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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

ニセブランド品、仕入先はあの国…ですか

 新聞によると、先週水曜日(11月14日)、高松地裁丸亀支部での公判で、検察官が紙芝居風の資料を使って事件の内容を説明していたらしい。東京地裁だと、プロジェクターでスクリーンにパソコン画面を映写するとか大きなパネルを用意するとか、傍聴人にも分かりやすくする努力は前々から行われているけど、紙芝居って発想はなかったね。高松地検によると、丸亀支部には十分な設備がない上、日当たりがよいため法廷内が明るくスライドの上映が困難であることから紙芝居を導入したと。どんどん日本の刑事裁判が変わっていきますね。この先どんな変化を見せてくれるのでしょうか。ちょっとの期待とかなりの不安があるなぁ。

 今回は、11月15日に行われた森寛被告人(45)の裁判の話。罪名は商標法違反。

 ペット雑貨店「ルゥーリオ」経営・森寛ら2人が、ペットに着せる偽ブランド品を販売していた事件ですね。

 調べでは、森らはシャネル製品に酷似した犬猫用服3枚を販売目的で所持し、逮捕後に「4年間で約250万円の利益を得ていた」「知人から頼まれ、03年から偽ブランド服の販売を始めた。月に30枚ほど売れた」などと供述。

 警視庁は店内からシャネルの偽ブランド品のほか、アディダスやナイキのロゴが入ったペット用衣料450枚を押収した。

 この手の事件や裁判は数多いし、本コラムでも取り上げている(第94回=「猫に小判、犬にシャネル」)(第105回=「中国人が韓国で偽ブランド仕入れ日本で売る」)けど、ナイキの犬猫用衣料品ってのは初耳だなぁ。本物も存在するんでしょうか? 

 それより、実名報道の線引きってのが分からないのだけど、新聞などで“経営・森寛容疑者ら2人”と報じられれば、もう1人は店員かアルバイトかなと思うわけですよ。実名出てる人よりは、立場、責任が軽いだろうと。それが全然違ってたんです。匿名報道だったのでもう1人はA被告人とさせていただきます。

 検察官の冒頭陳述によると、森被告人と会社役員であるA被告人(50)は5年前に知り合ったとのこと。そして、03年6月にA被告人が韓国で偽ブランドの犬用衣料を1000円でお土産に買ってきて、それを森被告人が自分の店で3000円ほどで販売。

 04年7月から偽ブランドの販売を本格的に開始し、3年間で約500万円の売上があったそうな。

 シャネルの偽ブランド品以外にも、クリスチャン・ディオールやルイ・ヴィトン、プーマの偽物も販売しており、すべてA被告人が韓国で購入したものだった。A被告人は今年は韓国に行ってないものの、06年は1回、05年は6回渡航していた。

 A被告人は店員じゃなく、偽ブランドを買ってきて、森被告人に販売を委託していたんですね。どっちが悪いのかは難しいところだけど、あらためて実名報道の線引きがわからなくなります。

 まずは、経営者である森被告人への質問です。

 弁護人 「こんなことして、どう思ってますか?」
 森被告人 「非常に反省しております。シャネルさん、プーマさんなどメーカーさんに迷惑をかけたと思います」
 弁護人 「Aさんに(仕入れを)頼んだことはあるんですか?」
 森被告人 「いいえ」
 弁護人 「あくまで委託で販売していただけだと」
 森被告人 「そうです」
 弁護人 「でも、3年間偽物を売り続けて悪いことと分かっていましたよね」
 森被告人 「はい。私が無知だったんですけども、完ぺきなコピーではなかったので、偽物という意識はありませんでした」

 3年間販売していて警察が来なけりゃ、そんな考え方にもなるんだろうなぁ。

 弁護人 「Aさんがどうやって仕入れているか聞いてました?」
 森被告人 「詳しくは聞いてません」
 弁護人 「そうですか。Aさんとの今後の付き合いについてはどうしようと思ってます?」
 森被告人 「犬の友達として付き合いたいとは思いますが、商売としては、もう」

 元々は愛犬家という共通点があって知り合った2人らしく、犬友としての関係は続けたいとのこと。そして、弁護人からの質問。

 弁護人 「Aさんが1000円程度で買ってきて、売れた物の半分を分配していたんですよね。在庫はAさんが抱えてるんですよね。これは森さんに有利な取引に思えるんですが商売として考えてました?」
 森被告人 「ワンちゃんの友人というのがありましたので…」

 なんとなぁく続けていたってことでしょうか。こうなると、儲けが少ないA被告人の考えの方が気になるんだけど。
 次はA被告人への質問です。

 弁護人 「元々は森さんへのお土産ということで(ニセモノ購入が)始まったんですよね」
 A被告人 「はじめは、お土産で買ってきたんです。それを犬に着せて歩いていると“どこで売ってるの?”と、いろんな人に声を掛けられまして。それでもっと数があればな、と」
 弁護人 「何度も韓国に行っているようですが」
 A被告人 「会社の出張の際に買ってました」
 弁護人 「仕事の合間をみて購入したと。それなら、旅費はかからないとしても、あなたが1000円で購入して、3000円で売ったものの半分があなたの取り分だったんですよね。ほとんど儲けがないのに続けたのはなぜですか?」
 A被告人 「私が飼っている犬のもそうですが、こういう服があったらカッコイイなぁと」

 儲けというよりも、カッコイイ犬猫の服を広めたいという思いの方が強かったようです。

 だって、3年間で得たお金は250万円なんだけど、今までに購入した偽物が1700着らしい。1着1000円なんだから、3年間で80万円の儲けだからねぇ。余程、強い意志がないと続かないですよ。

 弁護人 「韓国の3店で(ニセモノを)買って、それをバッグの中に小分けにしてたんですよね。税関で見つかったら、没収されると思ってました?」
 A被告人 「はい」
 弁護人 「ということは犯罪の意識は?」
 A被告人 「はい、ありました」
 弁護人 「でも。こうして逮捕されて、正式な裁判を受けて、刑事事件になるとは?」
 A被告人 「正直思いませんでした」

 森被告人同様軽く考えていたんでしょう。今度は検察官からの質問。

 検察官 「出張の時に偽ブランド品を買ったと答えてましたけど、結構探さないと売ってないんじゃないですか?」
 A被告人 「いえ、普通の露店で売ってましたので」

 露店で売ってんのか。すごいな、韓国は。でも、その偽物が都内の普通の雑貨屋で売られてたわけだけど。そして、検察官が最後に、

 検察官 「あなたは犬好きということですけど、偽ブランドの服を着てても、カッコイイんですか?」

 と、なかなか面白い質問をすると、

 A被告人 「あ、ん、まぁ、こういう服があればカッコイイなということでやってましたので、なんというか…」

 と、歯切れの悪い返答。これに対し、検察官は、

 検察官 「…ん?…えー、…質問終ります」

 意味が分からないなら詳しく聞けばいいと思うんだけど、被告人質問を終らせていました。
 この後、検察官は両被告人に懲役2年を求刑。さらに押収した偽ブランド品没収。そして、森被告人に250万円の罰金、A被告人に80万円の罰金が相当である、と。

 ほんと、この手の偽ブランド品の事件は絶えないんだけど、A被告人の「“どこで売ってるの?”といろんな人に言われまして」「こういう服があったらカッコイイな」という証言で分かるように、需要があるから供給があるんですね。主に日本がターゲットになってるんだから、韓国や中国から偽ブランド品がたくさん輸入されていることを笑ってられない。バッグなんかと違って、本件は本物が存在しないペット用の偽ブランド品。犬用のシャネルの服なんか、犬も食わないって意識を皆が持たないとね。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。



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