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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
傍聴人をいら立たせる監禁王子の釈明
3週間前の話なんだけど、東京地裁にも遂に裁判員制度用の法廷が完成したんですよ。以前から、モデル法廷はあったけど、今回できたのは本物ですから。なんと、床は全面パンチカーペット敷き! その法廷を使って、現状の裁判は行われてるんだけど、裁判官3人裁判員6人が座るところに、裁判官がぽつんと1人だけ座っているさまは、なんだか間抜けな感じだ。2年後には、あの席に一般人が座るんだよなぁ。裁判員制度が近づいてきてることを実感しつつも、不思議な感じもするな。
それにしても、「裁判員制度」のことを知ってる人ってどれくらいいるんだろ。いまだに「陪審員制度」って言ってる人、多いもんなぁ。おぼろげにでも、知識があればまだいい方で、まったく知らない人もいるしね。先日、最高裁が裁判員制度のメールマガジン始めたけど、そんなの興味ある人しか登録しないでしょ。しかも、内容薄いし。なんか、宣伝が足りてない気がするなぁ。
今回、3月5日に行われた石島泰剛被告人の裁判の話。この裁判を取り上げるのは4回目か。(第79回=「織姫部 白い王子・小林華澄」参照) (第61回=「「監禁王子はハンカチ王子気取り」参照) (第21回=「“監禁王子”は法廷でファッションショー?」参照) 1週間のうち、報道された事件の裁判の中から、印象深かった、面白かったもの、考えさせられたものを取り上げてるんだけど、この被告人は他の裁判がかすんでしまうくらいに特異なんだよな。
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| 再逮捕時の石島被告(共同通信) | |
今回は、初公判のときに着ていた上下真っ白のスーツに身を包んで出廷です。今回から、事件に関する被告人質問。どんな主張をするか注目なわけです。
弁護人 「被害者の供述、証言に対して何か言いたいことはありますか? 君の主張と相反するけれども」
被告人 「残念ながら、(被害者は)本当のことを言っていないと。自分の都合のいいことばかりで。立場上、擁護されるじゃないですか。何を言っても受け入れられると思っている。そういう状態で本当のことも言ってるというのは矛盾してると言える」
弁護人 「ん、意味が分からないんだけど」
被告人 「本当のことは言っていないと」
いきなり、自分を弁護してくれるはずの弁護人に「意味が分からない」と言われる被告人。
弁護人 「なるほど。で、平成15年8月8日に青森で(同様の罪で)執行猶予の判決が言い渡されていますよね。そのときに暮らしていたところは実家ですね」
被告人 「そうされています。と言うか、あの一族は呪われていると言われています。いろいろあった中で、私は身を慎んでおりました」
弁護人 「ん、あのーはっきりした言葉で答えてちょうだい」
要領を得ない被告人の返答に、弁護人だけでなく法廷内の全員がイライラしてる感じです。
弁護人 「その実家での生活で気をつけてたことは?」
被告人 「執行猶予で失ったものもありました。自分には自分の信じられるものしかないという思いがあり、2度と同じ過ちは犯さないと誓いました」
弁護人 「要するに警察のお世話にならないように生活してきたということだな」
もう弁護人が、自分で質問して自分で答えてる状態ですよ。そして、当時おとなしく生活してたことをアピールするために、弁護人がエピソードを述べさせようと、
弁護人 「君が通っていた予備校でトラブルにあいましたよね」
被告人 「ええ。その予備校はサテライトシステムでしたから、テレビで有名講師がする、と。それで、私が個室にいたら、男が入ってきて、津軽弁で何か言ってるんです。『おめー、ナントカずやぁー』とか訳のわからないこと言ってきて、頭を殴られまして」
弁護人 「ま、経緯はいろいろあるんだろうけどケンカを売られたんだよね。君は手を出したの?」
被告人 「いや、戦闘反射を抑えました。怒ってる人に戦闘反射を抑えずに向かうと、逆効果でさらに怒り出しますから。そして、顔面が変形するくらい殴られて、病院行ったんです。そしたら、皮肉なカウンセリングから始まりまして、あの、私は後にも先にも顔をいじったことがないので、非常に皮肉な」
弁護人 「ま、君は手を出さなかったと」
またもや、弁護人の自問自答です。被告人は整形したことないという、余計な主張を割り込む役のようにも見えてきます。
弁護人 「そんな生活をしてた君が、女性とこういうことになったということが分からないんだけど」
被告人 「私は身を慎んでいる生活を、実家とされるところでしていました。会いたい人にも会えないという状況で。インターネットで、つい(被害者と)相手してしまった。それは、私の知らない間に飛行機に乗って青森に来てしまった! 青天の霹靂(へきれき)ですね」
と、身振り手振りで返答。被害女性が勝手に青森にやってきたという主張です。
弁護人 「ただ、被害女性は君に『母のお墓参りに一緒に行こう』と誘われたと証言してるんだけど」
質問の意図はあるんだろうけど、質問内容だけを聞いていると、被告人の味方なのか、検察官の味方なのか混乱してきます。こんな質問をされると、被告人は急に泣き出して、
被告人 「母というのは、生きているのもつらい中で、さびしかったろうに、いつでも笑ってくれていて、なんらそういうことも言わずに最後まで笑っていてくれた。(墓参りに誘ったことが)ありえるとか、ホントとか、そういう問題じゃないんですよ!!」
と、大激怒。今まで、スタイリッシュに振舞っていた王子が、はじめて泣き顔を見せたのです。が、感極まってしまったためか、質問に対しての答えは出てません。
弁護人 「ま、誘ったことはないと」
被告人 「…はい」
とにかく、どんな質問に関しても答までたどりつくのが長い。手間のかかる男だ。
この後は、事件についての詳細が語られるんだけど、なんとも言えないなぁ。無罪を主張してる被告人の言い分だから、被害女性に落ち度があるようにも聞こえるし、被告人が自分に都合のいいように言ってるようにも聞こえるし。
被害者は4人だから、この調子で裁判進めていったら、どれだけ時間がかかるのやら。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。
