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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
中国人が韓国で偽ブランド仕入れ日本で売る
一足先に単行本「被告人、前へ。法廷で初めて話せることもある」をもらいましたよ。12日発売です。このコラムを中心に加筆訂正したものです。興味があれば是非。
さて、鳩山邦夫法相の発言が相当面白い。他の大臣の不祥事が大きすぎて話題になってないけどね。だって「将来、国民700人にひとりに弁護士が1人いることになるが、それだけ弁護士が必要な訴訟国家になったら、日本の文明は破滅する」って、法務大臣のコメントとは思えないでしょ。これじゃ、新司法試験の導入は失敗だったと言ってるようなもんだからね。
ただでさえ、弁護士を目指している現場の人たちは混乱しているっていうのに。弁護士の世界もこれから大変なんだろうなぁ。弁護士バッジつけた無職の人なんてのも出てくるかもしれないし。そんな大荒れの未来を暗示するかのように、東京地裁裏にある弁護士会館の前が急に隆起してアスファルトが割れてきたんだよなぁ。あぁ恐ろしい。
今回は9月5日に行われた中国籍の河原クララ被告人(55)による商標法違反の裁判傍聴記。
雑貨店店長の被告人が、高級ブランド「シャネル」の偽ネックレスを販売目的で所持していたために逮捕された事件で、JR蒲田駅の駅ビル2階アクセサリー店「ラファエロ」でシャネルに似た商標がついたネックレス1点を所持、グッチなどの高級ブランドに似た商標をつけたイヤリングなど、427点も押収されたと、逮捕当時は報じられた。
河原は「2年前、韓国人に話を持ちかけられた。生活のためにやった」と逮捕後、容疑を認めたという。
偽ブランドの事件ってのは全くと言っていいほど減らないんだよなぁ。卵が先なのか鶏が先なのかわからないけど、商売が続けられてるってことは需要があるってことなんでしょう。
検察官の冒頭陳述によると、アクセサリー店「ラファエロ」は役員である被告人、夫である店長、そして店員の3人の経営。シャネル他5社の偽ロゴマークが入った商品を402点、販売目的で所持した、とのこと。
必ず報道された内容の方が多いんだよな、この手の事件は。被告人は、夫と結婚し来日。1975年(昭和50)に「ラファエロ」を開店し、遅くとも2004年(平成16)頃から、ルイ・ヴィトンやシャネルのネックレスの類似品を売り始めた、とのこと。
まずは、被告人の長男が証人として出廷。「週に1度、家族の話し合いの機会を作る」「こういうことがないようにしたい」等々、子供の立場で親を監督していくことを誓ってました。そして、被告人質問です。まずは弁護人から。
弁護人 「息子さんが会社休んで法廷に来ていただいてるわけですが」
被告人 「恥ずかしいですね」
弁護人 「えー、なぜ、他人が勝手にロゴマークを利用しちゃいけないのか分かりますか?」
被告人 「向こう(シャネル社等)が努力で築いたものを勝手に利用するわけですから…いけないです」
弁護人 「お店の商品全体の何割かがニセモノだったんですか?」
被告人 「1~3割くらいしかなかったと思います」
弁護人 「“しか”って言っても、それだけあるんだけどね。ちなみに(偽ブランド商品は)いくらで売ってたんですか?」
被告人 「1500~3000円くらいです。高いものでも5000円くらいです」
本物の値段は知らないけど、激安。その破格な金額を聞き出すと、弁護人は、
弁護人 「値段の安さからいって、お客さんはどんな気持ちで買ってたんでしょう」
被告人 「本物じゃないって分かって買ってたと思います」
弁護人 「売る方も買う方もニセモノと分かってた、と」
被告人の罪が軽くなるわけじゃないけど、売る側だけ裁かれるっていうのもなぁ。そして、情状に関して、
弁護人 「お店を30年もやってきて、取引先とか卸売業者とか信用なくなりましたよね」
被告人 「なくなりました」
と、30年の歴史を思い出してか、泣き始めました。
弁護人 「お店が移転するので閉店セールをやっていた、と。その時に逮捕されたわけですが、移転の話は?」
被告人 「もう完全にダメだと思います」
弁護人 「(偽ブランド商品の)儲けより、失った物の方が大きいでしょ?」
移転のための閉店セールがホントの閉店セールになるとはね。
弁護人 「今後、どうやって生活する予定ですか?」
被告人 「仕事するつもりです。今までの経験活かして就職したいです。販売とか、出来れば同じ仕事したいです」
弁護人 「ん? また、同じことやるんじゃない?」
被告人 「いえ、2度とこんなことしませんので」
また、何か販売するのか。これで弁護人からの質問は終了。次は検察官から。
検察官 「偽ブランド商品を売るようになってからの売り上げはどうでした?」
被告人 「あんまり変わりませんね。バーゲン、クリスマスの時期だけは伸びますけど」
検察官 「全く売り上げは伸びてないんですか?」
被告人 「(正規の)雑貨がすこーしだけ伸びたと思います」
検察官 「じゃあ、あえて偽ブランド商品は売らなくてもいいのでは?」
被告人 「いや、置いておくと若い人が見に来るんです。買わない人も多いですけど。客数が増えました」
客寄せの効果はあったようです。と、なれば本物を置いとくだけで効果があるのでは? と思っていたら、検察官が質問しました。
検察官 「本物を仕入れて売ろうとは思わなかったんですか?」
被告人 「はい。本物を見たこともないので考えもありませんでした」
本物を見たことのあるなしは関係ないと思うんだけど。
検察官 「ちなみに、あなたはネックレスとか買ったりしないの?」
被告人 「私は、買いません。妹から(ネックレスを)もらいましたけど」
検察官 「それは本物?」
被告人 「本物ですけど」
あれ? 本物を見たことないはずでは? でも、検察官は聞き流して質問終了。最後に裁判官からの質問です。
裁判官 「偽ブランド商品は、韓国に行って仕入れた、と」
被告人 「はい、そうです」
裁判官 「それは、偽ブランド商品だけを仕入れたんですか?」
被告人 「いいえ。なるべく種類が多い方が、と思って」
裁判官 「韓国で仕入れた何割かがニセモノ?」
被告人 「20~30%くらいかしら」
この答えに対し、裁判官が衝撃の一言。
裁判官 「その程度なら、わざわざ韓国まで行って仕入れなくてもねぇ」
どういう意味? どうせ行くなら偽ブランド商品だけ仕入れるべきなのか? とにかく、たくさん仕入れた中に偽ブランド商品が入ってたとのこと。認識の甘さを謝罪して終了。
中国籍の被告人が韓国で偽ブランド品を仕入れて日本で売る。日本人はいいカモなんですかね。「近隣諸国との信頼関係を」とかいう政治的スローガンが、とても空しく聞こえるような図式になっている。
この後、検察官が懲役1年を求刑して、閉廷。偽ブランド商品のせいで、30年続いた「ラファエロ」というブランドがなくなったわけだ。でも、この店で売られた偽ブランド商品は世間に出回ってたんだよなぁ。なんとも、皮肉な話だ。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。