宮城県の村井嘉浩知事(56)が12日、都庁に小池百合子知事(64)を訪問し、20年東京五輪の開催費用削減を目指す都政改革本部が、建設着工中の「海の森水上競技場」に代わるボート、カヌー会場候補に挙げた同県登米市の長沼ボート場について熱烈なプレゼンを展開した。東京五輪組織委員会で問題点を指摘された後だったが、小池氏からは「選択肢の1つ。思い入れは十分に受け取った」と前向きな反応を引き出した。

 国際オリンピック委員会の承認と、3兆円超とみられる経費のはざまで悩む小池氏に、村井氏は長沼ボート場の魅力を分かりやすく、熱く伝えた。アクセスの問題、東日本大震災の仮設住宅を選手の住宅に使うことへの是非などが問われる中

 (1)成田空港、東京駅から約2時間強のアクセス。自動車専用道路の整備も進み東北、三陸道から経由可能

 (2)五輪会場に選ぶ条件で高校総体を毎年、同所で固定開催する誘致を提案。五輪を機に日本のボート、カヌーの拠点とする

 (3)仮設住宅は移設とリフォームでき宿泊施設として再利用可。五輪後は、各世代の選手の合宿施設に活用

 (4)選手村候補地2カ所は会場から車で7分と12分

など具体案を提示した。

 恒久的な施設の整備費用は宮城県が出し、財源に復興支援基金の一部の活用を検討。「被災者を勇気づける。批判はされないと思う」と話した。都が試算した351億円の整備費については「絶対にそんなにかからない」と断言した。

 組織委の森喜朗会長が「厳しい」と言う一方、小池氏は「私は阪神大震災の仮設住宅をコソボ、台湾に送った経験があり『ミスプレハブ』と呼ばれた。仮設住宅の再利用は分かりやすいメッセージ」と評価した。村井氏は、組織委と小池氏の温度差を「かきまぜる前のお風呂。熱いところと冷たいところと線が入っている」と言い「小池知事がかじを切ったら一気に動いてくださると信じる」と期待した。【村上幸将】