将棋のプロ棋士、佐藤天彦(あまひこ)名人(29)とコンピューターソフト「PONANZA」の2番勝負、第2期電王戦第1局が1日、栃木県日光市「日光東照宮」で行われ、後手の佐藤名人が71手で敗れた。タイトル保持者が、21世紀に入って急速に開発が進んだソフトに公の場で敗れるのは初めて。第2局は5月20日、兵庫県姫路市「姫路城」で行われる。

 エープリルフールに、衝撃的な現実を突きつけられた。将棋界7大タイトル(名人・竜王・棋聖・王位・王座・棋王・王将)の中で、最も伝統と重みのあるタイトルを持つ佐藤名人も、コンピューターに屈した。

 昨年、名人だった羽生善治からそのタイトルを奪った実力者が、人間では気付かないPONANZAの妙手に沈黙する。その指し回しに差は広がるばかりで、押し切られた。「ソフトは読みの精度が高く、正確だった。(タイトル保持者がソフトに初めて敗れ)結果が出せなくて残念だった」と肩を落とした。

 タイトル保持者とソフトの対局は07年の渡辺明竜王以来。この時は苦しみながらも渡辺竜王が勝利した。昨年の電王戦でPONANZAは、実力者の山崎隆之叡王(えいおう)相手に鋭い攻めを見せて2連勝。この日の対局では、ソフトが苦手とされてきた深い読みでも名人を圧倒した。

 コンピューターと人間の対戦では、05年のアマチュア竜王戦に参加したソフト「激指(げきさし)」が、全国から集まったアマ強豪相手に3連勝。ベスト16に残り、注目された。当時は対局によって出来不出来が明確だった。読み筋に入ると圧倒的な強さを発揮するが、読みから外れた手を指されるともろかった。

 ここ10年の間に改良が進み、玉を囲む守備の堅さや、駒の効率などを数値化した「評価値」で次の手を決める精度が上がった。

 元週刊将棋編集長で、大商大アミューズメント産業研究所主任研究員の古作(こさく)登氏は、「何の驚きもない。人間がソフトの弱点を突くのが難しくなった。総合力でソフトがプロの実力を超えているから」と話した。

 今年で、電王戦は最後になる。「第2局も大変な戦いになると思うが、勝算はあるので頑張りたい」と佐藤名人。人間代表の巻き返しなるか?