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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

がきデカを描いて逮捕された男

 先週土曜日(9月29日)に法務省で行われた「赤れんが秋まつり」がすごかった。半分くらいは前回と同じようなイベント。展示物ではあったけど、面白かったなぁ。官庁がやるイベント物の中では相当レベルが高い。

 その中でも「検察庁証拠品庫見学ツアー」は圧巻。事件の証拠品を保管してる倉庫を(多分、初)公開してるんだけど、係員の説明の1つ1つが驚くことだらけ。次回参加する人のために、詳細は書かないけど、世の中知らないことはたくさんあるもんだ。

 個人的には「検察広報キャラクター紹介」もよかった。チラシには“勢ぞろいするこの機会をお見逃しなく!”って書いてたんだけど、集まったのは33種類(確か、現在35種類ある)のみ。しかも、着ぐるみがいるわけじゃなくて、地検ごとにパネルになって飾っているだけ。十分に満足だったけど。やっぱり、人の心を一瞬にしてつかむのはイラストですね。

 さて、今回は10月3日に行われた宮崎辰雄被告人(43)の裁判。罪名は脅迫。

 女性への傷害・恐喝事件で起訴された宮崎が拘置された東京拘置所から被害者の女性に脅迫文を送りつけたとして、当時、横浜刑務所に服役中だったところを脅迫の疑いで逮捕されたという事件ですね。

 新聞報道では、宮崎は06年7月、元飲食店従業員の女性(26)に暴力をふるって負傷させたなどして、逮捕・起訴された。07年2月19日、東京拘置所から女性宅に「出所が1日1日、近づいてる」「ずうずうしい上にナメてるよ。では死刑する」などと書いた手紙を送った疑いで逮捕された。

 傷害・恐喝事件のほうで懲役4年6月の実刑判決が言い渡されて刑務所にいるんだから、(新聞で表記されているような)容疑者(正しくは被疑者)というより、受刑者と書くべきのような…。俺は未だに新聞の読み方がよく分からない。

 で、気になるのは「拘置所からそんな手紙が出せるのか?」ということ。これに関しては、東京新聞が詳しく取材しているようなので抜粋。

 東京拘置所では、1日平均1600通の手紙を十数人の係員で検閲しているという。担当者は「調査を始めたばかり。手紙は犯罪を構成する内容ではないか検閲しているが、チェックが漏れた可能性が高い」としている。

 やっぱり、検閲はあるらしい。処理する手紙の数は多いといえ、こんな脅迫文が被害女性の元に届くなんて、拘置所としてはかなりの不祥事ですね。しかし、検閲をかいくぐった脅迫文には、とんでもない物が書かれていることが公判で明らかになるのです。まずは、人定質問。

 裁判官 「では、名前は?」
 被告人 「宮崎辰雄です」
 裁判官 「現住所は?」
 被告人 「えーーっとぉ」
 裁判官 「今日はどちらから来ました?」
 被告人 「品川署からですね」
 裁判官 「手元の資料では現住所が東京拘置所になってますね。(品川署に)とりあえず、移されたのかな」

 現住所が拘置所ってのは、かなりのレアケースですね。横浜刑務所から東京拘置所に移って、とりあえず今は品川署、と。

 裁判官 「職業、仕事の方は?」
 被告人 「紙袋の糊貼ったりとか」

 それは職業というより、刑務所内での作業のような。検察官の冒頭陳述によると、被害女性に脅迫の手紙を送っただけでなく、被害女性の両親にも手紙を送りつけたとのこと。内容は被害女性の秘密をバラす文章。

 取調べでは、被告人は「(被害女性が)公判でウソをついたので頭にきた。謝ってもらおうと思った。そのままでは検閲をパスしないだろうと思い、回りくどい表現を用いて、分かりづらい内容にした」と答えているらしい。

 取調べでは認めてるんだけど、公判では「脅迫の意志はなかった」とのこと。でも、迷惑をかけた認識はあるようで、被害女性に宛てた謝罪文を提出です。そして、被告人質問。まずは弁護人から。

 弁護人 「こういう手紙を書いた動機はなんですか?」
 被告人 「(極々小さな声で)はあがはっては…」
 裁判官 「ん?“腹が立ってた”とおっしゃった?」
 被告人 「はぁ」

 この被告人、声が小さい上に滑舌が悪いので何を言ってるのかよく分かりません。

 弁護人 「どういう点に腹立ってたんですか?」
 被告人 「のうのうとしてふ点…」
 弁護人 「あなたが書いた謝罪文には“とりあえずペンを置きますが、また謝罪します”と書いてありますねぇ」
 被告人 「本来はふぐひた方がいいと思ふんですけど…」

 被害女性からしたら、何度も手紙が送られてくるのは嫌だと思うんだけどねぇ。

 弁護人 「出所後はどうるすつもりですか?」
 被告人 「田舎に帰って、生活ふる…」
 弁護人 「あてはあるんですか?」
 被告人 「ありまふ…」
 弁護人 「あと、以前、暴力団関係者と交友があったようだけど、今は?」
 被告人 「はい」
 弁護人 「え? 続けるの?」
 被告人 「カットふる…」
 弁護人 「カットするとは、断つ、と?」
 被告人 「はい」

 半分くらい弁護人の質問を聞いてないような感じだったけど、これで質問終了。次は検察官から。

 検察官 「前の(傷害・恐喝事件の)裁判のとき、被害女性が来たとき、衝立置いたでしょ。あなたのことが怖いからですよ。それは分かってたでしょ」
 被告人 「ほぉわ…」

 相変わらず人の話を聞いてない風です。すると、検察官はあらためて、

 検察官 「相手は、あなたのことを十分怖がってるって分かったでしょ!」
 被告人 「そうです」
 検察官 「大体、法廷で話したことをどうやって変えさせるわけ?」
 被告人 「謝ってもらって」
 検察官 「この文章、謝ってもらうための内容ですか? これが?」
 被告人 「ふわぁ…心証をよくするため…」
 検察官 「誰に対する?」
 被告人 「周りの人…」
 検察官 「え? この手紙を出せば、あなたの周りの心証がよくなるの? 被害者のこと“貴様”って呼んでるよね? これでホントによくなるの?」

 と、まくしたてる検察官。そんなに長く勢いよくしゃべったら、被告人が聞いてないんじゃないかと思ったら、案の定、

 被告人 「んーーー…」

 やっぱり聞いてないようです。でも、検察官は諦めずに質問します。

 検察官 「こんな内容でも謝らせるために出した手紙だって言いたいの?」
 被告人 「…それだけではありません!」

 と、今までの自分の主張をハッキリと否定したところで、質問終了。
 最後は裁判官からの質問です。

 裁判官 「手紙を出すことによっての期待、というのかな、目的は何ですか?」
 被告人 「こんな風になるとは思わなかった…」
 裁判官 「そういうことを訊いてるんじゃなくて、元々の目的ですよ」
 被告人 「前に戻ろうと思った…」
 裁判官 「ヨリをもどそう、と?」
 被告人 「そうでふ…」

 ここまでのやり取りでは明らかになってないけど、被告人と被害者は付き合いがあったようです。ま、被告人が一方的に交際していると思い込んでいただけかもしれないけど。

 そして、このあとの裁判官の質問で、衝撃的な新事実が明らかになるのです。

 裁判官 「あのー、あなたが書いた“死刑する”のそばに“がきデカ”の絵が描いてあるけど、これは関係あるの?」
 被告人 「関係ないでふ…」

 なんと、がきデカのイラスト付き脅迫文だったのです、そして、さらに、

 裁判官 「“がきデカ”っていうと、随分前に“死刑っ”っていうのが流行ったヤツだけど、なんで描いたんですか?」
 被告人 「書くことなかったから」

 と、不条理な返答で質問終了。
 このあと、検察官が懲役1年6月を求刑して閉廷。

 まさか裁判中に“がきデカ”なんて単語が出てくるとはね。拘置所の職員もがきデカの絵に目がいって、検閲がおろそかになっちゃったんじゃないかなぁ。被告人の作戦勝ちか?

 法廷内で出て来る“がきデカ”には思わず、笑っちゃったけど、被害者は震えるほど気持ち悪かっただろうなぁ。被告人が思っている以上に、被害者の精神的苦痛は大きいはずだ。脅迫の意志がないとしても。

 ってなわけで、罪名は違えど、他人を脅す事件の3週連続の傍聴記でした。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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