「こち亀」の愛称で知られる人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が、40年にわたる連載を終えて約2カ月。早くも作者秋本治氏(63)が始動する。超長期連載を終え、ひと休みするかと思われたが、「(こち亀の主人公)両さんが有給休暇のうちに」と、新連載が決定した。1949年に設立された集英社でも前例のない4誌に1作品ずつ、計4作品同時の連載。11日に64歳を迎える秋本氏は衰えとは無縁だった。

 連載40年、単行本200巻の偉業を果たしてもなお、秋本氏の「描きたい」欲求は増していた。「こち亀」の連載終了後「本当は7つくらいあったけど4つに絞った」企画書を集英社の担当編集に提出した。「少年誌が終わったら、青年誌をやろうと決めていた。ぜひ、やらせてくださいと言いました」と振り返った。

 長期連載が終わると、そのまま引退する漫画家は多い。だが、秋本氏は「時間が空いたから、描きたいものが描ける。僕にとっては有給休暇。創作意欲がわいた時にいいものが描ける。今がその時期」と、時間を置くことを惜しむ。

 つまり「こち亀」は復活させる意向だ。「両さんがいつまた戻ってくるか、わからない。今後も機会あれば(描こうと)思っているし、絶えず頭の片隅にいる」と打ち明けた。続編にも強い思いをにじませた。

 4作品同時の連載は、ベテラン漫画家への提案だ。1話ごとに間隔を空ける不定期連載となるが、4つの雑誌に1作品ずつ連載を持つのは異例。「普通は(作品が)1本終われば次に1本。掛け持ちもせいぜい2本が限度。でも1話ごとに間を空け、その間に別のものを描くというのは、実験でもあり、新しいスタイルの提案」。各作品を並行して進めるのではなく、循環して進めるイメージだ。

 西部劇、京都の女子高生、スパイ、下町の銭湯。4作品のテイストはまるで違う。中でも力が入るのが「ファインダー-京都女学院物語-」だ。「昔から京都が好き。女子高生の熱血じゃない日常が描きたい」。こち亀と同じく下町が舞台の「いいゆだね!」については「(作品の)舞台、時代が同じなので、両さんが自然にお風呂に入っていても大丈夫かな」と限定復活プランも明かした。

 こち亀の作中、両津勘吉は、人並み外れた生命力を見せていたが、秋本氏のあふれる創作意欲を投影していた。【小松正明】

 ◆秋本治(あきもと・おさむ)1952年(昭27)12月11日、東京都葛飾区亀有出身。76年9月から「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が週刊少年ジャンプ(集英社)で連載開始。今年9月に連載40周年を機に終了。「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ200巻」としてギネス記録に。

<秋本治氏が連載開始する4作品>

 ▼ファインダー-京都女学院物語- 週刊ヤングジャンプ2月発売分から掲載予定。京都郊外の女子校に通う4人組を描いた青春群像劇。

 ▼BLACK TIGER-ブラックティガー- グランドジャンプ12月21日発売分から掲載予定。同誌の15年4月号で掲載された「アリィよ、銃を撃て!!」を前身とした女ガンマンが登場する新作の西部劇。

 ▼いいゆだね! ウルトラジャンプ17年3月18日発売分から掲載予定。94年発表のシリーズ作の続編。ブラジル生まれのマリアが下町の銭湯を立て直す。

 ▼Mr.Clice-ミスタークリス- 「ジャンプSQ.」で17年2月4日発売分から掲載予定。85年に発表、9年ぶりの続編。見た目は女、頭脳は男のすご腕スパイのアクション劇。