このページの先頭



ここから共通メニュー

共通メニュー


ホーム > 社会 > 阿曽山大噴火コラム


社会メニュー

阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

姉歯流裁判構造計画に手抜きなし?

 先週の産経新聞で見た記事がちょっと興味深かった。どんな内容かって言うと、刑務所での受刑者1人当たりの費用が、1日あたり1310円らしい。これの本年度の国家予算が約500億円である、と。

 刑務所に入る前には、必ず裁判を受ける訳です。となれば、弁護士の費用も発生する。記事によると、軽犯罪の弁護は1回につき平均7万円(簡裁、地裁、高裁で金額が違う。個人的な記憶では、審理1回でも3回でも同金額だったような…)。支払い能力がない被告人の場合、判決の最後に裁判官は、次のように付け加えます。

 裁判官 「この裁判の費用は、被告人に負担させないこととする」

 要するに、国で支払ってあげますよ、と。この国家予算が本年度で100億円らしい。

 これに警察・検察の捜査にかかる費用を加えると、一体1つの事件でどれだけの税金がかかるんだろう。遠回しではあるけど、他人事の刑事事件なんてないんですよ。

 今回は、9月12日に行われた姉歯秀次被告人の控訴審の話。罪名は、建設士法違反ほう助、議員における承認の宣誓文及び証言等に関する法律違反。

 被告人は一連の耐震偽装事件の構造計算書を改ざんした元一級建築士。説明するまでも世間を騒がせた大事件ですね。

姉歯被告
自宅を出る元建築士の姉歯秀次被告(共同通信)

 今回は、控訴審の被告人質問だったんだけど、安倍首相の辞任と秋田地裁での女児殺害事件初公判のニュースに追いやられ、ほとんど報道されず…。新聞も文字に限りがあるからしょうがないんだけどさ。

 裁判は、被告人と一緒に働いてた人が証人として出廷。木村建設の東京支店長だった篠塚氏が高圧的でイヤな人だった、という証言以外は、情状になってないような話ばかりでした。

 次は、被告人の息子が出廷。父親を経済的に生活面で協力していくという涙ぐましい話もあって、やっと被告人質問です。まずは弁護人から。

 弁護人 「平成17年11月17日、国交省の耐震偽装の発表があった、と。そして、11月24日に聴聞があったんですね」
 被告人 「自宅で質問されました」
 弁護人 「その時、ゼファー月島のことは聞かれました」
 被告人 「いえ、聞かれませんでした」
 弁護人 「そして、12月14日の証人喚問。その時に『初めて偽装したのは、グランドステージ池上』と答えたのはなぜですか?」
 被告人 「当時の記憶に忠実に答えていました」
 弁護人 「ゼファー月島の名前を言わなかったのはなぜ?」
 被告人 「当時は、全く記憶にありませんでした。」

 と、意図的に偽証をした訳じゃない、と主張です。

 弁護人 「(証人喚問で)『木村建設の篠塚氏のプレッシャーが…』と答えてましたが」
 被告人 「それは、ずっとありました」
 弁護人 「具体的には?」
 被告人 「経済設計をしてほしい。コストダウンを、と。それで基準内で(鉄筋などを)減らす」
 弁護人 「グランドステージ池上は?」
 被告人 「基準以下でやってしまった、と」
 弁護人 「それは、具体的に“鉄筋の数減らして”とか言われたんですか?」
 被告人 「そうですね」
 弁護人 「断れなかったんですか?」
 被告人 「(木村建設から)定期的に仕事を頂いていたので、断れない状態…」
 弁護人 「断ったら?」
 被告人 「(依頼先の)事務所が変わってたと思います」
 弁護人 「なるほど。仮定ですけど、他の設計事務所が同じことをやってただろう、と」
 被告人 「そうですね」

 なんか、木村建設に仕事をもらったのが運のツキと言わんばかりなんだけど…。そして、今回控訴した理由が明らかにされます。

 弁護人 「1審では、検察の調書はすべて同意したけれど…」
 被告人 「(偽証に関するものは)不同意にしたかったんですけど…出来なかった」
 弁護人 「それは、1審の時の弁護人に『その方がスムーズにいく』と言われた、と」
 被告人 「そうです」

 構造計算書の改ざん等、すべての罪を認めていた被告人は、偽証だけはしていないことを証明するために控訴したようです。

 被告人 「今から考えれば、(証人喚問で)不正確な証言をしたのは、どう考えてますか?」
 被告人 「あいまいな部分は多少ありましたけど、よく考えて話せば良かったかな、と」
 弁護人 「そうですか。では、最後に何か言いたいことはありますか?」

 と、言われると姉歯被告人は、事前に用意していた紙をポケットから出して、朗読です。

 被告人 「本件で、迷惑をかけたマンション居住者、ならびに関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。偽装問題については、全く弁解の余地はありませんので、どのような罪も甘んじて受けたいと思います。しかし、国土交通省委員会での発言に関しては、誠実にお答えしたつもりであります。他人に責任転嫁しようとしたつもりはありません。記憶に反してウソをついた訳ではありません。それだけは理解して頂きたいと思います」

 これにて、弁護人からの質問は終了。用意していた紙には“責任転嫁しようとしたつもりはありません”って書いてあるのに、質問内容で、木村建設のせいにしたいたような…。

 検察官からは、構造計算書のことや設計に関する事務的な用語が多く、よく分からず…。でも、検察官からの最後の方の質問で

 検察官 「調書を認めたりすれば、刑も軽くなり、裁判も早く終ると思ってたんですか?」
 被告人 「…思ってましたし(1審の)弁護人にも言われてました」
 検察官 「じゃ、今回はなぜ、調書の内容が違うと主張しているんですか?」
 被告人 「反省してるのは変わらないのですが、違うことは違うと言わないと…。自分としても納得いかないので…」
 検察官 「それは偽証してないと言えば、刑が軽くなるからですか?」
 被告人 「刑が軽い云々は関係ないんです。本当のことを分かってもらいたいので。(1審の)弁護人にスムーズに流れるから、と(調書を)認めただけなので」
 検察官 「あなたの言ってることが、よく分からないんですけどねぇ」

 と、被告人の主張を“分からない”と一蹴してました。そして、最後は裁判官から。

 裁判官 「偽証については、第1審でちゃんと話してるのではないですか?」
 被告人 「申し上げました」
 裁判官 「(偽証はしてないと)罪状認否で言ってるんじゃないですか?」
 被告人 「大まかな内容ですけど」
 裁判官 「(罪状認否は)大まかなことしか聞かないんでね」

 と、裁判官が1審の時と主張が変わってないですよ、と指摘しました。

 ってな訳で、去年の9月6日の姉歯被告人初公判の傍聴メモを確認したんだけど、ちゃんと書いてありました。

 裁判官 「起訴状に間違いはありますか?」
 被告人 「(耐震偽装に関しては)間違いございません。違うのは、証人喚問で“ゼファー月島をグランドステージ池上と偽証した”となっている件です。私は平成18年4月26日まで、ホテル暮らしをして、自宅に戻れずにいたので、手元に資料がありませんでした。結果的にウソを言ってしまい申し訳ありませんでした」

 と、言ってるんです。今回の控訴審と全く同じ主張です。被告人は“1審では弁護人に言われるがまま偽証まで認めてしまったけど、偽証だけはしていないことを証明するために控訴した”と言いたいようだけど、1審の段階で「偽証はしてない」と主張している。それを裁判官は指摘しているわけで。被告人の弁明を聞く限り、控訴した理由に整合性が取れてないんですよ。

 それでいて、1審の判決で「一連の耐震偽装事件の責任が木村建設の篠塚明元東京支店長(46)にあるかのようにうそをついた」と認定されたことを否定する弁護人質問を延々としていたわけで。だったら、量刑が不当であるとか、事実認定に誤りがあるといった控訴理由を説明すればいいように思うけど。

 この控訴審で、どれだけの税金が使われてるのかは分からない。被告人としては、納得いかない部分もあるんだろうけど、この裁判で使われるお金を被害者の補償にまわした方が有意義だと思うんだけどねぇ。控訴の理由が「1審とは違う主張をする」なら、あなたの主張は1審とは同じだと思うから、はっきりムダだと思うけどなあ。鉄筋は減らしちゃいけないけど、こういうムダは減らしていいんじゃない?

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



このページの先頭へ