調べがあまりにもヒドイものだった、と涙ながらに訴えてました。感情を表に出さない北野被告人が泣いたのは、多分、これが最初で最後ですね。
次は、坂本被告人。今までの公判で、しゃべりすぎて何度も裁判長から怒られてた被告人です。一体どれだけ語るんだろか、と思いきや
坂本被告人 「私が、この公判で言いたい事は、弁護人がすべて述べてくれました!」
ラストは、手短な一言で終わりです。…と、思ったら、その後15分くらいしゃべるのよ。それも事件のことではなく、裁判そのものについて。
坂本被告人 「裁判官、検察官、弁護人。皆さんお忙しいとは思いますが、次回の期日を決めるのに、都合がつかず2カ月後になった事がありました。その2カ月間、被告人は何もないのに拘束される訳です。日本の裁判は短くなるといわれてますが、早く実現してほしいと思います。あと、検察の取り調べですが、本当に酷いものでした。暴力以外の仕打ちはすべて受けたと思います。人として自尊心を傷付けられました。今後、取調べ室はビデオ撮影してほしいです。」
これに関しては、俺も同感。被告人になってから分かることもあるだろうから、心の底からの想いなんだろうね。ただ、ここで言わなくても。
冒頭に書いたように、裁判は坂本被告人が望む形に変わっていくんでしょう。
【有栖川宮をかたった詐欺事件の概要】 「有栖川識仁」(ありすがわ・さとひと)を自称した無職北野康行(41)と無職坂本晴美(45)は、大正時代に断絶した皇族「有栖川宮」を名乗って03年4月に都内で結婚披露宴を開き、祝儀約1300万円などをだまし取ったとして、同年10月21日、警視庁公安部に、詐欺容疑で逮捕された。 披露宴は03年4月6日、都内で開かれた。約2000人に招待状が送付され、俳優の石田純一さん、タレントのエスパー伊東さんら約400人が出席した。(バックナンバー第1回参照)(バックナンバー第19回参照)(バックナンバー第41回参照)
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。
