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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」

死刑確定の現場、最高裁の判決公判に行きました

 先週は、韓国で「国民参与裁判制度」がスタートしました。来年、日本で始まる裁判員制度とは違う(というか日本が独特すぎ)陪審員制度なんだけど、一般の人が参加するという意味では同じ。興味津々です。

 で、ニュースによると、陪審員12人を選ぶために230人を呼び出したらしい。実際集まったのは、裁判所の予想を大きく上回る87人だったとのこと。“予想を大きく上回る”にも関わらず、4割程度しか集まってないのよね。

 気になったのは、このあとの記述。“理由なく欠席したとして、90人が罰金の対象”になったらしい。事前に53人は欠席が認められたけど、90人はドタキャンだったってことですね。それなのに“予想を大きく上回る”ですよ。何人が集まると予想していたんだろう。

 日本の裁判員制度の場合は、正当な理由なく面接の呼び出しに出頭しなかった場合は、10万円以下の過料。裁判員に選ばれたあとの時間的拘束、判決を下す重責、守秘義務を破った際の6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金といった規則を考えると、韓国同様、ドタキャンする人は多いだろうなぁ。先に過料を払って、裁判員になりたくないってのも選択肢のひとつではあるんだろうけどね。でも、みんながそんなことしていたら制度が成り立たないし。ま、難しいとこですね。

 さて、今回は2月15日(金)に最高裁判所で行われた林泰男被告人の判決公判の話。個人的には、最高裁の庁舎見学を除くと初の傍聴なので、傍聴記というより最高裁潜入ルポですね。ちょっと特別編。

殺人マシーンと呼ばれた林泰男被告人(共同通信)
殺人マシーンと呼ばれた林泰男被告人(共同通信)

 罪名は、殺人・殺人未遂・殺人幇助・殺人未遂幇助。起訴されているのは、俗に言う松本サリン事件、新宿駅青酸ガス事件、地下鉄サリン事件の3つ。被告人は犯行時、オウム真理教の科学技術省次官で、地下鉄サリン事件では、被告人が他の実行犯より多く、サリン入りの袋を散布した事もあり、マスコミでは“殺人マシーン”と呼ばれた。

 オウム関連の事件は他にもたくさんあるんだけど、林泰男被告人に関しては、この3つです。特に地下鉄サリン事件は、戦後の事件史で最大級にして最悪の無差別殺人とも言われています。

 個人的には事件が起きた95年3月20日は専門学校の卒業式が虎ノ門で行われるため、午前9時過ぎには営団地下鉄(現東京メトロ)に乗車してたんです。ダイヤは大幅に乱れ、ほとんどの人が大遅刻した記憶があります。今から考えると、そんな大事件があったのに、地下鉄が走っていたというのもすごい話だけど。当時はケータイ持ってないし、ワンセグもないし、駅員に聞いても「爆発事件があったらしい」という未確認情報しか入ってこなかったので、家に帰ってからことの重大さを知ったわけです。そういう個人的な経験からも印象深い事件なのです。

 で、08年2月15日の話。12時55分に先着で傍聴券が配布されるとのことなので、東京地裁での傍聴が終わって、すぐに最高裁へ。

 11:50 傍聴券が配られる最高裁の南口に到着。どれくらいの人が並んでいるのか心配していたら1番乗り。
 12:55 配布開始。傍聴券43枚に対して並んだのは23人。全員に傍聴券が手渡されました。ちなみに、オレの番号は「い-1」番。
 12:56 職員の誘導で階段を上がり3階へ。
 12:57 筆記用具以外は法廷に持ち込めないので、所持品をロッカーに入れて、金属探知機のゲートをくぐりました。東京地裁の場合、入り口で持ち物の検査はあるものの、こっちの方が厳重に行っている印象です。
 13:01 ほとんどの人が金属探知機をくぐったのを確認すると、傍聴人を引き連れて、大理石の階段を上がり、ロビーに到着。
 13:02 年に数回しか使わないのがもったいなく思えるほど立派なロビーを後にして、更に階段で上に行きました。(現在何階にいるのかもわからず)
 13:03 じゅうたん式の廊下を歩いて、やっと最高裁の第2小法廷に到着です。
 13:05 法廷内はふかふかのじゅうたんが敷かれていて、傍聴席のクッションも厚く豪華なつくりになっています。一番奥には高さ4メートルほどの扉があり、その手前に裁判官の席が5つ。その前に1段低くなった書記官の席。裁判長の席を中心に弧を描くように、左側に弁護人席が5つ、右側に検察官席が5つ、傍聴席に背を向けるかたちで並んでいます。
 13:06 書記官が2人入廷して、資料などを机に置いたりし始めました。その間、傍聴人はイスに座って待たされるだけ。空調のブワァーという音しか子消えない静かな法廷。ただただまんじりともせず待つだけ…。
 13:14 検察官が1人やってきて、着席です。なんと机の上に六法全書を2つ重ねて置いていました。
 13:15 弁護人が1人入ってきて着席。
 13:18 廷吏が2人、職員が2人、書類を裁判官の席に置いたり、色々準備をしています。ふと、後ろを振り返ると、TVカメラが6台も並んでました。地裁・高裁の場合は代表で1台のカメラが撮影するんだけど、最高裁はNHKからテレビ東京まで(東京地域のチャンネル番号順)すべてのテレビ局が来ているようです。
 13:20 職員が傍聴人の前にやってきて一礼。これからの説明が始まりました。

最高裁全景(共同通信)
最高裁全景(共同通信)
 職員 「傍聴の方になんですが、正面の扉が開き、裁判官が入廷した時、そして退廷する時は起立と礼をするようお願いします。えー、撮影する方にお願いします。正面の扉が開いたら撮影を開始してください。2分後に撮影終了の合図を出しますので、撮影を止めてください」

 とのこと。最高裁独自のルールがあるようです。とにもかくにも、正面の大きな扉が法廷内にいる人の動きのカギを握っているわけです。

 13:26 空調のブワァー以外、何のお供しない静寂の中、廷吏が大きな声で

 廷吏 「まもなく開廷します!」

 と言って退廷。

 13:28 ついに扉が開き案下。その奥から裁判官が4人(席は5つあるのだが…)入廷。傍聴人は起立して、一礼。
 13:30 「撮影を終了してください」という職員の一声でTVカメラ撤収。全員片付けが終わり、法廷を出ていくのを確認すると、

 職員 「カメラマンは全員退廷しました」

 と裁判長に報告。

 13:31 あらためて静かになったところで

 裁判長 「それでは開廷します」

 という一言でやっと始まりました。裁判長は「法治国家に対する挑戦し、組織的計画的に行われた無差別殺人」「教団に対する強制捜査を阻止するため、不特定多数を無差別に殺害するテロ行為を企てた」「被告人がサリンを散布した路線だけで死者8人という惨劇を招いており、死刑はやむを得ない」など、最高裁としての判断を淡々と読み上げて、最後に

 裁判長 「本件、上告を棄却する。…それでは閉廷します」

 と言って終了。

 13:33 大きな扉が開き、4人の裁判官が吸い込まれるように退廷すると、また扉が閉じました。

 公判自体は、たったの3分弱で終わり。法廷で待たされた時間の方が長いなんて…。

 林泰男被告の1審初公判は97年だから、最高裁の判決まで10年かかったわけだ。時間かかりすぎだよなぁ。死刑という原状回復が不能な究極の刑罰を決定するのだから仕方がない部分もあるのかもしれないけど、突然の悲劇に見舞われた被害者やそのご家族、遺族の方々にとっての10年はあまりに長く、重すぎるように感じるよ。10年かけて最後は3分弱だと思うと、なおさらだよね。

阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)

阿曽山大噴火・写真

 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。 月刊誌「創」に裁判傍聴日記の「アホバカ裁判傍聴記」を連載している。主な著書に「裁判大噴火」(河出書房)。

 パチスロはすでにプロの域に達している。また、ファッションにも独自のポリシーを持ち、“男のスカート”にこだわっている。定住する家を持たない自由人。パチスロと裁判傍聴で埋めきれない時間をアルバイトで費やす日々。



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