民進党のドタバタ劇が続いている。今月1日に、前原誠司代表が船出したと思ったら、1週間もたたないうちに、若手のホープだった山尾志桜里衆院議員が、ダブル不倫疑惑報道で離党。その後も、当初「5人」とみられた人数よりは少なかったが、若手から中堅の3人が相次いで党を離れる意思を示した。前原氏が意欲を示した「全員野球」には、ほど遠い現実だ。

 山尾氏が、記者の質問を一切受けずに報道陣の前から「逃走」した、今月7日の離党会見を取材していて、ふと頭に浮かんだ言葉がある。山尾氏を、一時は自身の右腕となる幹事長に就けようとしていた前原氏が、1年前に口にしていた「金言」だ。

 1年前-。そう、1年前にも、民進党では代表選が行われていた。この時、前原氏は、下馬評で勝利が確実視された蓮舫前代表と、代表の座を争っていた。

 勝利が確実視された蓮舫氏だったが、当時、説明不足がたたり、二重国籍問題がくすぶっていた。そんな中、投票前のラストスピーチに立った前原氏は、「私は、(二重国籍問題に関する)蓮舫さん(の説明)を信じたい」とした上で、「ぜひ蓮舫さんには、私の失敗の経験を生かしてほしい」と口にして、次のようなことを話した。

 「11年前、私は43歳の時に(旧民主党の)代表になったが、期待をされながら7カ月で辞めた。(原因は)偽メール事件だ」

 「あの時の教訓は、<1>しっかり裏付けを取ること<2>見通しは甘く持たないこと<3>すべての情報を開示すること<4>国民の前で真摯(しんし)なことだ。(当時は)私の未熟さで、(対応が)足りなかった」。

 前原氏が05年、民主党代表に就任後、所属議員が当時の自民党幹部の親族に関するメールをもとに、国会で質問。メール内容の信ぴょう性が疑われる中、前原氏は新たな証拠を出すことをにおわせるなどしたが、最終的にメールが虚偽だったことが判明。前原氏は引責辞任に追い込まれた。

 裏付けを取る、甘い見通しは持たない、すべての情報を開示する-。昨年、前原氏が蓮舫氏に伝えた言葉は、かつて自身が失敗した際に、身に染みて実感した行動の数々だった。だからこそ、二重国籍問題の渦中にあった蓮舫氏へのアドバイスとなった。失敗を乗り越えた「ニュー前原」ならではの、「金言」だったのだ。

 しかし「ダブル不倫疑惑」で、事実上党を追われた山尾氏には、残念ながら、この教訓は伝わっていなかった。逆に、週刊文春の山尾氏に関する報道が出る前に、幹事長起用をドタバタと撤回した前原氏には、自身の1年前の発言がよみがえったのではないだろうか。「山尾幹事長」になる前と、なった後では、スキャンダルが与える影響はまったく違った。ただ、ここまで問題が大きくなったのは、「裏付けを取る」「甘い見通しは持たない」などの教訓が、前原氏やその周辺に生かされていたどうかも、微妙だが…。

 今月28日から、臨時国会が始まることも決まった。党を離れたとはいえ、山尾氏にはぜひ、前原氏が失敗から得た教訓を生かした対応をみせてほしいと思う。