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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

大久保麻梨子を食い物にした無職男

 先週は非常に珍しい光景を目の当たりににしたんですよ。それが7月17日に行われた監禁王子こと石島泰剛被告人の論告・弁論でのこと。

 検察官が論告を読み始めると被告人は“支援者たちからの訴訟資料”と書かれた封筒から小説を取り出して読んでるんですよ。裁判中に読書とは前代未聞。しかも、そんなとんでもない行為を裁判長は注意せず。被告人はいつもメモ取ったり、資料を見たりしてたから気にも留めなかったんだろうけどね。

 ちなみに被告人が読んでた本は。少女向け小説「マリア様がみてる いとしき歳月(後編)」。卒業式間近の少女達の心情がつづられているんだけど、被告人は判決間近という自分の状況を照らし合わせて読んでたか? ま、どうでもいいけどね。

 さて、今回は7月20日に行われた著作権法違反の裁判のお話です。今年5月、無職千葉裕二(当時31)が、人気アイドル大久保麻梨子さん(22)の写真を勝手に複製し、販売したとして逮捕された事件で、千葉は06年11月から12月の間、会員制有料サイトから大久保さんの画像39枚をダウンロードして複製し、ネットオークションで販売していた。逮捕当時は「一昨年から同様の手口で450万円の利益を上げた」と供述していた。

 ありそうでなかなかない事件ですね。事件としては起きているのかもしれないけど、裁判になるのは珍しいですね。

 検察官の冒頭陳述によると、06年11月中旬から07年2月8日までの間、小学館が開設しているサイト・サブラネットEZから大久保麻梨子さんの画像を42点ダウンロードして、写真屋に印刷させてネットオークションで販売した。

 被告人は04年から本件と同じ手口でお金を稼いでいたらしく、05年2月には30万円の罰金刑を受けていた、と。

大久保麻梨子さん
被害にあった大久保麻梨子さん(撮影・徳丸篤史)

 取り調べに対し、被告人は「06年8月頃から犯行を再開して、1680枚を販売した。50万円程度の利益を得た」と供述しているそうな。逮捕当時の新聞記事だと450万円って書いてたけど、そこまで多額ではないようです。

 さらに検察官は被告人の動機について読み上げ、

 検察官 「被告人は大学卒業後、1度も職に就いていません。05年の判決後も定職に就かず、両親から月10万円の仕送りで一人暮らししており、その仕送りでは足りなかったので、生活費を稼ぐために犯行を続けた」

 と、厳しく非難してました。被告人だけでなく、親も甘いような。

 そして、被告人の母親が出廷して、証人尋問です。

 弁護人 「現在は保釈制限住所が実家ですから、息子さんと一緒に住んでいるんですよね」
 証人 「一緒に生活しています」
 弁護人 「息子さんには前回の判決後、何か言いました?」
 証人 「もうやらないようにって注意しました」
 弁護人 「それがまたやるとは」
 証人 「もうやらないようにって注意しました」
 弁護人 「それがまたやるとは?」
 証人 「思いませんでした」

 と肩を落としていました。今後は一人暮らしはさせずに一緒に生活して監督することを約束していました。次は検察官から、

 検察官 「被告人は会社とかに毎日通ったことはないんですか?」
 証人 「ないですねぇ。塾のアルバイトはありましたけど」
 検察官 「なぜ、就職しないんでしょう」
 証人 「性格がアレですからねぇ。人とうまくやっていけないというか」

 仕事をしない性格ってことでしょうか。それで月々10万円仕送りしてたと。この質疑応答を聞いて、裁判官が、

 裁判官 「お母さんの年代で性格を理由に働かなかった人はいないでしょう?」
 証人 「そうですねぇ」
 裁判官 「息子さんが働かない原因は何でしょう?」
 証人 「うーーん。人とうまくやっていけない」
 裁判官 「うまくやってく、やってかないは関係なく、働かないと生活できませんからね」
 証人 「そうですけどね…」
 裁判官 「うまくやっていく必要もないんですし」

 と被告人を働かせない証人にも原因があるんだと言わんばかりの勢いで叱責して質問終了。そして、被告人質問。

 弁護人 「今回で2回目ですが、反省してますか?」
 被告人 「前回以上に反省しています」
 弁護人 「なぜ、まだやったんですか?」
 被告人 「捕まらないかもしれないという思いもあって、やってしまいました」
 弁護人 「それでこういう行為はなぜ、罰せられるんだと思いますか?」
 被告人 「物ではないですが、他人の財産を勝手に使うわけですから」

 この後は謝罪・反省の弁を述べて、事件に関する質問は終了。そして、母親の尋問で追及されていた仕事に関しての質問です。

 弁護人 「アルバイトを除けば、仕事はしてなかったようだけど、人付き合いが苦手なの?」
 被告人 「人の下で働くのが嫌だったので…」
 弁護人 「“人の下で働きたくない”って社会の中で通用すると思ってます?」
 被告人 「思ってないです」

 母親は性格のせいで働かなかったと証言してたけど、これでは単なるワガママのような気が。次は検察官から、

 検察官 「被害者(会社)に対して、なんで謝罪の手紙を書いてない?」

 事件でも仕事でもなく、謝罪の手紙のことから質問開始。しかも、いきなり怒っています。

 被告人 「保釈されたのが1週間前で、ドタバタしてて」
 検察官 「手紙書くのは保釈されてなくてもできるでしょ」
 被告人 「それが、手続きに10日くらいかかると聞いて」
 検察官 「手続きに動いてたんですか?」
 被告人 「(保釈までに)間に合わないと思ったので、やりませんでした」
 検察官 「それなら、保釈されたら真っ先にやればいいでしょ!」
 被告人 「精神的に参ってまして。あと、家に戻ってやることもありましたし」
 検察官 「自分の都合を優先したんですね?」
 被告人 「そう受け取っていただいて構いません」

 ここだけ聞いていると反省しているようには思えないよなぁ。そして、仕事について。

 検察官 「あと、今まで仕事してなかったようだけど」
 被告人 「いや、塾で働いたりしてたんですけど。それは前回の逮捕があってやめました」
 検察官 「なぜ、仕事探さなかったんですか?」
 被告人 「決めようとは思いながら、ずるずるとここまで来たという感じです」

 前回の逮捕までは働いてたようですね。この後も派遣会社に登録して仕事をしていたことなども述べていました。最後は裁判からの質問。

 裁判官 「一人暮らしのきっかけは?」
 被告人 「判決の後(実家で両親と暮らして)、仕事をしなきゃいけない状況に追い込む方がいいと思いまして」
 裁判官 「仕事のあてはあったんですか?」
 被告人 「(実家を)出てから決めようと」
 裁判官 「んー、順番が逆の気がするけどねぇ」

 と裁判官も呆れ顔で至極真っ当な一言です。

 裁判官 「嫌なことでも仕事して稼がなきゃと思わない?」
 被告人 「(判決からの)2年間は思いませんでした」
 裁判官 「それ以前は?」
 被告人 「派遣会社で働いてはいました。でも、長期の仕事ではないので。1カ月とか半年くらいで契約が終るので、また違う職場を探して」
 裁判官 「それはいいんだけど最近はアルバイトもやんなくなっちゃったんでしょ。なぜ?」
 被告人 「やりがいが見出せなかったので」
 裁判官 「やりがいがあろうがなかようが、働かないとねぇ。で、やりがいのある仕事って?」
 被告人 「塾とか予備校の先生です。浪人の時に勉強のおもしろさを知りまして、教える側になりたいなーと」

 どちらかというと、裁判官が進路指導する先生っぽいんだけどね。この後、検察官が懲役1年、罰金30万円を求刑して閉廷。

 この被告人はいわゆるニートってやつでいいんですよね。親のすねかじって、仕事もせずという状況だったんで。それを根本からたたき直してやろうって意図で、裁判官も検察官も仕事のことをメーンに質問してたと思うんです。

 でも、被告人が罪を認めていたためか、誰一人事件のことはきかなかったんだよなぁ。それってどうなのよ。生活費欲しさの犯行なのは分かるけど、就職してれば事件は起きなかったとは言い切れないわけでしょ。しかも、今回は同種犯行2回目。事件そのものの反省が一番大事だったのでは?

 理想を追いかけるのは自由だけど、悪いことに手ぇ出しちゃぁね。先生になるにしても、楽してなるのと苦労してなるのとでは達成感が違うと思うんだけど。


阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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