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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
消防車男「刑務所には行きたくないです」
最初に触れておかなきゃいけないのが、9月4日に行われたホリエモンこと堀江貴文被告人の初公判。61枚の傍聴券を求めて、2002人が行列を作ったわけ。久しぶりの大行列だったなぁ。松本智津夫被告人の判決公判以来じゃないかね。こんなに並んだのは。大阪高裁だと、林真須美被告人の判決公判で1230人並んだのはあったけど(ちなみに大阪まで行って、オレはハズレ…)、東京で1000人越えはなかったはず。ショーケンこと萩原健一の初公判でも280人、宮内他ライブドア幹部の初公判で687人。監禁王子こと石島泰剛被告人の初公判で235人。と、ここ2年で話題になった裁判ですら、この程度。
ある意味、歴史的な裁判なんですよ。それが、裁判の連載をやらせてもらっている「月刊創」「TokyoEXIT」「力の意思」「爆写EX」「探偵ファイル」そして「nikkansports.com」のどこからも連絡なく、誰も並んでくれないのよ。唯一並んでくれたのが、TBSラジオのスタッフ1人だけ。第2日本テレビにいたっては、オレがはずれる絵を撮影しに来てるんだから。なんという人望のなさ。でも、なんとか傍聴券当てる運の良さ。
で、面白かったのが、午前中の裁判を見終えて、第2日本テレビのカメラに向かってしゃべってるのを、勝手に横からテレビ朝日が撮影を始めて、勝手に報道ステーションで“傍聴したヒト”ってテロップ付きで使ってるのよ。あはは。こっちはバラエティーの収録だよ。まあ「傍聴したヒト」であるのは間違いないけどさ。
報道されまくった裁判の話はさておき、今回は9月8日に行われた増田峻也被告人の裁判の話。罪名は業務妨害。事件の内容を逮捕当時の報道から紹介しましょう。
警視庁西新井署は、無職の増田峻也(20)はウソの119番をして東京消防庁の業務を妨害したとして、警視庁西新井署に逮捕された。調べでは4月22日と26日に1回ずつ。携帯電話で「火事です。家が燃えています」などとウソの119番をした疑い。増田は「小さい頃から消防車を見るのが好きだった」と話し、公衆電話で約60回、携帯電話で6回程度の119番通報したと認めている。
“消防車見たさに119番 マニア男逮捕”なんて感じで報道された事件ですね。とにかく、いろんなマニアがいるもんだ。そこまでして、消防車が見たいのか? と思うね。
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| ※ストレス解消に消防車を呼ばれては大迷惑(写真は本文とは関係ありません) | |
初公判は7月21日。検察官の冒頭陳述によると、去年の12月に、仕事をしていないこと、交際している女性と遊んで深夜に帰宅したことなどで父親に怒られた被告人は、子供の頃に消防車が走っているのを見ると気分がよくなったことを思い出し、携帯電話で119番通報。駆けつける消防車を見て、気晴らししていた。携帯電話は通報後破壊して捨てている。取調べで、被告人は「子供の頃から消防士に憧れていた。目の前でカッコイイ消防車、消防士を見ればイライラする気持ちが消えると、バカなことを考えた」と供述しているという。
そして、9月8日の公判では、去年12月~今年5月までに16回、ウソの119番通報をしたとして、追起訴。被告人は取調べで、「70~80回は通報した」と答えているらしい。
裁判は、父親が情状証人として出廷。「近所の塗装業の人に話を通しているので、そこで働かせたい」「(被告人が)夜、飲みに行く時は、私もついていきます」と、今後の監督を約束していました。過保護すぎる気もするが…。
そして、注目の被告人質問です。これが必要以上に謝りっぱなし。
弁護人 「ウソっぱちの119番通報するのは、どういう迷惑がかかるんですか?」
被告人 「近所の人に迷惑がかかります。すみませんでした」
弁護人 「それだけじゃなく、消防署にも迷惑かけてますよね。他の場所でホントに火事が起きてたら大変なとこになってましたよ。どういうことになるか分かって電話してたんですか?」
被告人 「消防署の皆さんには多大な迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ありません」
弁護人 「いやいや、そんなことを聞いてるんじゃなくて、分かって電話してました?」
被告人 「分かってました」
弁護人 「え? 分かって電話してたんですか?」
被告人 「あ、後であらためて大変なことをしたなと思いました」
被告人が緊張しているのか、うまく質問がかみ合わない感じです。
弁護人 「電話をかけた当時の気持ちを答えてくださいよ。消防車がサイレン鳴らして走ってくるのを見て、ストレスは解消されました?」
被告人 「なかったと思います」
弁護人 「じゃ、なんでよ?」
被告人 「イライラしたり、不満があったので」
弁護人 「それで電話してスカッとしたの?」
被告人 「してないです」
弁護人 「じゃ、なんで電話したの?」
被告人 「消防署には迷惑をかけてしまい、すみませんでした」
弁護人 「だから、そういうことを聞いてるんじゃなくて…」
と、またもや唐突の謝罪です。
弁護人 「この先、イライラすること必ずありますよ。どう解消します?」
被告人 「ちゃんと仕事をして、マジメにやっていきたいと思います」
うーーむ。仕事なんてストレスがたまる一方なんだけどね。打開策になってない気が。働いてなかったから、その辺は分かってないのかもしれないなぁ。
弁護人 「どんな仕事を?」
被告人 「姉の働くパチンコ屋さんに勤め、ちゃんとした仕事をしたいと思います」
父親が塗装の仕事を用意しているはずでは…? と言うか、消防士になればいいと思うんだけどね。人一倍働く気がするけど。そして、裁判官からの質問。
裁判官 「何が一番悪いと思っていますか?」
被告人 「自分のイライラした気持ちを解消するために、やってしまったことです」
裁判官 「(苦笑いしながら)それだけなの? 消防士さんに多大な迷惑をかけてるよ。ましてや、好きだったんでしょう? 何でいたずら電話に結びつくんだよ」
被告人 「パッと思いついたのが、消防車だったんです」
裁判官 「で、どう責任取ろうと思ってるの?」
被告人 「もう、やらないようにしたいです」
裁判官 「刑務所に行って償うとかあるじゃない?」
被告人 「行きたくないです」
裁判官 「行きたくないかぁ(笑)。でも、業務妨害は実刑もありえる罪なんだよ、イヤなの?」
被告人 「はい!」
裁判官 「イヤなのは分かるけどさぁ(笑)」
正直者の被告人の発言に、裁判官も笑っちゃってました。
裁判官 「また、いたずら電話しないかね?」
被告人 「真面目に仕事して、寄り道せずにまっすぐ帰ります」
裁判官 「本当? 遊びたくないの?」
被告人 「いいえ!(遊びたくない、の意か?)」
裁判官 「あと、彼女とはどうなったの?」
被告人 「彼女は作らないで、真面目に働きたいです!」
一生、彼女作らない宣言です。さすがに、言いすぎでしょ。しかも、当時の彼女とのことを質問してるのに、これから彼女を作らないって、話がかみ合ってない上に、21歳になったばかりで残りの長い長い人生で彼女を作らないって、修行僧にでもなる気かね。思わず「えっ?」って感じで、オレと裁判官で顔見合わせちゃったよ。そして、裁判官が即座に、
裁判官 「おい、ちょ、ちょっと待てよ。それは無理だろう。言ってること、分かってるかぁ」
だってさ。
その後、検察官は“被害は甚大”として、懲役2年を求刑。これに対し、弁護人は「ステレオタイプで“すまない”と答えていますが、反省しているのは明らかです」と、執行猶予が妥当であると主張していました。
前科前歴もなく、聞き飽きるほど“すみません”って言って、心底反省している様子だったから、この被告人が同じ犯行をする可能性は低いと、個人的には思うんですよ。
でも、この被告人の再犯を防ぐための話の部分はどうにも不明瞭だよね。ストレス解消で消防車を出動させてたと言ってたけど「ストレス解消にはならなかった」という主旨の証言をしている。で、「この先イライラしたらどうする?」という弁護人の質問に「マジメに働く」としか答えない。彼女も作らず、ただひたすら働くだけの日々だったらストレスはたまるって。イライラが募ったらどうするのか、それを解消する方法が最後まで被告人の口から出ないから、裁判官だって「再犯の恐れがある」という印象はぬぐえないんじゃないかな。しかもこれから働こうという場所が本人と父親で言ってることが違うし。
謝ることが悪いとは思わないけど「これから具体的にどうするの?」といった質問に対して「ごめんなさい」では、逆効果でしょう。謝罪したいという気持ちだけは伝わってくるけど、そればかり前に出てカラ回りしているように感じてならないなあ。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。
