全国の自治体、企業のキャラクターの頂点を決める「ゆるキャラグランプリ2016in愛顔(えがお)のえひめ」の投票結果が6日、愛媛・松山市の城山公園で発表され、高知・須崎市の「しんじょう君」が434万5960票で優勝した。10月24日までのインターネット投票では2位だったが、四国開催という地の利も生かし、来場者による2日間の投票で逆転。4298票差の接戦を制した。人口約2万3000人の町が生んだキャラが、全国のファンに支えられ、頂点に立った。

 日本最強のカワウソの誕生だ。高知県の小さな港町から生まれたキャラクターの快挙に、全国から駆けつけたしんじょう君ファンが涙した。楠瀬耕作須崎市長は「本当に全国のみなさんのおかげ」と顔をほころばせ、ファンと握手を繰り返した。市はSNSやブログを駆使し、全国のファンに猛アピール。つながりを大切に訴えた努力が、悲願の頂点へと押し上げた。

 須崎市の人口は約2万3000人だが、しんじょう君のパワーは計り知れない。9月10、11日に地元で行われた「ご当地キャラまつりin須崎」には、2日間で全国から9万5000人が詰め掛けた。人口の4倍超だ。この日、駆けつけた神奈川県の50代女性も「癒やされるキャラ。心のよりどころです」と熱っぽく語った。

 しんじょう君の活動を支援しようと、同市へのふるさと納税額も激増。14年度は約200万円だったが、15年度は300倍近い約5億9000万円に増えた。返礼品はみかん、かつお、しんじょう君がかぶる帽子になっている名物鍋焼きラーメンなど。

 市職員は「まさに地産外消。熱烈なファンが、しんじょう君のためにと寄付してくれるので、返礼品も充実させていった」と、地元自慢の品を全国に送り届けた背景を語った。人気が出て、キャラクター自体のグッズが売れるだけにとどまらず、地元の財政、経済が潤う。自治体として理想型なキャラクターに成長した。

 今後も活躍が期待されるしんじょう君。楠瀬市長も「ファンの方へのお礼の企画を考えています」と話した。本年度のふるさと納税額はいくらまで伸びるか。ゆるキャラ1位の称号が町を鼓舞する。人口減少、高齢化、今夏の参院選の合区など、明るい話題が少なかった高知県に強烈な光が差し込んだ。【小松正明】

 ◆しんじょう君 高知・須崎市の新荘川で最後に目撃された絶滅指定種ニホンカワウソ、同市の名物鍋焼きラーメンがモチーフ。活動は13年から。同年ゆるキャラグランプリに初出場し、1579体中14位と健闘。その後14年4位、15年4位と上位の常連となっていた。特技は水泳・ダンス。

 ◆須崎市(すさきし) 高知県中央部、土佐湾に臨む市。1954年(昭29)に須崎町と4村が合併して市制施行。漁港や商港の町として発展。木材やセメントなどの工場がある。かんきつ類栽培やハマチ養殖が盛ん。国指定史跡の土佐藩砲台跡、国指定天然記念物で樹齢1300年の「大谷のクス」、ぼけ封じ観音と呼ばれる大善寺などが有名。B級グルメは鍋焼きラーメン。新荘川は長さ約24キロの2級河川。県中西部を流れ、須崎湾に注ぐ。面積約135平方キロ。9月末の人口は2万2822人。楠瀬耕作市長(56)。