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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

ギャンブルは負けても得るものがある…と思いたい

 ちょっくら宣伝。今週木曜の12月27日に、阿佐ケ谷ロフトで行われる“年末恒例!月刊創トークライブ「国会・革命・死刑」超豪華出演陣で送る言論の格闘技!”に出演するっす。このイベントに出るのは2年ぶりっす。他の出演者は、綿井健陽、山本直樹、塩見孝也、鈴木邦男、佐藤優、森達也、そして、編集長の篠田博之と、タイトル通り超豪華なことになっています。19時開始で、22時終了予定らしいんだけど、時間通りに終わるのかね。興味のある人はどうぞ。

 さて、今回は12月20日に行われた今井義人被告人(47)の裁判の話。

 マンションの一室で競輪や競艇などのノミ屋をしていた事件ですね。10月28日午後4時半頃、豊島区のマンションで、競艇と競輪のレースについて1口100円でレース予想を受け付けるなどした疑いで、警視庁にモーターボート競走法と自転車競技法違反の現行犯でL of S(エルオブエス)経営の今井ら店側5人と、自営業の男性ら客6人が逮捕されたと報じられました。調べでは今井は「5年前からノミ屋に出入りしていて、儲かりそうだと思った。4カ月前から(ノミ屋を)始め、1カ月あたり9000万円の売り上げがあった」と容疑を認めた。

 飲み屋なら問題ないけど、ノミ屋なら大問題です。ちなみに“ノミ屋”とは、公営ギャンブルなどを利用して勝手に投票所を開設している(違法な)お店のこと。

 で、傍聴前に気になることが1つ。公判開廷予定表を見ると、本件の罪名が「モーターボート競走法違反、競馬法違反、自動車競技法違反」と書いてあるんです。法廷前の貼り紙にも同内容の記載が。報道された以外に競馬のノミ行為もしてたのは推測できるんだけど、自動車競技法って何? 小型自動車競走法ってのも自転車競技法ってのも存在するんだけど、自“動”車競技法はないような。オレが無知なだけかね。単なる誤字だとは思うんだけど、検察官も「自動車競技法」って起訴状の最後に言ってたし。裁判の数も多いし、“動”だろうが“転”だろうが気にしないんでしょうかね。俺はかなり気になるけど。後から間違いに気づいて「動転」するのでは…なんて、ヘタなシャレですみません。

 逮捕された人はたくさんいるけど、被告人は今井被告人と37歳のアルバイトの男性被告人。実名報道されていないのでA被告人とさせていただきます。

 検察官によると、被告人らはマンションの一室で競艇、競輪、競馬のノミ行為を行ったと。1口100円で受け付け、払い戻しの上限を300万円に設定し、ハズれた場合も10%の払い戻しサービスをしていたとのこと。共犯者である中国人男性からノミ屋の話を持ちかけられ、今井被告人は店長に、A被告人は店長代理になり、今年の5月からノミ行為を行っていたらしい。月の売り上げが、5000~6000万円で、その中から人件費やお客へ出す食事代、暴力団へのみかじめ料などが支払われたとのことです。

 新聞では3億円って書いてたけど、利益ではなく売り上げが月6000万円くらいってことのようですね。それでもかなりの利益があるだろうけど。

日本ダービー
中央競馬2007年日本ダービー。ノミ屋は主催のJRAにも大迷惑(写真は本文とは関係ありません)

 この裁判では証人が2人出廷しました。1人は今井被告人の友人で派遣会社の経営者。今後、今井被告人を雇い監督することを誓っていました。

 もう1人はA被告人の母親。これでA被告人の素性が垣間見られたのです。

 弁護人 「被告人、まぁ、息子さんのことですけど、こんなことやってるって知ってました?」
 証人 「息子は今まで仕事をしておりませんので。ずっと家でテレビを見て、ゴハンができれば自分の部屋から出てきてという生活でしたので。今回の逮捕で初めてどんなことをやっているのかわかりました」

 俗にいうニートってやつですかね。37歳で働いたことがない人なんているのね。これには裁判官も気になったようで。

 裁判官 「ずーっと働いてないんですか。お母さんから何か言わないんですか?」
 証人 「何度も言ってます。でも、本人が動かないとどうしようもないので…」
 裁判官 「そういうのは変えられます?」
 証人 「出来るだけ変えたいと思います」
 裁判官 「息子さん、保釈されてからの様子はどんな感じですか」
 証人 「(家族の)みんなとしゃべるようになったし、一緒に食事するようになったし」

 と、会話もするようになり、アルバイトもみつけ、脱ニートの道を歩き出していると情状を述べてました。
 そして、被告人質問です。まずは、今井被告人への質問から。

 弁護人 「ノミ行為を始めたのはなぜですか?」
 今井被告人 「当時仕事がなかったのと、借金があったという2点です。仕事が見つからなかったもので」
 弁護人 「仕事は探してたんですね」
 今井被告人 「年齢のこともあって、なかなか見つかりませんでした」

 そう簡単に仕事はみつからないかもしれないけど、最初から証人の経営する派遣会社で働けばよかったのでは?

 弁護人 「今、どんな気持ちですか」
 今井被告人 「競馬業界、モーターボート業界、競輪業界の方々、そして善良な市民のみなさんに申し訳ないことをしたと思っています」

 等々、反省の弁を述べて、弁護人からは終了。
 検察官からは「規範意識が低いのでは」と詰問され、裁判官からの質問です。

 裁判官 「多額の売り上げがあったようですが、そのお金は人件費や経営の運営費以外には使ってないんですか?」
 今井被告人 「はい!」
 裁判官 「使ってない?」
 今井被告人 「はい!」
 裁判官 「使ってないの?」
 今井被告人 「はい!!」

 しつこく同じ質問を繰り返します。重複ってやつですが、裁判官に異議を唱える人なんかいません。そして、

 裁判官 「みかじめ料払ってたんじゃないんですか?」
 今井被告人 「私が直接払ってたわけでは…」
 裁判官 「だから、結果的にどこに流れるか分かってたんじゃないですか? 分かってます?」
 今井被告人 「暴力団…」
 裁判官 「と、いうことはこの手の犯罪はそういう活動を助けることになるんだよね!」

 と、激怒して質問は終了。次はA被告人への質問です。まずは、弁護人から。

 弁護人 「このお店で働いたキッカケは?」
 A被告人 「他のノミ屋で知り合った友人に誘われまして…」
 弁護人 「それでやってしまったと。あまり仕事をしていないのはなぜですか?」
 A被告人 「だらだらした生活が長引いてしまって。競馬で儲けてお金に余裕があったので、だらだらした生活をしてしまいました」

 競馬で大勝ちしたのが、ニート生活の始まりだったようです。今は、保釈をされて久しぶりにまともな職探しをして、工場でアルバイトをしているとのこと。次は検察官からの質問です。

 検察官 「今、37歳でしたっけ。仕事に就かないのはどうしてですか」
 A被告人 「きっかけは競馬で貯金もできて、だらだらとしてしまって」
 検察官 「いくら稼いだんですか」
 A被告人 「1000万円くらい稼ぎました」
 検察官 「ノミ行為ですか?」
 A被告人 「普通の競馬です」

 これを聞いた検察官がすごい質問をします。

 検察官 「それなら違法の仕事なんかせずに、また競馬で稼ごうとは思わないんですか?」

 ギャンブルで生活することをオススメです。ま、もちろんイヤミで質問しているんだけど。そして答が

 A被告人 「最近、競馬が当たらなくなってきて」

 運に見放されて、ノミ屋勤務と言うのが動機のようです。

 検察官 「今回逮捕されてどんなこと考えました?」
 A被告人 「自分も(以前から)ノミ屋に行ってましたが、それが従業員として働くことになってしまって。今はアルバイトをしていますが、(ノミ屋と比べて)こちらの方が大変でもらえるお金も少ないです。でも、苦労して得た方が自分の中では価値があるんだと思います」

 と、お金の価値観を考え直したと述べて質問終了。
 最後は裁判官からです。

 裁判官 「(手元の調書を見ながら)以前、カジノに勤めていたことがあるの?」
 A被告人 「少しだけ」
 裁判官 「それはお金を賭けたりする違法の?」
 A被告人 「そこまでは分からないです」

 37年間無職かと思っていたら働いていたんですね。でも違法か合法かわからないカジノ店、と。

 裁判官 「楽して稼いだらリスクあると考えませんでしたか?」
 A被告人 「考えました」
 裁判官 「世の中には実際、苦労せずに稼いでいる人もいるわけですよね、合法的に。それでも苦労してお金を稼ぐという考えなんですか?」
 A被告人 「はい!」
 裁判官 「今までの考え方は変わったと?」
 A被告人 「はい、そうです」

 コツコツと仕事することを誓って、質問終了です。
 この後、検察官が今井被告人に懲役1年2月と罰金150万円、A被告人に懲役1年と罰金150万円を求刑して、閉廷。

 仕事がなかった男と仕事をしなかった男による犯行でしたね。今井被告人は証人の派遣会社、A被告人は現在のアルバイトと、探せばちゃんとした仕事があったはずなのにね。もともと、事件前からノミ屋を利用していた2人だから順法精神が鈍っていたのかもしれないですね。そう考えると、ノミ屋っていろんな弊害があるな。

 先週、全く違う裁判で、競艇で使う金を得るために盗みをした被告人ってのがいたんです。裁判官がそんな被告人に対して、

 裁判官 「20年ほど前、あなたと似たような競艇にのめりこんだ被告人がいてね。どうも大穴を当ててから働けなくなったって大泣きするんですよ。あんなもので人生狂わされちゃったらたまったもんじゃないよね」

 と懐かしがってました。この一言をA被告人に送ってあげたかったね。ギャンブルの大勝ちの代償はデカいらしい。今年の皐月賞で馬券を4万3000円買って見事に的中、797万8000円の払い戻しがあった爆笑問題の田中裕二さん、大丈夫かな。見たところ大勝ちした後も働いてはいるようだけど。

 それはともかく、これからは賭け事に負けることで得てるものがあると信じることにしようっと。そうすれば有馬記念でまさかのマツリダゴッホが勝って、馬券で大損してもあきらめもつくってもんでさ。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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