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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

織姫部 白い王子・小林華澄

 河出文庫から発売されてる「裁判狂時代 喜劇の法廷★傍聴記」の増刷が決定しました。どうしても初版が欲しいという奇特な方は、お早目に。

 さて、今回は2月16日に行われた石島泰剛被告人の裁判の話。俗に“監禁王子”なんて呼ばれてる人ですね。この事件に関しては、過去に2回(第61回=「監禁王子はハンカチ王子気取り」参照) (第21回=「“監禁王子”は法廷でファッションショー?」参照) 取り上げてるんだけど、今回はついに本人がしゃべる、被告人質問。事件の真相が明らかになるのかと思いきや…。

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再逮捕時の石島被告(共同通信)

 以前傍聴した時は、クリーム色のブレザー姿だった被告人。今回は、青みがかった緑色のブレザーで入廷です。毎回思うんだけど、何かのコスプレっぽいんだよなぁ。そして、

 弁護人 「では、お聞きします」
 被告人 「よろしくお願いします」

と、礼儀正しい一言から質問が開始です。

 弁護人 「今回は取り調べについての質問ですので、事件に関しては詳しく、別の期日に聞きます」

 と、今回は事件には一切触れない被告人質問のようです。と言うのも、警察官が提出してる取り調べ調書61通中15通を被告人が認めてないので、取り調べの状況をハッキリさせるというのが、今回の目的なのです。

 弁護人 「警察の取り調べは、何時から何時まででした?」
 被告人 「(午前)9時から12時。そして(午後)1時から5時。あと、6時から9時。原則として9時までなので」
 弁護人 「9時すぎることはありました?」
 被告人 「もちろんあります」
 弁護人 「どんな時に9時すぎるんですか?」
 被告人 「そうですねー…アットランダム」

 と、なぜか横文字で返答。この後も、横文字連発です。

 弁護人 「取り調べ室には何人いました?」
 被告人 「基本的には1人ですけど、何人か集まる時もありましたよ」
 弁護人 「そういう時は、担当の取り調べ官だけがしゃべってくるんですか?」
 被告人 「ポジショニングはいろいろあるんですけど、集まってる時はマシンガンですよね」
 弁護人 「…取り調べ室では、手錠をはずしてもらいました?」
 被告人 「つけたままの時もありましたよ。多分、警察のスタンバイの都合だと思います」

 カタカナを多用する事で、自分を格好良くみせようとしてるんじゃないかな? それより、手錠したまま警察官が取り調べをすることなんてあるのかなぁ。違法の気もするが。

 弁護人 「5月20日の調書に『強いしつけをした』と書いてあるんですけど、あなたは本当に言ったんですか?」
 被告人 「言ってません」
 弁護人 「じゃあ、なぜ調書にこんなこと書いてあるんでしょう?」
 被告人 「自分が言う通りに(調書を)書いてくれれば間違いない、と。少なくとも人違いという事件ではないですから。でも、取り調べ官が“これは、あくまで相手が望んで合意の上だから罪にはならない。誰が見てもしつけだから、強かろうが弱かろうが罪にはならない”と言われましたので」
 弁護人 「罪にはならないと言われたから、認めた、と。“しつけ”という言葉もあなたから言い出した訳じゃないんですね?」
 被告人 「(取り調べ室に)7~8人いたんで、誰が言い出したのかは…。例えば、A・B・C・Dといた場合、Aさんの意見にBさんが賛同した時、多少文言は変わりますよね、それで…」

 と、よく分からない例え話を始めると

 裁判長 「あの、細かいことはいいです」

 と、一刀両断。まだ、例え話のCとDが出てくる前なのに。

 弁護人 「(他の調書を出して)これに『強い暴行をした』とあなたが言ってることになっていますけど?」
 被告人 「それも理由は同じです。SMの関係で言うと、性行為に関してハタから見れば普通じゃないように思われるかもしれませんけど、10歳の時からSMの世界に放り込まれてるので、相手が望んでないのにする事はないです。サディスト側がマゾヒスト側の嫌がることをするのはあるまじきことだと。私の哲学に反することなので、ありえません」
 弁護人 「…ん、ありえないというのは分かったんだけど、調書に(認める意味の)サインと捺印してるのは?」
 被告人 「“そこまで望んでたんじゃないか?”と言われたので」

 と、話し出したら止まらない被告人に、弁護人も戸惑っている様子です。

 弁護人 「取り調べ中に、暴言をはかれた事とかはありました?」
 被告人 「それはキリがないですね。まがりなりにも警察のイメージが崩壊しかねないので積極的に言うのもどうかと…。ま、インパクトあったのは調書投げつけたってのが。それで、調書をよけたら(後ろにいた警察官が)“王子よけんなよ。オレに当たるから”とか言って」

 警察官も“王子”って呼んでたみたいです。そして、

 弁護人 「何度も投げつけられました?」
 被告人 「ん~、直接攻撃は1回だけですね」

 直接攻撃って何よ? 間接もあるのかと思ってたら

 被告人 「あと、調書を上にバァーッて投げて、何か、格闘ゲームの対空戦迎撃みたいな感じで。下の方にも(投げつけるジェスチャーをしながら)バァーッって。もう、後でネタにできるくらい激しくやってたので」

 と、当時のことを思い出したのか興奮気味で身ぶり手ぶりで間接攻撃を証言してました。被告人以外、法廷にいる人が呆気にとられてた感じ。

 これで弁護人からの質問は終了。検察官からいくつかの質問があった後、裁判長がまとめ的な質問をするのです。

 裁判長 「あなたの言いたいことは、警察が作文をしたということですよね。でも、サインをしたのはなぜですか?」
 被告人 「大体、こんなことが書いてあるのかなーと思ってましたから」

 ずい分アバウトにサインをしてるんだなぁ。被告人としては、罪にならないと言われてたし、調書はほとんどチェックしないでサインした、という主張です。

 そしてこの後、被告人の取り調べを担当した、警視庁捜査1課のエリート警察官が証人として出廷したんです。

 検察官 「あなたは“これは強いしつけで罪にならない”と言って、認めさせましたか?」
 証人 「もし、それをやったら子供だましですよね。私も“そんな道理は通らねぇだろう”と言ったんですが、彼は“しつけ・おしおき・SMプレイ”という言い分でした。ただ、何日も彼と一緒にいますから信頼関係が芽生える訳です。“何もやってないよね?”と彼が手を握ってくることもありましたし。常識は通じない人でしたから…。もしかすると、言葉のやり方の中で彼が勘違いした可能性はあるかもしれないです」

 と、被告人の言い分を否定です。

 検察官 「長い取り調べの中で、印象に残ったことって何ですか?」
 証人 「う~ん…半分は人生相談ですかぁ」

 と、この証言を聞いた被告人も「プッ」と思わず吹き出してました。証人は続けて

 証人 「留置所の中でも女性と文通を続けてたんですけど、その手紙を見せられて“どうしたらいい?”とかですね。結婚したいとか相談されて“やめとけ。それは自由だけど、今はそんなことしてる場合か”って言ってあげたり…。特殊な感じでした」

 被告人と証人の言うことが両方ホントなら、時には調書を投げつけ、時には結婚の悩みに答えて、と。変な関係だなぁ。

 検察官 「あと、調書は被告人に読み聞かせてから、サインしてもらってますか?」
 証人 「彼に調書を渡し、彼が赤ペンで直すんですね。一字一句見るような性格ですから、思い通りにいかないとサインしない人です」
 検察官 「被告人は、赤ペンで直してたんですか!?」
 証人 「ええ。“ここが違う”とか言ってね。で、最後に『織姫部 白い王子・小林華澄』って書いて渡すんです」
 検察官 「え? な、な、何ですか、それは?」
 証人 「上の方に『捜査一課○○○』と、私の名前が書いてますから、それに対抗してじゃないですかね?」

 ふざけあってるようにしか聞こえないんだけど、2人共真剣にやってたんだろうなぁ。

 さすがに弁護人は、このことについて質問です。

 弁護人 「被告人は、大体書いてあることが分かるからサインしたと証言してますが」
 証人 「え? そんなこと言ったんですか? 全然違いますね。彼が『白い王子・小林華澄』って書き直したもの、私持ってますから」
 弁護人 「そうですか。あと、取り調べで手錠をつけたまま行ったことがあるそうですね」
 証人 「はずさないことはあり得ない! 彼を2人で取り調べ室に連れてきて、椅子に座る前に必ずはずしますから。大体、自分から手を差し出して、手錠をはずすとフッフッってやってましたから」
 裁判長 「ん? フッフッって何ですか?」
 証人 「だから…」

 と、証人は自分の左手首と右手首を交互に息を吹きかけてました。坂上二郎の“とびます、とびます”みたいなアクションをしながら、

 証人 「前の人が使った手錠がイヤだったんじゃないですか?」
 裁判長 「あぁ、それがフッフッ、ですかぁ」

 と、納得すると、ツボにはまったのか下を向いて笑いをこらえてました。そのフッフッが面白かったのか、被告人がいかにもやりそうだなぁ、と思ったのか。

 ホント、“なんじゃこの裁判”って感じですね。被告人のキャラクターは置いておいて、取り調べをビデオ撮影しておけば、こんなことやらなくてもいいと思うんだけど。だって、こんなことで一期日使わなきゃいけないのかねぇ。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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