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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
迷惑メール男、言葉の端々に無反省の匂いが
先週は、橋口亮輔監督の6年ぶりの映画「ぐるりのこと。」も試写会に行ってきました。これは楽しみにしていた映画のひとつだったんですよ。なんと言っても、リリー・フランキーが演じる主人公は法廷画家。今まで法廷画家が主役の映画なんてないでしょ。
で、裁判のシーンは話のメーンじゃないので、そんなに多くはないんだけど、法廷が本物そっくり。リアルって意味では、去年公開の「それでもボクはやってない」以上ですよ。東京地裁大法廷のセットの壁紙が本物と酷似してて、傍聴席でスケッチしてる人の中に、本物の法廷画家が混じっているし。一体、どれだけの人が気づくんだろうか。リアルにもほどがある。
今年の夏公開らしいんで、内容は書かないけど、“生”と“性”には拘(こだわ)りがある監督なんだろうなと、あらためて感じました。同性愛を取り扱わずとも一貫してますね。ブレがないなぁ。興味ある人は是非。
さて、今回は2月8日に行われた高玉皓司被告人(60)の裁判の話。罪名は業務妨害。事件の中身は新聞報道によると以下のようなものだった。
自称著述業・高玉皓司は、実家を管理する不動産会社などにウソのメールを大量に送りつけたとして、偽計業務妨害の疑いで逮捕された。逮捕後は「メールを送ったことはない」と容疑を否認した。
実家の改修工事をめぐって、不動産会社とトラブルになり、06年(平18)年1月から07年(平19)11月まで、この不動産会社や他の不動産会社にメールを計1700回送信。インターネットカフェで、匿名で登録できる海外のメールサービスを利用。送信元を特定できないようにしていた。
特に07年10~11月の3日間で、文京区内の不動産会社など計20カ所のメールアドレスに、不動産会社の専務を装い、「近隣不動産会社の情報すべては担当の専務に報告するように」とウソのメールを計24回送信。この不動産会社に対策会議を開かせるなど、業務を妨害した。
一体、何通のメールを送信したんでしょうか。これだけのメールを打つって根気が必要だよなぁ。さすが著述業だけあります。そんなことより、ここまで執拗(しつよう)に迷惑なメールを送り続けた理由とは?
検察官の冒頭陳述によると、被害会社である不動産会社は被告人の実家を管理していた。05年(平17)9月27日、その実家に白アリが出たので白アリ駆除工事を施す。その際、床下の腐食が発覚。不動産会社は倒壊の恐れがあるので、建て直しを要求するが、被告人は「家主がやる必要はない」「工事の必要はない」とこれを拒否した。
不動産会社が「倒壊の危険性がある。建て直さないと床下の写真を公表する」と被告人に伝えると、06年(平18)1月、虚偽の内容のメールが不動産会社に多数届くようになる。同年5月、不動産会社は警察に相談するが、Eメールが止むことはなかった。
取引のある会社にも虚偽内容のメールが届き、業務に支障が出ていた不動産会社は対策会議を開く。そして、弁護人に相談して、07年(平19)年3月、被告人に対して、Eメールを中止する命令を出す(この時点で、被告人がメールを送信していたことは発覚していたもよう)。
中止命令を出したにもかかわらず、被告人がEメールを送り続けたため、07年(平19)11月に刑事告訴して被告人が逮捕されたというのが事件の詳細のようです。
被告人は、身元がばれないようにネットカフェからメールを送ってたんだろうけど、07年(平19)3月以降はどこから送ろうがバレてたみたいですね。とにかく、被害会社と実家の建て替えのことでもめていたのが犯行の動機のようです。
そして、被告人質問。まずは、弁護人から。
弁護人 「現在、逮捕・起訴されてどのような心境ですか?」
被告人 「本件に関しては、私の行為に行きすぎがあったと、反省しております」
弁護人 「これはもう、行き過ぎというか。被害会社に対して何かないんですか?」
被告人 「ホントに申し訳ないと思いますし、被害があるなら弁済も考えなきゃいけないと思っています」
弁護人 「今後、このようなことはしませんね?」
被告人 「はい。それはまったくありません」
逮捕時は「メールは送ったことはない」と供述していた被告人も、現在は素直に罪を認めて反省しているようです。
弁護人 「社会復帰後、どう生きていきますか?」
被告人 「自分のこれまでの生き方がよかったとは思っていません。今後は恵まれない子供のための学習塾を開いて、教えていきたいと思っております」
弁護人 「あなたは過去に2冊の本を出しているんですよね」
被告人 「パソコン関連の本なんですが、現代ではパソコンを使えないと不便ですので、それを加味した学習塾をやっていきたいです」
ネット上の掲示板やEメールを使って業務妨害とか脅迫なんかをした被告人が「パソコンは2度と触りません」とか「家族がいるところでネットを利用します」と証言するケースはよくあるんだけど、Eメールで迷惑をかけた被告人が「現代ではパソコンを使えないと、不便なので子供に教えたい」って。この場で声高らかに約束することじゃないでしょ。
次は検察官からの質問です。
検察官 「2年前からEメールを送っていますけれど、一番の目的は何ですか?」
被告人 「(床下の)写真を公表すると言われたので、それをけん制するためです」
検察官 「写真を公表してほしくないってね、メールに自分の名前書いてあります?」
被告人 「……」
検察官 「悪いことしていると分かってたんですよね」
被告人 「そりゃあ、分かってますよ」
検察官 「反省しているのはどの点ですか?」
被告人 「メールを送ったことですよね」
検察官 「メールのどこが悪いと思ってるんですか?」
被告人 「名前を明かさなかったこと」
検察官 「明かせなかった理由はなんですか?」
被告人 「もし(犯行が)バレて、ねぇ、尾ひれをつけて大げさに書いたメールですから」
言葉の端々から反省してないんじゃないかなと思われる受け答えが続きました。すると、
検察官 「自分の行動を正当化してます?」
被告人 「正当化はしていないんですけど、ただ、何度もお願いしたんですが、同じことを(写真を公表すると)繰り返されるので」
と、口を尖(とが)らせたようにこたえて質問終了。この後、傍聴席に座っていた被害会社の人が証言台のところへやってきて意見陳述です。
業務妨害で被害者の意見陳述とは珍しい!
被害会社の人 「脅迫したという話が出ていましたが、そういう意志はありませんでした。建て替えに関しても、当時は(耐震強度偽装なので)話題にもなっておりまして、親切心からアドバイスしたつもりでした。2年の間、1700通にわたりメールがありました。弊社だけならまだしも、同業者にもメールされたのでは、信頼重視の業界なので、非常に迷惑です」
等々述べていました。
そして検察官は、被害会社は一連のメールの対策会議を開き、業務が滞り、弁護士費用もかかり、実費はかなりの額に及ぶとして、懲役1年6月を求刑しました。
これで閉廷かと思いきや、裁判官が「予断だけど」というようなトーンで、
裁判官 「これは刑事裁判なんだけど、弁済とか(建て替えの件)に関しては、ちゃんと弁護士の先生にお願いしてね。あなたの場合、被害会社と直接交渉すると話がすれ違う恐れがあるんでね」
と、アドバイスして、閉廷でした。
所有者である被告人と管理している不動産会社のどちらかが家屋を建て替えるべきなのか、オレは知らないけど、匿名で嫌がらせのメールを送り続けていても話し合いにすらならないですからね。そんな手段をとった被告人も裁判官は心配しているのでしょう。
個人的には05年(平17)に床下の腐食が発覚したのに、未だにそのままの状態ってのが心配なんだけどね。
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。
パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。