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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

チアガール撮影のニセ記者、きっかけはフジテレビ?

 11月1日から国選弁護人の報酬額が変わりましたね。これで、刑事裁判の国選弁護を敬遠していた弁護士も急にやりだすのか。明らかにやる気のない国選弁護人っているからなぁ。被告人質問で、被告人から公判の当日しか接見していない、なんてことを暴露されてる弁護人もいたしね。

 今まで安すぎたのかもしれないけど、報酬額があがるから、頑張る弁護士っていうのも変な話なんだけどね。

 今回は、10月31日に行われた小崎伸一郎被告人の裁判の話。罪名は建造物侵入。

 07年9月、無職、小崎伸一郎(当時42)がフジテレビのカメラマンを装って、都市対抗野球が行われていた東京ドームに無断で侵入し、建造物侵入の現行犯で逮捕された事件ですね。小崎は偽造したフジテレビの腕章を首からさげ、ビデオカメラにはフジテレビのロゴマークをはりつけてカメラマンを装っていた。「チアリーダーを撮りたかった。報道を装えば撮影を怪しまれないと思った」と供述した。

 これは変わった事件です。チアガールは一般席でも撮影できると思うんだけど。新聞によっては“盗撮男”なんて報じていたんだけど、チアガールの応援している姿を撮ってるだけだから、盗撮って感じしないよなぁ。大体、本物のフジテレビの人と会ったら「あんた、誰?」ってことになると思うんだけどね。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人はネット(オークション?)でフジテレビの手帳を購入。きっかけはフジテレビ、ですか。さらに、ネット上のフジテレビのロゴマークをプリントアウトして、腕章、出入証、カメラに貼るためのシールを作成したとのこと。

 今年9月1日、関係者入り口から東京ドーム内に入り、チアガールを撮影。すると「フジテレビの腕章をつけた男が変な撮影をしている」と警備員に通報があり、被告人は逮捕された。

 警察の取調べで被告人は「昨年も都市対抗野球大会に入ったが、メジャーなテレビ局を装えば、自由に移動できると思った。(チアガールを)間近で見られ、撮れると思った。当日はマスコミしか入れない3塁側で撮影した」と供述したらしい。

 昨年も入ったというのが客としてなのか、マスコミを装ったのか気になるところだけど、被告人は前科2犯。過去があるようです。そのほかにも盗撮画像を販売してた過去もあるみたい。

 そして、注目の被告人質問。

 弁護人 「検察官は盗撮目的で侵入したと言っているんだけど、どうなんですか」
 被告人 「盗撮を生業とはしていません。以前、記者として活動していた時期がありまして、そのときのプライドや自己満足で入った次第です」

 どうやら、元記者で当時のことが忘れられないというのが動機のようです。

チアガール
チアガールは都市対抗の華(写真は本文とは関係ありません)

 弁護人 「何を撮るために入ったんですか?」
 被告人 「応援の全般です」
 弁護人 「(押収されたテープに)チアガールの映像があったわけですか、結果的にチアガールを撮ったと」
 被告人 「はい、そうです」
 弁護人 「チアガールをことさら撮影していたというのはねぇ。どうなんですか?」
 被告人 「前刑(詳細は明らかにされず)のこともありますし、重大なことであると認識はしていました」
 弁護人 「チアガールをカメラにおさめてたのは何のためですか?」
 被告人 「贈呈するつもりで撮影してました」
 弁護人 「ん? 分かりづらいんだけど」
 被告人 「あげるつもりだったということです」

 誰かに頼まれたってことなんだろうか。全く分からないんだけど。

 弁護人 「あと、カメラやテープなどの所有権を放棄していますよね。どういう思いで放棄したんですか?」
 被告人 「今後、映像に関することにはたずさわらないという決意です」

 どうやら被告人は20代の頃に8年間、映像関係の会社で(記者として?)働いていたらしいんだけど、2度と同種の仕事はしないと約束しているわけです。

 弁護人 「この事件は実名報道されたわけですが、社会に与える影響について、どう考えています?」
 被告人 「報道記者として活動していた時期もありますし、重大なことをしたな、と」
 弁護人 「…というか、模倣犯がね、真似する人が出てくるかもしれませんよね」

 被告人が報道記者だったなんて過去はニュースで報じられていないからね。同じことやるヤツが出てくることが心配なわけですよ。

 弁護人 「東京ドームに対してどういう思いですか?」
 被告人 「品位を汚したのでは、と申し訳ない気持ちです」
 弁護人 「テレビ局に対しては?」
 被告人 「腕章(の偽造)で、品位を汚したとは思いませんが、迷惑かけたと思います」
 弁護人 「チアガールに対しては?」
 被告人 「女性の立場になって考えますと、傷つけたと思います」
 弁護人 「人前に出るのが怖くなる女性もいると思いますよ」

 うーーむ、よく分からない弁護だ。被告人が撮影したものを見てないからかもしれないけど、チアガールは傷ついているのかね。魅せるために応援しているような気がするんだけど。被告人が軽視した、フジテレビが一番の被害者だと思うんだけどね。と、思ったら、検察官はちゃんと質問してくれました。

 検察官 「わいせつ目的じゃないんでしょう? でも、チアガールに対して謝罪の気持ちがあるのは何でですか?」
 被告人 「自分の技術を過信したようなアップの写真もありましたし」
 検察官 「ということは入る前はわいせつな気持ちはなかったけど、応援を撮影するときにわいせつな気持ちになったんですか?」
 被告人 「試合が2回戦、3回戦と進んでいくうちに男性としてタイプの女性がいたので」
 検察官 「は? いろんな女性、写ってますよね。自分で撮影した内容分かってますよね」
 被告人 「…はい…」

 そして、次の検察官の質問でまたもや衝撃の新事実が明らかになるのです。

 検察官 「この犯行の前日にも(偽の)名刺使って入ってますよね」
 被告人 「それは写真(撮影)のみです」

 なんと起訴されている9月1日の犯行の前日にもマスコミを装って侵入していたようです。多分、バレなかったんでしょう。っていうか、写真のみとか撮影の内容は検察官は訊いてないんだけどね。

 検察官 「昨年もこの大会に来てるでしょ。そのときは記者の格好(腕章やシールを貼ったカメラ)はしてないんでしょ? それが理解できないんだよねぇ…、記者魂?」
 被告人 「記者をしていたときの優越感です。普通は入れないところに入れるとか」

 過去の栄光にすがりつく、といったところでしょうか。

 検察官 「あなた、福岡から東京ドームまで来てるでしょ。往復で交通費、いくら?」
 被告人 「割引で2万8000円です」
 検察官 「無職なんでしょう。この大会じゃなきゃダメなんですか?」
 被告人 「あえて言いますが、応援席は学生で成り立っておりまして、今年は(早大の)斎藤(佑樹投手)君効果で(大学野球の)一般席もなかなか入れない状況でした」

 多分、チケットが取りにくくマスコミ席に入ろうと思ったということなんでしょうか。まさか、ハンカチ王子の余波がこんなところにも及ぶとは。
 そして、最後に、

 検察官 「応援を撮影に来たって言ってるけど、野球は?」

 と、イヤミたっぷりに質問すると、

 被告人 「私は6大学の応援を見に来た経緯がありますので」

 と、あくまで応援にしか興味がないことを、あらためて主張して、質問終了。
 最後に裁判官からの質問。ここでまたもや新事実が発覚するのです。

 裁判官 「過去の犯歴見ると、共同通信の名刺使って(相撲の)九州場所に入ってますね」
 被告人 「当時はサラリーマンでした。でも、カメラの勉強もしてまして」
 裁判官 「何のために入ったんですか?」
 被告人 「報道を偽れば記者席に入れる、と。一般の人が入れない場所に入れる、という思いもありまして」
 野球だけでなく相撲にも手を伸ばしていたんですね。しかし、チアガールはいないわけで。すると
 裁判官 「そのときも女性を撮影していたんですか?」
 被告人 「それはありません。当時は若貴ブーム最高潮のときでしたので、どうしても入りたいという考えがありましたので」
 裁判官 「ふーーん」

 変なの、と言わんばかりにうなって、質問終了。この後、検察官が懲役1年6月を求刑して閉廷。

 わいせつ目的というよりは単なるミーハーな印象だなぁ。チアガールの股間のアップばかり撮ってるのなら分かりやすいが、相撲見るために侵入していた、なんてこともあると周囲は(この男は一体、何がしたいんだ!)みたいなフラストレーションがたまるような…。

 そんなに記者時代が楽しかったのかね。一般の人が入れない、見られないモノが見えるって言っても、報道の人は仕事だからねぇ。優越感を味わうためにやってるわけじゃないだろうし、そもそも優越感を感じるような類のものでもないと思うけど。

 とりあえず、この被告人の場合、一般の人は簡単には入れない刑務所に入って、思いっ切り優越感を味わってもらうみたいなのはどうですかね?

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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