東京都議会定例会の本会議で7日、代表質問が行われ、小池百合子都知事(64)と与党自民党が「ガチンコバトル」を繰り広げた。小池氏が前回9月の定例会で「答弁調整」を批判したことから、自民党は事前に質問内容を伝えない「ナマ質問」を展開。メモを書き取れず、答弁に手間取る場面も見られ、議場にヤジが飛んだ。2020年東京五輪、政党復活予算、都政運営など問題について真っ向から対立し、両者の溝はさらに広がった。

 小池氏は質問者の方向を見る余裕もなかった。自席に広げた用紙に必死でペンを走らせた。背後に陣取る副知事、都幹部ら31人の「説明員」が自民崎山知尚都議の質問中にも、慌ただしく動き回った。答弁調整のない異例の質疑応答に、議場は一時騒然となった。

 「自分の字が読めないぐらい」ほどの勢いでメモを取って答弁に臨んだが、多くの質問が重なりメモが追いつかない。演壇に上がっても想定答弁を記したとみられる紙が散乱し、順序が前後した。

 「それから…えっと。少々お待ち下さい。次についてで…ありますけれども…」

 知事が手間取っていると、副知事が駆け寄って耳打ちする場面もあった。

 自民党の議席からは次々とヤジが出た。9月の定例会で、自民党側は質疑応答のやりとりをあらかじめ細かく詰める「答弁調整」を「慣例に従い」(崎山氏)求めたが、小池氏が「なれ合い」「根回し」を嫌い、拒否された経緯がある。そのため本定例会は知事答弁分の調整は一切なかった。

 自民の攻勢は続いた。定例会見(2日)の「大きな黒い頭のネズミがいることが分かった」との知事発言に対し、崎山氏から「公職に就く者の発言として恥ずべきこと。知事の思い通りにならない方のことか。大きな黒い頭のネズミとは、誰のことですか? はぐらかさずに明確にお答えください」と質問を受けた。小池氏は「ご想像にお任せします」とかわしたが「答弁になってない!」とブーイングを浴びた。

 自公与党が推薦した舛添前知事時代の議会とは対照的な光景だった。この日の小池氏は「私の言葉」にこだわった。終了後、調整なしで応じた問答に「(自民が)お気に召さないテーマばかりで、事前調整にそぐわないものだった」と語った。今日8日の一般質問に向け崎山氏が「ボールは知事にある」と発言したことにも「都民に対して分かりやすい説明と質問が必要なのでは」と反論。議会の混乱をあぶり出そうとした自民と、それを逆手に「ナマ感」を売りにする小池氏の攻防は続く。【三須一紀】

 ◆大きな黒い頭のネズミ発言 2日の定例会見で記者から「バレーボールが有明で行われれば、『大山鳴動してねずみ一匹』といいますか…」と口火を切られた小池氏は「ちょっとそれは失礼なんじゃないですか」と氷の微笑を浮かべながら質問を遮った。小池氏は「このままでは豊洲ではないが、どんどん(コストが)膨らんだ。誰が歯止めをかけるんですか。IOCですか、組織委ですか」と反論。「ネズミどころか大きな黒い頭のネズミがいっぱいいることが分かったじゃないですか。入札の方式はどうなんですか。これから頭の黒いネズミをどんどん探したい」と答えた。