自民党の新ポスター。安倍晋三首相がガッツ
自民党の新ポスター。安倍晋三首相がガッツ

 政治や政党と有権者を近づける1つが、ポスターだろう。特に国政選挙が迫ると、各党はこぞって選挙ポスターの発表を行う。昨年の衆院選でも、各党が党首を前面に押し出したポスターを作成した。

 今年は大きな選挙の予定はないが、4月に、各党が重視する統一地方選を控える。自民党は先月7日、統一地方選を見据えた、安倍晋三首相(党総裁)の新ポスターを発表した。

 12年秋、自民党総裁に就任以降、首相のポスターは横向き、正面向きなどのパターンがあったが、比較的自然な表情が多かった。今回はこぶしを握り、視線は「斜め上」を見つめている。画像処理がキレイすぎて、劇画タッチにも見える首相の視線の先には、白の文字で「地方こそ、成長の主役。」のキャッチコピー。地方選の前だけに地方のことを考えています、という分かりやすい安い構図だが、そのさらに視線の先には一体、何を見ているのか、気になるところでもあるが。

ポスターをガッツポーズで発表する馳浩広報本部長
ポスターをガッツポーズで発表する馳浩広報本部長

 発表したのは、プロレス出身の馳浩・広報本部長。カメラマンの求めで同じポーズを取ってもらったところ、にぎりこぶし姿が、「主役」を食った感もあり、ちょっと笑えた。それでも、党首の顔が前面に出ないポスターも複数ある中、「党の顔」をここまで前面に出せるのは、「安倍1強」の自信の表れなのだろう。

 「斜め上目線」ポスターの元祖は、小泉純一郎元首相だ。01年の総裁就任後、製作されたが、党本部で1枚50円~100円で販売され、約2カ月で100万枚が売れた。小泉人気が背景にあるが、政治家のポスターに有権者がお金を払って購入、しかも飛ぶように売れるなんて、後にも先にも記憶にない。当時、民主党のポスターにも小泉氏がイラストで登場したことも。野党が「便乗」するほどの人気だったのだ。

 「安倍1強」といわれ、5割を超える高い支持率を持つ安倍首相だが、ポスターがそこまで話題になったことはない。小泉時代と今では、政治の環境も異なるけれど、主役の「素材」だけでポスターが話題になる時代が、いつかまたやって来るのだろうか。