一番の主治医は自分自身-。新著「長生き『できる人』と『できない人』の習慣」を発表した医療ジャーナリスト松井宏夫氏(65)は、健やかに生きる健康寿命には、日常のさまざまな生活習慣が関連していると指摘する。運動、睡眠、嗜好(しこう)、食、精神。それぞれでよい習慣を身に付ければ、自らが主治医となり、体調の変化にもすぐに気づけるようになるという。無理せず健康でいられる習慣の作り方を聞いた。

 世代問わず増え続けているストレス性の疾患。病院に通うほどではない場合でも、体のどこかに反応が出るという。

 松井氏 症状が出るところは、毎回決まってくる。自分の体の弱いところ。私の場合、片方のまぶたがけいれんしたりするんです。

 肩こり、腰痛から呼吸不全、腹痛まで、症状の出方は千差万別だ。ただし、自分の調子がいい時と悪い時を把握しておかないと、いざ病院に駆け込んだ時にも、大きな差が出るという。

 松井氏 一番の主治医は自分。病院の主治医の先生がいたとしても、自分の症状を分かりやすく教えてあげないといけない。腹痛であれば、いつから、どのように痛いのか。ちゃんと言えるように、日頃から状態をチェックしておかないといけない。まずは自分で治療をするということです。

 過剰なストレスを受けているのを感じ取れるのは、体調の変化だけではない。それが生活習慣の変化だ。食、運動、睡眠など、心掛けている習慣が崩れていたとすれば、それは危険信号の表れだ。

 松井氏 食にしろ、運動にしろ、心が健康であれば、習慣も健康的であるはず。だからこそ、異常が分かるように、日頃からいい習慣を身に付けてほしい。

 日常的に暴飲暴食、睡眠不足、運動不足を続けていては、体が悲鳴を上げていても気が付きにくい。大病を患ってから医師に相談しても、大きな改善は見込みにくい。松井氏のもとにも、がんが発覚してから相談に来る人が多いという。とはいえ中高年になり、「いまさら習慣を変えたところで、特に変わらない」だろうと思う人も多いもの。しかし、松井氏によれば2週間もあれば劇的な変化に期待ができるという。

 松井氏 40代以降の方々には、ぜひいい習慣を身に付けてほしい。60、70代になっても、もう間に合わないなんてことはない。大腸がんを例にしても、食生活を変えれば、大腸の中が変わってくる。そういうこともあるので、いつからでは遅いということはありません。

 60~70代ともなれば、孫の顔を見ながら、穏やかに過ごしたいもの。そのためにも、日々の習慣づくりが着実な1歩となる。【小松正明】

<歩く、吸わない、笑う あなたは「できる人」?>

 著書「長生き-」では、日常生活の中で健康法を実践「できる人」と「できない人」で、後々小さくない差が出てくることを指摘する。医学博士の板倉弘重氏監修により、運動、嗜好、食生活、物事への考え方など、生活習慣の改善で「できる人」の健康寿命は変わることを示している。

 ▼長生きできる人は徒歩通勤1日60分、できない人は車・バス・電車 ウオーキングを行う人はがんのリスク20%減。効果を及ぼすのは31種類のがん。

 ▼長生きできる人はビール中瓶1本程度、できない人は認知症のリスク高まる アルコールは脳を萎縮させるが、適量なら飲酒しない人より脳の萎縮少ない。

 ▼長生きできる人は44歳まで禁煙、できない人は自業自得 男性の喫煙死亡リスク2・21倍で女性は2・61倍だが、35~44歳までに禁煙すればリスクは1・4~1・06倍まで減らせる。

 ▼長生きできる人は魚介類好みで膵臓(すいぞう)がんも怖くない、できない人は青背魚の食事少ない 魚介類に含まれるn-3系脂肪酸摂取で動脈硬化やがん、認知症の予防にもなる。青背のDHAは血中の中性脂肪を減らす。

 ▼長生きできる人はよく笑う、できない人は怒ってばかり 「なんばグランド花月」観劇後の採血ではストレス、免疫能に関する細胞が活性化。笑わない人はよく笑う人に比べて脳卒中のリスクが1・6倍高くなる。

 ◆松井宏夫(まつい・ひろお)1951年(昭26)5月22日、富山県生まれ。中央大学卒業後、「週刊サンケイ」記者を経て、フリージャーナリストに転身。最先端医療やがん医療を取材。現在は日本医学ジャーナリスト協会副会長。日刊スポーツの紙面では、スポーツ紙初となる健康コラムを24年以上執筆している。毎週月曜日にはTBSラジオ「森本毅郎スタンバイ」の月曜日枠「日本全国8時です」にもレギュラー出演中。