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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
5人殺害凶悪犯が最後に語った真実とは・・・
前々回の冒頭で触れた懸賞エッセーの優秀作品が東京高等検察庁のHPで発表されたよ。時間のある方はじっくりどうぞ。
あと、全く報じられていないので勝手に告知。10月25日から法務省が「裁判員の辞退事由に関する意見」を募集中です。
裁判員法第16条で定められている辞退事由以外の意見を大募集らしい。2年半後にスタートするのに、辞退事由がはっきり決まっていないってことですね。トホホホ。大丈夫なのか、裁判員制度。どうしても裁判員になりたくないって人は、自分にあてはまる条件をメールしてみてはどうでしょう。採用されるかも。
今回は、10月25日に行われた西本正二郎被告人の控訴審第2回公判の話。罪名は、強盗殺人等々。事件を簡単にまとめます。
2004年9月13日に住居侵入・窃盗未遂の罪で逮捕された西本正二郎は、取調べで逮捕前の9月8日に1人暮らしの女性、パート従業員(74)が殺害された事件を認め、再逮捕された。さらに、同年4月と8月に起きた1人暮らしの高齢者が殺害された事件も認めた。その後、同年1月に起きたタクシー運転手の殺害についても自供した。
1審で長野地裁は「利欲的かつ身勝手極まりない動機に酌量の余地は全くない」と死刑の判決を言い渡したが、西本被告人は即日控訴した。
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| 1審で死刑を言い渡された西本正二郎被告人(共同通信) | |
そして、10月11日の控訴審初公判。被告人質問で突然「まだ殺人事件を犯している」と告白。急きょ、公判は中断された。 それで、今回の第2回公判というわけです(ちなみに傍聴券の倍率8倍でした)。丸刈りにグレーのTシャツ、フレームなしの眼鏡をかけた被告人が落ち着いた様子で入廷すると、早速開廷です。
裁判官 「被告人は証言台へ。前回の続きで弁護人から質問を行いますけど、今回は長くなりそうなので座ってください」
被告人 「(小声で)いえ、このままで」
着席を拒み、立ったまま質問されることに。
弁護人 「あなたは起訴されている事件のほかに『もう1件殺人を犯している』と答えてね、そこで前回は質問を中止しましたけどね。えー、あなたにとっては有利になることはないわけですが、それでも話しておきたいということですか」
被告人 「はい!」
弁護人 「では、話してください」
被告人 「自分が今回の事件で逮捕されたとき、取調べで4件の強盗殺人に関しては、正直に話しました。もう1件の殺人に関しては、述べたくなかったという理由があり、述べませんでした。それは1審のとき、弁護人との信頼関係が築けなかったので。今回はもう1つの殺人事件を述べるために控訴しました」
弁護人 「なぜ、話そうと?」
被告人 「遺族のため、真実を話さないと償いにならないと思ったので」
弁護人 「それで控訴したと」
被告人 「母親は“控訴を取り下げてほしい”と手紙に書いてきました。新たな事件を述べたりすれば、母親を悲しませるという思いもあったんですが、正直に話さなければ償いにならないと思ったので…」
弁護人 「それで、その事件はいつごろのことですか?」
こうして、新たな殺人事件は、法廷で明らかになりました。
被告人の証言によると以下の内容です。03年4月から5月、被告人は当時交際していた女性から現金を奪い、レンタカーで長野県から福島県へと向かう。わき見運転をしていた被告人は、女性をひいてケガを負わせてしまう。大したケガではなかったらしい。だが“多数の窃盗をしていた、レンタカーの返却期間が過ぎていた、この女性が被害届を出せばすべてばれてしまう”そう考えた被告人は車内のロープで女性を背後から絞殺する。
弁護人 「死体は?」
被告人 「車で運んで山の中に捨てました」
弁護人 「どのあたりとか覚えてます?」
被告人 「いいえ。自分の中でも初めての殺人だったので」
弁護人 「それは報道された?」
被告人 「事件後、ニュースとか新聞見てましたけど、報道されてないと思います」
あといくつか質問をしたけど、弁護人はこの殺人事件については触れませんでした。
弁護人 「他に言ってない事件があるの?」
被告人 「この事件の前から、友達や彼女からお金を盗んでました」
弁護人 「経済的に困ってた?」
被告人 「両親が離婚し、嫌いな父親の元で暮らし始め、高校にも行かず働いて。他の友達は高校へ行き、家族と一緒に生活してるのに文句言ったりしてて。どこか幸せそうなところを見ると、その幸せを壊したい、困らせてやろうという気持ちが出てきて」
弁護人 「幼少のころの境遇が関係していると?」
被告人 「そうです…」
弁護人 「父親に暴力を受けていた、と」
被告人 「はい。小学校でもいじめられていました。先生も厳しくて。安心して暮らせる環境がなく、家庭でも暴力を受け、何でこんな目に遭うんだって思ってました」
弁護人 「あなたが私に宛てた手紙の中で“本件はつきつめると愛情につきあたる”と」
被告人 「今は誰も連絡はなく、それは当然の結果なんですけど、母親だけは手紙をくれたりして。正直言って、自分がなぜこんな事件を起こしたのかなと。相手のことを思いやることが築けず、人を殺しても何も思わなかったのかな、と」
弁護人 「で、現在の気持ちは?」
被告人 「当時の自分は、相手が命乞いをしても、悲鳴をあげても聞いてませんでした。殺人に関しても、何のためらいもなく、目の前のお金が入れば満足でした。振り返ると、何でここまで残酷になれたのか分かりません。自分で考えたことなんで申し訳ないと思います。もし、同じように母親が亡くなったらと思うと。この場を借りて、真実を話すことができて、それがせめてもの償いで。もう生きてる価値は全くないと思います。死刑が妥当であると思っているので、その刑に関しては全く、異議はありません。生きて償うより、死んで償いたいです。亡くなった方々のため、心を入れかえ、反省し、刑を受けたいと思います。本当にすみませんでした!」
俺は刑法のことはほとんど知らないけど、極刑は免れないのは確実でしょう。被告人もそれは覚悟しているわけで。
10月28日、長野・福島両県警は、西本被告人が2003年5月にレンタカーで福島県内を走行していたことが捜査でわかったと発表した。今回の公判で供述した殺人事件は、事実であるという可能性が高まったというわけだ。
もし、事実であれば、判決・刑の執行が長引くことが想像できる。被告人はそれをもくろんで真実を小出しにしたんだろうか? もしかしたら、そこまで悪巧みがあるのかもしれない。あるいはもう1件の隠された事件を自ら明らかにすることで、改しゅんの情をアピールしたいのか。そういった法廷戦術なのかな、とも思えなくもない。
ただ“相手のことを思いやることが築けなかった男”が、真実を話すために控訴し“もう生きている価値は全くない”というのであれば、この被告人の生存意義である今回の供述と、謝罪の言葉くらいは信じてあげたい。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。
