サイズが小さなポリープは通電せずにコールドポリペクトミー法で切除が可能でした。しかし、サイズが大きくなると病変全体を切除できずにがんや腺腫の細胞が端に残ってしまい、再発することがあります。サイズが大きなポリープには通電法を用いてポリープを切除することで辺縁からの再発を防ぎ、病変をしっかりと取り切ることを目標として治療します。

 ●ポリペクトミー・EMR(Endoscopic mucosal resection=内視鏡的粘膜切除)

 5~20ミリ程までのポリープに使われる方法です。茎があるポリープに対してはそのまま輪っか(スネア)をかけて焼き切ります。茎がないポリープは病変がつかみづらいですし、大腸の壁が薄いので電熱線の力が外側に加わるのを防ぐ目的で、ポリープの下に生理食塩水という人体に無害な水を注射で注入します。

 焼いた餅のように盛り上がった粘膜に対し、スネアをかけて電熱線で焼き切ります。内視鏡を用いて再度傷口を確認しながら、必要な場合は止血処置を行います。小さいものなら5分から十数分で行える治療であり、外来で行えます。

 サイズが大きい際には治療に時間がかかり、出血も危惧されるので入院治療になることもあります。コールドポリペクトミーに比べ、治療後の出血が一定の確率で起こるのが一番の問題です。確率は2%弱とされています。電熱線で焼き切ることで粘膜下層にダメージが加わるためなのではないか、と言われています。

 自宅に帰ってからポリープを取った傷口から血が出て血便になります。内視鏡をもう1度入れて傷口を縫うクリップという道具を用いて止血が行えます。治療自体がうまくいっても起こってしまう偶発症なので、受診者には事前に知っておいてもらいたいことです。

 ◆池谷敬(いけや・たかし) 1981年(昭56)9月21日、静岡県出身。浜松医科大卒。2012年から東京・中央区の聖路加国際病院勤務。内視鏡で粘膜下層を剥離するESDという手法で、大腸がんに挑んでいる。