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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

いいぞ検察官!漂白剤男の本性暴き一喝

 今年も振り返ってみると、裁判傍聴の書籍がヒットした年だったんですよね。北尾トロ著の文庫本「裁判長!ここは懲役4年でどうですか」が50万部。長嶺超輝著の新書「裁判官の爆笑お言葉集」20万部。オレの(被告人前へ。=河出書房)はどうなんだろうねぇ。そんな中、長嶺超輝著の単行本「サイコーですか?最高裁!」が先週出版されました。これがマニアックったらこの上なし。タイトル通り、最高裁にまつわることしか書いてない本なんだけど、こういう本が読みたかったんだよね。本来知ってて当然のはずなんだけど、誰も知らない情報満載。次回の国民審査でどの裁判官に×をつけるか迷っている人は必読です。

 さて、今回は12月14日に行われた妹尾祐逸被告人(44)の裁判の話。罪名は器物損壊・住居侵入。女性のバッグに漂白剤をかけて変色させたという、わけの分からない事件です。

 報道によると広告代理店社員・妹尾祐逸は10月5日午後10時頃、ローソン湯島駅前店で立ち読みしていた女性(23)のエルメス製バッグ(3万円相当)に漂白剤をかけ変色させたとして逮捕された。都内で平成17年7月以降、地下鉄駅やコンビニエンスストアで女性の衣類やバッグにすれ違いざまに漂白剤をかけられる被害が34件発生。妹尾は逮捕後に「14年くらいから50回くらいやった」と供述した。

 ニュースでは現行犯逮捕の防犯カメラの映像を流していたけれど、捜査員がコンビニで張ってたんですね。それだけ被害件数が多く、警戒してたってことなんだろうけど。それにしても、なぜ漂白剤なんでしょうか。裁判で明らかになるんだけどね。

 余罪は多数と報じられていたけど、起訴されたのは4件。1つ目は、前述の事件。2つ目は今年4月9日、コンビニで立ち読みしてた女性のコート(3万円相当)に漂白剤をかけたという事件。3つ目は6月6日に薬局で女性客のカーディガンに漂白剤をかけたという事件。ここまでは、同様の犯行です。

 そして、4つ目が9月1日午後9時20分ごろ、下着を見る目的でベランダからマンションの一室に侵入したという事件。

 4番目の事件は、他とは違う内容になっています。捕まらないことで同様の犯行を繰り返すことはよくあるんだけど、違う種類の犯行をするというのは、意外と珍しいんです。一体何があったのか。

 検察官の冒頭陳述によると、被告人は平成9年から女性を困らせるいたずらをすることで、困っている姿を想像し、興奮をおぼえた、と。そして、平成14年からは漂白剤を使って、ストレスの解消をしていたとのこと。

 「平成14年から」と新聞には書いていたけど、約10年前からの常習犯のようです。

 そして、住居侵入についての冒頭陳述。被告人は、以前からマンションの隣室に住む主婦に好意を抱いており、隣人が家族そろって外出したスキを狙って、ベランダから侵入したとのこと。被告人は取調べで「隣の奥さんは30歳くらいで毎朝あいさつをしてくれるなど好意的だった。どんな下着をはいているのか興味があった。犯行当日、下着の匂いをかいで、不覚にもイッてしまった」と供述しているらしい。

 マンションの侵入は被告人の隣の部屋だったようです。犯行がバレたら、近所付き合いも困難になるだろうに。漂白剤の事件も含め、あとさき考えていない犯行だなぁ。

 で、法廷には被告人の妻と父親が情状証人として出廷。2人とも事件をニュースで知った、こんなことをしていたとは知らなかったとショックを隠しきれない様子でした。
 そして、被告人質問です。まずは、弁護人から。

 弁護人 「まずは住居侵入の件ですが、下着を見るために侵入したんですか」
 被告人 「いいえ。つい好奇心で。ベランダが開いてまして…」
 弁護人 「隣の部屋が気になってて、ベランダの窓が開いていたので入ってしまったと」

 なんとも腑(ふ)に落ちない答えなんだけどね。これは後で検察官に追及されることに。

 弁護人 「器物破損の方なんだけど、長所によると、平成9年からやってたと。当時は水をかけてたんですよね」
 被告人 「はい」
 弁護人 「漂白剤をかけ始めたのはいつですか」
 被告人 「はっきりとは覚えていませんが、仕事や私的な悩みが積み重なり、被害者のことも考えずに自分勝手な行動をとってしまいました」
 弁護人 「平成10年に東京に転勤。平成12年に大阪。そして、平成14年にまた東京に転勤になって、(漂白剤をかける犯行を)やってしまったと」

 たび重なる転勤が苦痛だったのか、ストレスのはけ口として犯行にいたったようです。
 そして、本件最大の謎が解き明かされます。

 弁護人 「そもそもどうして漂白剤を使おうと思ったんですか?」
 被告人 「(15年前に)母が亡くなってから、私が洗濯をするようになりました。私はノドが悪いので、イソジン(うがい薬)を持ち歩いていたんですが、(イソジンの容器の中に)“漂白剤を入れたら面白いだろう”と考えるようになってしまって」
 弁護人 「なるほど! ストレスでそういう考えを持ってしまったと」

 母の代わりに洗濯をしながら、漂白剤を他人のモノにかけることを思いついたようです。いや、でも本当にそれだけなのか…。

 弁護人 「被害者に対してどう思っていますか」
 被告人 「自分さえよければいいという、勝手なエゴでこんなことをして。こんなことでしかストレスを発散できない自分を恥ずかしく思います」

 と、反省の弁を述べて質問終了。
 次は検察官からの質問。

 検察官 「さっき、マンションに侵入したのは下着を見るためじゃなくて、好奇心と答えていましたが、何に対する好奇心なんですか?」
 被告人 「隣の部屋。下着を見たいと言う、そればかりではないので」
 検察官 「そればかりではないなら、下着目的でもあったんじゃないですか?」
 被告人 「ベッドの上に洗濯物がたたんでおいてあって、それで下着があったので、見てしまった、ということなんですが」

 歯切れ悪く答えると検察官は大きな声でゆっくりと、

 検察官 「下着を手に取ったのは間違いないんですよね」
 被告人 「はい…」

 と、ねじ伏せていました。そして、漂白剤の事件に関しての質問に移ります。

 検察官 「器物損壊ですけど、10年前にも漂白剤をかけていたんですか」
 被告人 「10年前はしてないと思います。水です」
 検察官 「平成14年に漂白剤をかけたのは仕事の重圧や私的な悩みである、と」
 被告人 「そうです」
 検察官 「女性を困らせるのが快感だったんですか」
 被告人 「端的に快感と言い切るのも難しいんですが、本気で困らせてやりたいとは思ってませんでした」
 検察官 「達成感は得てました?」
 被告人 「…はい」
 検察官 「何を達成した、と?」
 被告人 「…」

 答えられずに黙っている被告人をにらみつけて、

 検察官 「調書には、精液をかけたことも」
 被告人 「若干あるかと思います」
 検察官 「…ある、と。性癖と密接な犯行じゃないですか!」

 と、声を荒らげて質問終了。
 このあと、検察官が懲役2年を求刑して裁判は終わりました。検察官の言う通り、性癖と考えた方が自然でしょうね。被告人は、仕事の重圧、私的な悩みなんかを原因としてあげていたけど、ストレス解消の手段としてこんなことする人はいないでしょ。

 ストレスは犯行のキッカケにすぎないわけで、自分の性癖に向かい合わないと問題の解決にはならない気がするねぇ。そうしないと、また迷惑を“かけて”しまいかねないですから。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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