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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
法廷でSM哲学を熱弁「主導するのはMなんです」
先週、改装のために東京地裁地下にあった商店街がすべて閉店。オレが初めて行ったときから、お店は変わってなかったから、8年以上も営業していたわけだ。サングラスをたくさん置いてあった眼鏡屋も、ティッシュが山積みだった薬局も、撮影禁止なのになぜかあったカメラ屋も、100円ライターを80円で売ってた時計屋も。皆さん、お疲れ様! そして、さようなら!
どの店にも、「改装のため30日で閉店」って貼り紙がしてあったんだけど、本屋さんにだけ、貼り紙がなかったんです。で、店長に質問してみたんですよ。
阿曽山 「貼り紙がないんですけど、本屋だけは残るんですか?」
店長 「え? 何、また立ち読みにくんの?」
だとさ。そんなイヤミに満ちた答ありかよ。って言うか、よく見てるね、オレが立ち読みしてるとこなんて。本屋さんは改装中にちょっとだけ場所が変わるだけだから、立ち読みしないように気をつけなくちゃ。
今回は、3月26日に行われた小林華澄こと石島泰剛被告人の裁判の話。“今回は”というより“今回も”と言った方が正しい気がするけどね。過去に4回も取り上げてるんで。(第82回=「傍聴人をいら立たせる監禁王子の釈明」参照) (第79回=「織姫部 白い王子・小林華澄」参照) (第61回=「監禁王子はハンカチ王子気取り」参照) (第21回=「“監禁王子”は法廷でファッションショー?」参照)
前回に引き続き事件に関する被告人質問。実際、裁判では4人の被害者はイニシャルで語られているんだけど、ここでは便宜上“A”で。
弁護人 「まず、Aさんについて聞きます。会ったその日に性的な関係がありましたね」
被告人 「えぇ、激しく求められました」
弁護人 「あなたから求めたのでは?」
被告人 「あり得ません」
弁護人 「そうですか。それは普通の性的な…」
被告人 「通常のもあれば、通常でないものもありました」
弁護人 「通常でないものとは?」
被告人 「アブノーマルな、ま、私としてはSM的な要素はあったと考えます」
そして、聞いてもいないのに、監禁王子によるSM論が展開されるのです。
被告人 「そもそもSMというのは、肉体的なものだけではないんですよ。Sは“楽しませたい”Mは“楽しみたい”という心理ですから、なんて言うんですかね…、カテゴライズするのが変な話であってですね。これは、エンターテインメント業界と同じなんで。主導するのは、Mなんです。私たちの業界では“SはサービスのS”とも言われていますから、Mはワガママが多いんです。エンターテインメント業界って言ったのも、そういうことです。ゲームって、ゲームの製作者の意図にハメられていますよね」
弁護人 「? は、はぁ…」
エンターテインメント業界の話がよく分からないんだけど、被害者が求めてきたので、行為に及んだ、と言いたいのではないかと思われます。
弁護人 「SM行為の際、女性を殴ったりするんですか?」
被告人 「していくことになりますねぇ」
弁護人 「具体的には?」
被告人 「え? 具体的にって? 生々しく言えばいいんですか?」
弁護人 「いや、別にそこまでは」
被告人 「Aが求めてきたのでスパンキング(体罰や性的趣向により、主に平手でお尻をたたくこと)してあげた。…これで答えになってますか?」
弁護人 「ええ。実は、あなたが求められていると思っただけ、という可能性はないですか?」
被告人 「それはないんです!“こいつはMだろう”と思い込んでやるバカなやつがいますけど、それじゃサディストとは言えないんですよ! だろう運転じゃダメなんです!」
自分のSM哲学を熱く語ってる途中で、
裁判長 「あのー、別の質問してください」
と、水を差されていました。
弁護人 「では、Aさんはあなたの自宅に来てますよね? そして、一緒に生活したのは恋人として?」
被告人 「Aが“ペットとして、家畜としてでもいいから飼ってください”と言ったんです」
あくまで、被告人の言い分なんだけど、ホントのことなのかどうなのか。とにかく、被告人と被害女性Aは、3カ月間一緒に生活することになり、この生活が“監禁”とされているわけです。
弁護人 「3カ月の間に、2人で外出したことは?」
被告人 「そりゃありますよ。イトーヨーカドーとか、ほかほか弁当とかTSUTAYAとか。一緒に外出しても別行動ってこともありましたね」
弁護人 「じゃ、部屋にいる時の話ですが、お風呂はどれくらい入ります?」
被告人 「多いときは、1日5回とか。1回1時間くらいですね」
弁護人 「その間、彼女はどうしてましたか?」
被告人 「私、今、透視能力持ってませんので」
いつでも被害女性Aは逃げられる状況だったという主張をしてました。この被告人の言い分が真実だとすれば“監禁”って感じではなさそうだなぁ。
弁護人 「3カ月の間に、ケガをさせたことは?」
被告人 「結果的にケガをさせちゃったことは。アザが出来たっていう」
弁護人 「原因は?」
被告人 「認識しておりません」
弁護人 「アザが出来た時に“痛い”とか言ってました?」
被告人 「いやぁ、むしろ喜んでましたよ。私も(以前、他の女性に)ナタで切られたことがあって、その傷を誇りに思ってるんですよ。この業界は、ビンタの位置がいいから、この人がいいという世界ですから。私としては、望んでいる痛さしか、していないんですよ」
弁護人 「望んでいる痛さはわかってるんですか?」
被告人 「それは、あの…。“分かってるんですか?”か…。ま、なんと答えたらいいのか」
今回の裁判が始まってから、要領を得ない返答にずーーっとイラついていた裁判官から、
裁判長 「望んでない痛さを加えたことはあるんですか?」
被告人 「ありません!」
話の長い被告人に対して、手短に答えさせていました。でも、質問の内容が望んでいる痛さを理解してる人って扱いなんだよなぁ。何か変な感じ。
朝6時から16時まで、王子によるSM講座って感じで、SM論を語る裁判でしたね。それが裁判官の「望んでいない痛さを…」という質問するにいたった原因かもね。だって、被告人は“SMに関する知識は誰にも負けませんよ”って雰囲気で自信満々に答えてからなぁ。
でも最終的に女性側が被害を訴えたわけだ。望んでなかったということでしょう。王子の言葉を借りて言うなら、被告人は「サディストとは言えない」んじゃないのかね。これは検察官の質問まで聞かないと事件が見えてこないですね。被告人の言い分を「適当なウソばかり言うな」と一蹴するのか、「被害女性も最初は望んでたけど、やりすぎだろ」と責めるのか。それにしても変な事件で変な裁判だよ。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。