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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

それでも、やっぱり知事が好き

 まず先々週分の訂正。1月17日のトークライブのゲストですけど、“坂本俊夫”としてしまったのを“坂本敏夫”と訂正です(本文はすでに訂正してあります)。元刑務官の方ですね。今までで一番豪華なゲストだよなぁ。興味あればぜひ。

 ついに1月20日、「それでもボクはやってない」が公開ですよ。この映画が上映されたら何かが変わるね。そんな何かを動かしそうなパワーのある映画。先日ニューヨークで行われた試写会では笑いが起きてたらしいんだけど、日本の刑事裁判をリアルに描いた映画なんだから、日本人としては笑ってられないんだよな。それだけ日本の刑事裁判が変だってことでしょう。笑ってる場合じゃないコメディーってのも新しいけど“法廷モノ”ではなく“裁判モノ”という今までにない新ジャンルの映画でもあるのも注目すべきところですね。冤罪の映画と思いきや、裁判の映画ですから。平日、仕事で裁判傍聴できないって人はこの映画を見ることで疑似体験が可能です。以上、頼まれてもいない宣伝でした。

 さて今回は、まだ年明けで公判数が少ない中から、辻政雄被告人の裁判の話。罪名は競売入札妨害。事件は、いわゆる福島談合事件ってやつですね。個人的にはだんご3兄弟ならぬ談合2兄弟って呼んでるんだけど。

佐藤
辞職会見時の佐藤栄佐久知事

 辻被告人は福島県の知事だった佐藤栄佐久被告人の弟・祐二被告人とともに、福島県発注の工事の談合で仕切り役をしてた、と。ニュースでは、入札前に業者を指名する“天の声”を伝え、謝礼を受け取る役割なんて報道されてたわけです。元々は、知事の弟である祐二被告人が業者の陳情を受けてたんだけど、96年頃からは辻被告人が“天の声”を伝えて、業者から謝礼金を預かって、祐二被告人に届くようになってたらしい。

 となると、気になるのは辻被告人は、こんなことをやって、どれだけの甘い汁を吸ってたのかってことですよ。それが…。

 弁護側からの質問は、平成16年の業者を東急建設に決めた際の事実関係がメインでした。そして、前知事との関係についての質問です。

 弁護人 「あなたが佐藤栄佐久さん、祐二さんと知り合ったのは?」
 被告人 「20代の頃、青年会議所にいたときに知り合いまして、佐藤栄佐久氏の参議院選の立候補、知事選と支援してきました」
 弁護人 「政治資金なんですけど、自分のお金を出したこともあったんですか」
 被告人 「はい」
 弁護人 「平成16年ね、いくらくらい?」
 被告人 「4000万円です」
 弁護人 「どうやって調達したんですか」
 被告人 「母が老後のために貯めてた蓄えです」
 弁護人 「それは寄付した?」
 被告人 「母の老後の蓄えですから、さすがに“これは返してほしい”と祐二さんに伝えて、貸しました」
 弁護人 「そのお金は栄佐久さんから直接要請があったんですか?」
 被告人 「要請はないです」

 知事に言われたわけでもないのに、母の貯蓄を差し出してるんですよ。ちなみに、4000万円は返ってきてないらしい。

 弁護人 「東急建設に決まった後の平成16年6月25日に(東急建設東北支部元副支店長の)門脇さんから5500万円受け取りましたね。8月31日には、300万円受け取ってますね。その謝礼金はどうしました?」
 被告人 「800万円はそのまま祐二さんに渡しました」
 弁護人 「あなたのメリットは?」
 被告人 「何もありません」
 弁護人 「メリットないのに、祐二さんに謝礼金渡してたのはなぜですか?」
 被告人 「私は、佐藤栄佐久氏の政治活動に共鳴し、協力していましたから・・・」
 弁護人 「恩恵は?」
 被告人 「1度もありません」

 身銭を切って資産を渡し、無償で談合の片棒を担ぐとは、なんという純粋な支援者なんだ? 他に何か見返りがあったんじゃないかと邪推してしまうのだが…。
 次は検察官からの質問。

 検察官 「あなたは“天の声”を業者に伝える」
 被告人 「はい」
 検察官 「それで経済的メリットはなかった?」
 被告人 「ありません」
 検察官 「キックバックとかの収入は?」
 被告人 「キックバックとかありません」
 検察官 「(選挙の時)身銭を切ってたみたいですけど、企業からお金が渡れば、あなたが出す金額は減るんですか?」
 被告人 「実際、謝礼金がいくらなのかは分かりませんし、その金額によって私の出すお金が少なくなるかは…」

 検察官としては、被告人が犯罪を行った理由を何としても見つけたいようです。

 検察官 「あなたは(前知事の)側近の立場と周囲に思われてたんですよね?」
 被告人 「はい」
 検察官 「それは、名誉では?」
 被告人 「特にそうではありませんでした」

 検察官は金銭の線が消えると名誉の線で、原因をつきとめようとしてる訳です。

 検察官 「じゃあ何でやったんですか? 全く私欲がなくてやったというのは考えにくいでしょ」
 被告人 「そう言われると、(名誉のためという動機が)あったのかもしれないです」

 なかば強引に原因を究明し、質問は終了。最後は裁判官からの質問。

 裁判官 「端的に答えてくださいよ。談合に関与するようになったのは、選挙資金を捻出するために始めたのですか?」
 被告人 「最初はそうじゃないです」
 裁判官 「最初は…ん~、お金が問題だからじゃないんですか?」
 被告人 「…お金が問題だからです」
 裁判官 「先程の質問で個人の金銭的なメリットはないと言ってましたよね。…ただ単に、栄佐久さんが好きだった、と?」
 被告人 「そうです」

 ホントの動機は、知事が好きだからってことのようです。間接的には、選挙資金を集めるためという、金目当ての犯行ではあるんだろうけど、知事を続けてもらいたい一心だったんじゃないのかな。その願いがかなうのが唯一のメリット。

 弁護人からの質問で「被告人は、地方自治体の自立・地元の活性化などに感銘を受けてました」って言ってたから、悪いことを続けても最終的に知事の言うことが実現すれば、オールOKと考えてたんでしょう。

 佐藤前知事のスローガンは詳しく知らないんだけど、辻被告人のように感銘を受ける人がいるほど、素晴らしいものだったんでしょう。でも、談合でどれだけの税金がムダになったか分からないよなぁ。こんなこと続けて福島県の財政がパンクしたら、地元の活性化どころの話じゃないんだからさ。当時、辻被告人は「ちょっと違うなぁ」とか感じなかったのかね? それでも、やっぱり知事が好きって言ってたかな。「好き」の一念が道徳心とか順法精神を失わせるとしたら、何と不純な「好き」なんでしょうか。

 ちなみに、求刑は懲役1年6カ月。判決は、2月22日です。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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