- 社会メニュー
-
阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
エスパー清田、超能力より驚かされるぶっ飛び弁論
先週は珍しい裁判があったんですよ。それは12月6日に行われた植草一秀被告人の初公判。世間的には注目度の高い事件なんで、もちろん傍聴券の抽選があったわけです。で、今回の裁判に限らず、傍聴希望者のほとんどがマスコミのバイトなんです。だから、どこかの雑誌やスポーツ新聞が余分に傍聴券を当ててしまう場合があるわけですよ。そうなると、傍聴席に空席ができてしまうと。
でも、この裁判は満席。1席たりとも空席がないんですよ。こんなことってあるのね。初めて見たよ。ただ、傍聴券の倍率が、村上ファンドの村上世彰被告人より高かったのは、どうかと思ったけどね。
さて、今回は12月5日に行われたもうひとつの珍しい裁判の話。清田益章被告人(44)の初公判で、罪名は大麻取締法違反。「エスパー清田」の名前で超能力者を自称し、テレビにもよく登場しスプーン曲げなどを披露していたのでご存知の方も多いでしょう。
その“超能力者”は今年9月25日に長野県内で、知人から大麻約13グラムを譲り受けたとして逮捕されたもので、取り調べに対して「大麻を吸うと、気分が高揚し、感覚が研ぎ澄まされる。闘争心やイライラがなくなる」と供述。2年前から吸引していたことを認めている。
また、被告人に大麻を渡したとされるイギリス国籍のマーク・ドライデン容疑者(41)らも長野県内の山地で大麻を栽培したとして、逮捕された。
清田被告人は、スプーンを超能力ではなく、腕力で強引に曲げているところをテレビで逐一放映されてしまったことがある珍しい経験を持つが、全くこりていないのか、最近もちょくちょく露出してた気がするけど。現在は、会社役員であるそうな。
検察官の冒頭陳述によると、被告人は会社の部下と2人でロケハンのため長野県を訪れる。その後、大麻を栽培しているマーク・ドライデンのところへ行き、大麻の剪定(せんてい)作業を手伝う。そして、被告人はマーク・ドライデンに向かって、「土産をちょうだい。ちょっとでいいから」と言って、大麻13グラムもらい、東京の自宅で吸引した、と。
![]() | |
| 「エスパー清田」らから押収した乾燥大麻など(共同通信) | |
ロケハンって、撮影かイベントの予定でもあったんだろうか? それは裁判で明らかにはされなかったんだけどね。ロケハンがメーンだったのか、マーク・ドライデンに会うのがメーンだったのか気になるところ。
で、すごいのがこの後の弁護人の立証。ほとんどの大麻の裁判って、被告人の反省文と被告人質問くらいしか、弁護人は立証しないんですよ。他人を傷つけたり、お金を盗んだりって事件じゃないから、違法の薬物に手を出した自分の愚かさを反省するわけだからね。それが、
弁護人 「書証(証拠として提出する書類)が19点。あと、被告人質問をお願いします」
裁判官 「じゃ、19点」
なんで、そんなに書証が多いんだ? 一体、何か書いてあるんだ?
弁護人 「私は被害者のいない犯罪は無罪であるという考えを持っておりまして」
と、耳を疑う一言で始まった弁護人の立証は、ホントに珍しい内容なんです。
19点の書証ってのが、大麻を容認するような内容ばかり。某メディアのニューヨーク支局長が書いた「たかが大麻で目くじら立てて…」という新聞記事や、イギリス、オランダなどヨーロッパでの大麻の現状(個人使用は認められている)の資料、ヨーロッパのサッカー大会でフーリガンの暴動が問題になり、スタジアムでの飲酒を禁止して、大麻をOKにしたら暴動が起きなかった事例などなど。
要するに「大麻は認められている国も多いですよ」と。「日本は遅れてますよ」って主張なんでしょう。何を言おうが自由だろうけど、罪を認めている被告人を前に、こういう主張でいいのかなぁ。
そして、本人が書いた反省文の朗読。
弁護人 「社会人として、法を犯し、大麻を使用したことをお詫び申し上げます。私は、本来、精神世界に興味があり、大麻が持つ精神性や環境植物としての興味があり、ヒンズー教などの瞑想(めいそう)で、現在も使用していると知りました。他人に迷惑をかけないという身勝手な思いから、瞑想のときに用いていました。ただ、毎回使用していたわけではありません。これから、自分は高野山で修行をし、空海和尚の故郷で麻の発祥の地である四国の聖地などを歩き、今後に活かしていきたいと思います。と、こちらが反省文になります」
罪を認めて反省しているのはわかるんだけど、最後の方とかよく分からないのは俺だけか? そして、弁護人からの被告人質問。
弁護人 「あなたが役員を務める会社は、どんな会社なんですか」
被告人 「えー、人が人のために作り上げた消費社会を考え直し、循環型の社会にしていくための活動をしています。会社ですので、利益を得るわけですが、金銭的なことは二の次でありまして」
裁判官 「あの、端的に答えてくださいね」
弁護人 「ま、手短に答えていただくということで、今後の予定は?」
被告人 「まず、循環型にするためには心の豊かさとか感性を高めるための活動が必要になってきますので、自然の中で学べる場所の提供…」
裁判官 「具体的には」
被告人 「メディテーション! 瞑想ですけども、心のケアを考え、太陽エネルギーの活用…」
裁判官 「だから、具体的には」
理解しがたく話が長い被告人に、裁判官がイライラしてる様子です。
被告人 「レクチャーですね。それとそのソフト作りをし…」
裁判官 「弁護人は、社会復帰した後に、何をするのかと聞いてるわけですから」
被告人 「アジアの芸能界をつないで、お祭りをすると言うか…」
弁護人 「ま、詳しく言わなくてもいいと思いますが」
全く言ってることがわからない。瞑想から太陽エネルギーやらいろんな話が出てきたのに、まとめ的には、お祭りって。
この後は、弁護人、検察官からの質問ともに、「もう2度とやりません」と反省の弁を述べていました。
そして、裁判官からの質問。
裁判官 「(同罪で逮捕された)部下やマークとの付き合いはどうするんですか?」
被告人 「潜在的にはいろんな付き合いがありますが、距離をおきます」
裁判官 「今後、あなたを監督してくれる人はいるんですか?」
被告人 「○○先生(何者かわかりません)に監督していただこうかな、と」
裁判官 「あなたの日ごろの生活を、その人が監督してくれないでしょ?」
被告人 「結局は、自分自身がしていかなければならないな、と。部下に監督してもらおうかな、と考えております」
裁判官 「彼も(大麻)吸ってるでしょ」
被告人 「はい」
裁判官 「そういう人が監督するっていうのはねぇ」
被告人 「もちろん、そうですね。なので、その専門家の先生にお願いしようかな、と」
裁判官 「了承してもらったの?」
被告人 「お願いしようかな、と」
なんとも頼りない話だ。そして、
裁判官 「あなたは芸能界にいるの? いたって認識なの?」
被告人 「いるとは思ってないですが、たまに呼ばれますけど」
裁判官 「東京に帰京して、他の人と(大麻を)吸ったことは?」
被告人 「マンションには、いろんな人が出入りしてましたけど、大麻を吸う仲間だけじゃないので」
裁判官 「ってことは、大麻を吸う仲間も来たってことでしょ」
被告人 「しょっちゅう来るわけじゃないですけど」
ちくちくとつついてくる裁判官とちょっとずつボロが出てくる被告人。これじゃ、他の人と大麻吸ってたのを認めてるようなもんでしょ。
裁判官 「もう2度としないと誓えます?」
被告人 「はい!」
裁判官 「あぁ、そう。なぜ言えるの?」
被告人 「2カ月間、自由を拘束されて教訓になりましたので」
と、大麻に手を出さないことを法廷で誓って、被告人質問終了。
検察官は、大麻に対し、誤った認識をしており、再犯の可能性は高いとして、懲役1年を求刑。
これに対し、弁護人の弁論がまたすごいのよ。15分に渡って、しゃべってたんだけど、検察官が大麻の有害性を説明しないのは証拠不十分であると。さらに、
弁護人 「大麻取締法は廃止すべきです。その点を裁判官にも考えていただきたいところであります。というわけで、被告人には無罪に近い判断をしていただきたいと願うしだいであります」
なんじゃ、この弁論。まるで、大麻取締法が悪法といわんかばかりですよ。
でも、被告人は最終陳述で、
被告人 「この国の法を犯してしまったことを深く反省しています」
と、法に反する行為を反省しているんだよなぁ。弁護人と被告人の意見がかみ合っていないような気もするけど。
この裁判は即決でした。被告人に薬物の依存性がみられること、犯行対応が悪質であること、そして初犯であることを理由に、懲役1年執行猶予3年の言い渡し。
最後に裁判官は、
裁判官 「社会のために役立つことをしてください」
と、意味深なひとことを付け加えて閉廷でした。
弁護人があれだけの主張をしても、有罪判決だったってことは、スプーンは曲げられても法律は曲げられなかったということなんだな。
でも、弁護人の言い分はなんかすっきりしなかったなぁ。大麻の裁判で、ヨーロッパの現状を主張する弁護人は何度も見たことあるけど、それって筋違いな気がするんだよね。日本では禁止されてんだからさ。国が違えば、ルールも変わるのは当然の話。
被告人が以前移住していたバリ(インドネシア)だったら、大麻使用は最高で禁固20年なんだからさ。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。
